中学生の発達障害って?反抗期や勉強の遅れに対する接し方・支援方法

子どもが中学生になり思春期をむかえ、反抗期や不登校、勉強の遅れ、わが子が発達障害かもしれない、など本人・ご家族共に小学生時代とは異なる困りごとや悩みが出てきているかもしれません。

この記事では中学生の発達障害の場合にどのような悩み・困りごとに対してどのような接し方が必要なのか、勉強の遅れに対する方法や塾の選び方、またどのような支援が必要なのかについて紹介します。


監修

井上 雅彦

鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。


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発達障害とは

そもそも発達障害とは?

発達障害は生まれつきの脳機能の凸凹と環境とのミスマッチから生活に支障が生じている障害です。

発達障害は大きく3つのタイプに分けられます。

ADHD(注意欠如多動症)
ASD(自閉スペクトラム症)
限局性学習症/学習障害(SLD/LD)

これらが併存していることも少なくなく、特性の表れ方は乳児期・幼児期・学童期・思春期と成長と共に変化していきます。なお家庭のしつけや環境、本人の性格などとは無関係であることが医学的に明らかになっています。

発達障害の男女の違いについて

「授業中に席を立つ」「ほかの子の邪魔をしてしまう」「忘れ物が極端に多い」といった特性が目立ちやすいため発達障害は男子が多いと思われやすく、女子はわかりにくいとされています。

男女の違いは、特性が行動面の問題として表面化される時期が異なる点です。男子の特性が目立つのが早い時期であることに対して、女子は「おしゃべり」など一部分の特性は目立つものの、ほかの特性が目立たず行動面の問題として表面化されにくく、対人関係が複雑になる思春期を迎えて初めて表面化される場合もあります。

中学生の発達障害の特徴と行動をチェック

校則、定期テスト、部活動、体育祭・文化祭、同年代の仲間やグループ意識の高まりなど、中学生ではさらに集団行動が増えていきます。その中の特徴の一つとして、発達障害のある子どもは劣等感を抱きやすい傾向が見られます。

それは第二次性徴をきっかけに、他者との違いを意識し始める時期のためです。アイデンティティを確立していくときだからこそ、苦手なことより得意なことに目を向けることが大切です。

中学生の発達障害の行動例をチェックしてみましょう

中学生特有の困りごとや悩みについて具体的な行動例を紹介します。

■グループ行動・友だちとの会話が苦手

興味関心が合わない場合、話題を合わせたり調整することが苦手な傾向があります。自分のしたい話を一方的にしてしまう、比喩・皮肉が理解できず字義通りに受け止めやすい方は、誤解やすれ違いが生じることがあります。

■忘れ物が多い・物忘れが多い

注意を持続集中させたり、聴覚的な情報を正確に記憶することが苦手で、うっかり忘れが起こりやすいことがあります。

■複数のことを同時進行することが難しい

脳の情報処理能力の特性から一度に2つ以上の情報を処理することが困難な傾向があります。具体的には先生の話を聞きながらノートをとる、一度にたくさんの指示を出されたときに優先順位をつけて処理するなどが、困難さとして挙げられます。

■係や頼まれごとを断ることが苦手

頼まれると断れず、対応できないほどの係や役割をつい引き受けている場合があります。

■整理整頓することに困難を感じる

整理整頓を面倒に感じ物を散らかし放題にしてしまう、一定の空間に収まるように片づけるのが苦手、片付けをしても継続的に行うことが苦手な場合があります。

■計画的に勉強を進めることが難しい

テストに向けて勉強のスケジュールを組んだり、提出物の期限までにどのようなペースで進めればいいかなど、難しく感じることがあります。

■学校行事に参加するのが苦手

いつもと異なる環境や臨機応変な対応が苦手なため、学校行事など普段と異なる状況に参加することが難しい場合があります。

■中学生になってから勉強に遅れが見られる

お子さまによって異なりますが、苦手なことの例として、「要点をまとめる」「感想を書く」「主人公の感情・気持ちを読み取る」「図形問題」「文章問題」「英語のつづりや漢字を書く」などがあります。また、不器用さから音楽・体育・美術などの実技教科で苦手さが目立つこともあります。

