知的障害とは

乳幼児期の子どもの成長スピードは実にさまざまです。ただ、なかなか言葉が出ない、歩き始めないなど気にかかる場合はひょっとしたら知的障害の可能性があるかもしれません。

ここでは、知的障害の特徴・種別や診断、発達障害との違いなどについて説明します。

知的障害とは?発達障害との違いについて

知的障害の定義

知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害によって、知的能力と社会生活への適応機能が遅れた水準にとどまり、日常生活において困難を抱えている状態をいいます。

厚生労働省では知的障害について以下のように述べています。

「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」

なお、正式名称として医学領域的には「精神遅滞/精神発達遅滞」また、アメリカ精神医学会の『DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と呼ばれています。

ただし知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害」という表記を使用させていただきます。

知的障害と発達障害との違いは?

『DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版』において、知的障害も発達障害も同じ神経発達症群(神経発達障害群)としてまとめられています。

また神経発達症群はしばしば併存する場合もあり、例えば自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の人が知的障害を持ち合わせることもありますし、逆に知的障害の人に発達障害の傾向が見られることもあります。

知的障害の種別や特徴は?

知的障害にはどんな種別があるのでしょうか?またどのような特徴がみられるのかをまとめてみました。

知的障害の種別(程度)

知的障害の程度は「軽度」「中等度」「重度」「最重度」の4つに分けられており、一般的には以下のように標準化された知能検査の結果による「知能水準」と「日常生活能力(自立機能、運動機能、意思交換、移動など)の到達水準」を基に判定を行っています。
ただ、知的障害の手帳判定の基準については地域によって多少異なる場合があります。

知的障害の特徴

さらに、程度別の特徴を以下にまとめてみました。

軽度

  • 就学前に明らかな発達差が分かりにくい
  • 学齢期において読字・書字・算数・時間や金銭感覚などを身につけるのが難しい場合がある
  • 身のまわりのことはほとんど年齢相応にできる

中等度

  • 就学前、言葉の発達はゆっくりである
  • 幼児期の療育などで食事・身支度・衛生面などができるようになっていく
  • 学齢期においては、コミュニケーション・読字・書字・算数・時間や金銭感覚の理解などの発達はゆっくりで、ある程度の水準にとどまる

重度

  • 幼児期では会話するのが難しい
  • 学齢期以降、毎日の出来事においては単純な会話と身振りによってコミュニケーションが取れるようになってくる
  • 食事・身支度・入浴などいくらか支援が必要

最重度

  • 会話によるコミュニケーションなどは難しい
  • 自分の欲求や感情などは非言語的なコミュニケーションを通して表現する
  • 日常的な身体の世話・健康・安全など多くの面で支援が必要

ただし、一人ひとり成長の仕方や状況は異なるため、一概に上記のような特徴がみられるとは限りません。
子どもが知的障害かもしれないと感じたら、専門機関で相談をしてみましょう。

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知的障害の診断基準

知的障害は乳幼児健診・就学前健診などの発達早期、あるいは小中学校入学前などにその可能性が指摘されることがあります。

具体的には以下が診断基準になります。

  • 読み・書き・計算など学校での学習や、経験からの学習など知的面での能力が低い
  • 社会生活、日常生活において年齢相応に適応する能力が低い
  • 発達期(18歳)までに発症していること

なお診断の際には、医療機関にて問診・診察、また行動観察や発達検査・知能検査などを行い、それらを総合的に判断して診断されます。

診断を受けてからできること

専門の相談支援機関に相談する

困った時は家族で抱え込まずに相談機関に相談したり、福祉サービスを上手く利用するのも一つです。

  • 各自治体の障害福祉担当窓口(福祉科など)
  • 福祉事務所
  • 保健所・保健センター
  • 児童発達支援センター
  • 子育て支援センター
  • 児童相談所 など

ご紹介したのは一例となります。
また、相談窓口の名称は自治体ごとに異なりますので、詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

療育機関を検討する

児童福祉法では障害のある子どもを対象に療育を活用できるサービスを整えています。
名称は地域によって異なりますが、児童発達支援センターや児童発達支援事業所などの施設において療育を受けることが可能です。

療育機関では、子どもの発達に詳しい保育士・心理士・作業療法士などの専門家が一人ひとりの課題に合わせた専門的な指導を行っています。

なお診断がなくても、医師の判断や受給者証によって療育機関への通所が可能になります。ただし地域によって違いがありますので、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。

知的障害のある子どもの就学前・就学後の進路

子どもが知的障害と診断された場合、さまざまな選択肢を知り、それぞれの子どもに適した環境を選ぶことは、子どもが安心して成長していくための重要なポイントとなります。

ここでは、知的障害のある子どもの進路を就学前と就学後に分けてまとめてみました。

就学前

保育園・幼稚園・子ども園

同年齢の子どもたちの中で過ごすことは子どもの発達にも大きく影響を及ぼします。他の子どものやっていることをまねして学習したり、集団生活を通していろいろな経験を重ねることができるでしょう。

ただし、子どもの特性についてはきちんと説明し、適切な配慮をしてもらえるかどうかを確認する必要があります。

そのほか、専門的なトレーニングを行う療育機関に通所するのも一つの選択肢となります。また療育機関では特定の曜日に通いながら、ほかの日はこれらの園に通園する並行通園というシステムもあります。

就学後

義務教育(中学まで)

就学前には各自治体で就学前相談を実施したり、実際に学校を見学する機会もあります。子どもの学校での生活をイメージしながら、同じような障害のある子どもの保護者の話なども参考にしつつ選ぶのもおすすめです。

なお通級指導教室は、軽度の知的障害のみでは利用ができません。軽度の知的障害に加えて、発達障害がある場合には、対象となる場合があります。

義務教育後(中学卒業以降)

ほとんどの子どもが進学を選択しています。知的障害があっても軽度の場合は、高等学校や高等専修学校を選択する人もいます。
どのような進学先があるのか、その一例をご紹介します。

義務教育以降の選択肢については上記以外にもありますが、子どもの状況や将来のこと、またそれぞれの学校の特徴などを踏まえて考えていくことが大切です。

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まとめ

知的障害とは、発達期に生じた知的機能の障害により、知的機能と社会生活への適応機能との両面において水準よりも遅れているため、生活が困難になっている状態のことをいいます。また知的障害には、発達障害が併存する場合もあります。

子どもの成長で気になる部分があれば、日ごろの様子を書き留めておき、専門機関など適切な相談先に相談したり、診断を受けると良いでしょう。

知的障害と診断された場合は、子どもが家族と一緒に過ごしながら、充実した生活ができるように各自治体などの支援サービスを活用することができます。

また、知的障害に関する理解を深め、それぞれの子どもに合った支援や進学先などの情報収集を行い、将来について考えることも大切です。

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【監修】

鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上自閉症のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。

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