
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、「コミュニケーションがうまく取れない」「人との関わりが苦手」「こだわりがある」といった特性のある障害です。かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」と呼ばれていた子どもたちも含まれます。
「子どもの発達に気になるところがある」、「自閉症かもしれない」と感じているご家庭に向けて、その診断基準や特徴、特に幼児期~小学校入学前の子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)にはどのような行動や困りごとがあるのか、またその対応方法を解説します。
自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は、「対人関係や社会的なやりとりの障害」「こだわり行動」という2つの基本特性があります。
人との関わりが苦手で、場の空気を読みとり、比喩や皮肉、相手の気持ちや暗黙のルールを理解することとなどの難しさ、言われたことを表面的に受け取ってしまうなど、社会的な場面での困難さが持続することを指します。
物の配置、物事の順番、勝敗、自分のやり方への強い固執、興味や関心の極端な偏りなどを指します。こだわりの程度や種類はひとり一人異なります。
そのほかにも、手先が不器用、感覚刺激に過敏・鈍いなどの特性が見られることもあります。
この障害は、生まれつきの脳の機能になんらかの不具合があるために起こるものと言われており、親のしつけや育て方、本人の性格とは無関係であることが分かっています。
脳の機能の不具合によって起こる障害であるため完全に治るということはなく、対人関係や社会性の困難に対する配慮と、本人の特性にあった環境調整や療育・教育によって、症状の改善や発達の促進が期待できます。
発達障害の診断基準に使われている『DSM-5』では、それまで自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害など診断名が分かれていたものが、『DSM-5』以降は境界なく連続したものと捉えられるようになり、「自閉症スペクトラム障害」が初めて診断名として採用されることになりました。
そのため、現在では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という診断がされることが多くなってきています。
子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)のサインや特徴的な行動について、特に発達特性が表れやすいと言われている1歳、2歳、3歳、就学前と年齢別に解説します。ただしそれぞれの年齢段階での行動特徴には個人差もあります。
発達の遅れや気になる行動が見られたり、自閉症スペクトラム障害(ASD)かもと思ったら、適切なサポートや支援を受けるようにしましょう。
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自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもはどんな困りごとが起こりやすいのか、その対応方法とあわせて解説します。
そのほかにも、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもは、さまざまな場面で困り事を抱えて不安を感じやすく、自己肯定感が育まれにくいといえます。
「1つのことに集中して取り組むことができる」「行動力がある」など、特性を子どもの個性ととらえることや、親や周囲の人が特性を理解し、ほめる機会を増やし、自信を感じやすい接し方をすることで達成感や安心感を得ることができます。
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子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)は、「コミュニケーションがうまく取れない」「人との関わりが苦手」「こだわりがある」といった発達の特性が見られますが、明確な境界線がなく、診断も簡単ではない障害です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)かもと思ったら、適切なサポートや支援を受けることも一つです。
発達障害は、親のしつけや子育てによるものではありません。「自分が悪いのでは」と抱え込まず、周囲の力をうまく借りながら、子どもの長所に目を向けていくようにしましょう。
【監修】井上 雅彦
鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。