専科担任制度の中学校では、各教科の担任が発達障害を理解し、特性に応じた工夫をするなど配慮のある指導が行き届かない場合もあります。

配慮のある指導が難しい場合、勉強についていけない子どもはどんどん置いていかれてしまいます。特にLDのある子どもは勉強の遅れが多教科に広がり、努力しても授業についていくことがより難しくなる傾向があります。

■体調不良をひんぱんに訴える

頭痛、胃痛、めまい、朝起きられない、夜眠れない、気分の上下が激しいといった症状が表れます。

上記の特徴は人により異なります。ご家庭以外の学校や習いごとの先生など第三者から見た様子も参考にするとよいでしょう。子どもの特徴や行動特性を知り、どんなことに困りごとを抱えているのかなどを把握していくことが大切です。


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中学生の発達障害による勉強の遅れを支援する方法とは?

中学校にあがると授業内容が複雑になり、ついていけなくなる場合があります。勉強も部活動も本格的になる中学校生活では、積み上げにつまづくと、本人が自信を失ってしまうこともあります。

授業についていけなくなる理由とは? 

それぞれの発達障害の特徴からどのような困りごとを感じているのか説明していきます。

■ADHD(注意欠如多動症)の場合

「不注意」「多動性」「衝動性」の特性からうっかりミスを繰り返す、忘れ物や紛失物が多い、遅刻が多い、活動的で机から離れる、気が散りやすく一つの課題に集中することが苦手です。

■ASD(自閉スペクトラム症)の場合

説明文は理解できても、物語文の主人公の気持ちを推察することが難しかったり、抽象的な概念の学習がうまく進まないことで、特定教科・特定単元の中での落ち込みが見られることがあります。

■限局性学習症/学習障害(SLD/LD)の場合

努力しても苦手な科目が顕著になります。得意科目もあるため「本人の努力不足」と誤解されやすくミスや叱責の繰り返しから「自分は勉強ができない」と劣等感を抱く傾向があります。

家庭教師や塾などを検討する

中学生の勉強方法は本人の特性や考えを尊重することが大切です。塾などを検討する着目点として以下があります。

・本人の特性を見極めて適切な環境であること
・発達障害に知識・理解のある講師であること
・本人の学習段階とペースに応じた手厚い指導を受けられること

具体的には下記のような学習スタイルがあります。

学校での合理的配慮

文部科学省の例として個別指導のためのコンピュータ・デジタル教材、クールダウンのための小部屋確保、口頭による指導だけでなく板書・メモなどよる情報掲示などがあります。合理的配慮を受けるにはまず保護者や本人が学校に求める必要があります。下記などを利用して必要な配慮を整理してみるのも工夫の一つです。

参考:学校での「合理的配慮」 ハンドブック|LITALICOジュニア

現在はオンライン形式の学習も充実しています。上記のタイプもふまえてどの学習スタイルが子どもに合うか見極めることで、特性に合った勉強方法が分かったり、授業を受けるだけでは補えない部分を補完することができます。

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発達障害の思春期・反抗期の行動とその接し方とは?

「なんとなく不安…」「イライラが止まらない」などは、心身ともに大きな変化を遂げる思春期ならではの感情といえるでしょう。発達障害のある子どもは変化に敏感なため、不安感がとくに強まる傾向があります。思春期の子どもは「学校にはもう行かない」など、親が否定したくなる言動をすることがあります。子どもの言うことをすぐに否定せず、まずは「それはどうして?」と聞く姿勢が第一です。

また思春期を迎え、周囲では男女の変化も表れます。性に関する暗黙のルールやマナーは、きちんと言葉にして助言するとよいでしょう。

複雑になっていく対人コミュニケーションや、感情コントロールの難しさから、行動が幼く見えてしまう場合もあります。子どもが何か不自由さを抱えていそうなときは、まずは話を聞いてみるのも一つです。親や友だちだけではなく、相談できる人が複数いると、バランスのよい人間関係を築く助けになります。

話の聞き方もこれまでと変化が必要なこともあります。思春期は、親子関係も変化する時期です。親に100%依存する存在から自立し、社会に居場所を見つけていく過程で依存心と自立心、相反する感情が渦巻いています。特に発達障害のある子どもの場合は、不安や悩みなどを上手に相談することが苦手な子が多く、それが反抗期という形になって表れることも少なくありません。

思春期・反抗期の子どもの接し方の例

子どもが安心して話せる環境をつくり、特性を理解して一貫性のある姿勢で接していくことが大切です。

■「どんなときもあなたの味方」子どもの言い分を聞く姿勢を大切に

・子どもが落ち着いて集中できるように1対1で話を聞く
・「悪いのはあなたよ」など決めつけは避ける
・必要以上に干渉しない。見守ることも大切
・悩みによっては相談相手を変えてみる
・悩みと解決法を文字に書き出して説明したり活用する

■「程よい距離感」できるだけ柔軟に対応する

・すぐに否定しないで、子どもの考えを聞く。
・気負いすぎず、ほどほどに、気長に接する
・成果よりも望ましい取り組み・行動をほめる。内面の変化に目を向け、具体的に褒める(メモをしておき、タイミングをみて伝えるなど)
・社会や集団のルールをわかりやすく具体的に教える

思春期に起きやすい発達障害の二次障害予防

本人の困りごとが適切に支援されず特性とミスマッチした環境にいると、叱責や否定的な評価を受けるといった体験を重ね、自尊心の低下やストレスを招き、二次障害を発症する場合もあります。

二次障害の具体的な症状は、頭痛など身体面、不安症群や強迫症、うつ病や摂食障害群など精神面、不登校や引きこもり、家庭内暴力や自傷行為など行動の問題が挙げられます。

二次障害を予防するためには、発達障害についてまず周囲が理解することが大切です。また症状に気づいた段階でできるだけ早期に発達障害と診断された主治医、または上述した医療機関を受診すれば重篤化を防げるといえるでしょう。二次障害を発症し初めて発達障害と診断される場合もあります。

子どもが不登校や行き渋りになったら?

 「学校に行きたくない」と子どもが意思表示する場合もあれば、行きたくても行けなくなってしまう場合もあります。発達障害のある中学生の不登校の背景には複雑な要因があります。一つずつ目を向けて行きましょう。

 不登校のサインは?

・朝起きられなくなる・朝の支度に時間がかかる
・学校に行こうとすると体調が悪くなる
・身なりに無頓着になり表情も暗くなる
・学校の話をしたがらない
・夜更けまでインターネットやゲームに没頭している

子どもへの接し方の例 

まず子どもの状態を把握することが重要です。原因探しよりも子どもの気持ちに寄り添って焦らず課題を明確にしていくようにします。

■教師や友だちとの関係に苦手さがある場合

本人が学校の様子を話したがらない場合は、先生から休み時間や部活での様子を聞くことも一つです。

■特定の授業に苦手さがある場合

教科ごとに本人の状態が異なる可能性もあるため、教科ごとに状況を状態を聞き取り、学校で過ごしやすくなるような配慮について学校と相談します。

具体的な合理的配慮については学校での「合理的配慮」 ハンドブック|LITALICOジュニアをご参照ください。

■生活リズムの乱れがある/引きこもりがちになる場合

生活・環境リズムを整えることが必要です。ゲームやインターネットにはまっている場合は、本人と話し合いながら使用のルールについて決めていくことが大切です。休みの日などに本人が好きなところに一緒にいくなど、外出の機会をつくることも大切です。

学校以外の選択肢も考える

不登校が長期化している場合は「場面」を変えることが大切です。学校の理解のもと保健室や相談室や通級教室で、または自宅で好きな科目の勉強をすることもできます。不登校の小中学生には、市町村が設置する教育支援センター(適応指導教室)や、フリースクールなど学校以外にも学べる場所があり、出席が認められるケースもあります。

適応指導教室はお住まいの市町村に問い合わせる、地域名と合わせてネット検索する、などの探し方があります。

全国のフリースクール一覧|LITALICO発達ナビ

公式HPはこちら

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子どもが「発達障害かも?」と思ったときの相談先や診断方法

発達障害のある子どものケアや支援は家庭だけ・学校だけでは限度があります。それぞれの役割から適切なサポートをし、連携をする必要があります。

学校との連携

中学生の問題は行動・対人関係・学習面など広範囲に及ぶため、学校と連携した支援は不可欠です。お互いの立場を理解し合い協働していく中で信頼関係を築くことが子どもの困りごとの改善につながります。

・問題点・特性に対しての支援方法(家庭・学校)を共有する
・褒める言葉・叱る言葉を統一する
・適度に情報交換(連絡帳・電話・メールなど)をする

■スクールカウンセラー

中学校において生徒・保護者を対象に臨床心理の専門性を生かしがらサポートする専門家です。不登校、友人関係、発達障害などさまざまな心の悩みを抱える生徒・保護者にカウンセリングをし心理学の観点から助言や援助を行います。

発達障害かも?と思ったときの相談先や診断について

「子どもが発達障害かも?」と思ったときの相談先は、公的機関や医療機関、大学に併設された総合センターなどさまざまあります。

また、発達障害は12歳までに特性が表れるといわれています。中学生になって、なにかしらの社会生活への困難さが起こり発達障害に気づく場合も少なくありません。

これらの相談先や診断を受けられる機関などについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。

子ども本人に抵抗があるそうであれば、まず親がスクールカウンセラーや相談機関に相談に行くのも一つです。子ども本人が診断を受け入れるには時間がかかるケースもあります。


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まとめ

思春期はアイデンティティを確立し、他者との違いを感じ始める時期です。中学生の発達障害は、反抗期や不登校や勉強の遅れが特徴として見られる場合もあるでしょう。

また周囲の理解や適切な支援を受けられない場合には、頭痛など身体の不調、うつ病などの精神疾患、引きこもりといった二次障害を発症することがあります。子どもが困りごとを抱えていたり、「発達障害かも?」と思ったらできるだけ早く学校や専門家に相談するなど第三者を頼ることが大切です。

中学生は心身ともに変化の大きい時期です。同時に、義務教育の最後でもあります。高校以降の選択肢は増えてきているため、高校以降をどうするか見据えながら、子どもにとって合う環境をつくっていくことが大切です。自分の得意なこと・苦手なことの特性理解を少しずつ進めていくと良いでしょう。

参考

・『図解 よくわかる思春期の発達障害』|中山和彦・小田和哉(著)

・『親子で乗り越える思春期の発達障害』|塩川宏郷(監修)

・『女の子の発達障害: 思春期の心と行動の変化に気づいてサポートする本 』|宮尾益知(監修)

・『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』|古荘純一(編著)・磯崎祐介(編)

・『人間関係でちょっと困った人&発達障害のある人のためのサポートレシピ53』|橋本 創一・ 小島 道生・ 田口 禎子・ 横田 圭司(著)

別紙2「合理的配慮」の例|文部科学省

・『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート 』|齊藤万比古(著)

・『子どもと青年の破壊的行動障害―ADHDと素行障害・反抗挑戦性障害のある子どもたち―』|ロバート・L・ヘンドレン(編著)

・反抗期ADHD息子の「コミュ力UP」に…!会話のコツ「刷り込み作戦」開始の巻|LITALICO発達ナビ

・「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」|文部科学省

・「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果令和元年5月13日|文部科学省

第3章 スクールカウンセリング|文部科学省

・スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A|文部科学省

・チーム学校の構想における心理職の役割|文部科学省

・スクールカウンセラーとは? 具体的な仕事内容から相談できること、相談する時のコツをご紹介!|LITALICO発達ナビ

・本人に発達障害の診断を伝える|国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター

・発達障害とは|障害保健福祉研究情報システム(DINF)

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