発達障害のある子どもに親ができることは?年代別の特徴や症状ごとの接し方

発達障害とは、それぞれの子どもが持つ生まれ持った特性と、周りの環境とのミスマッチが生じて生活に支障が出ている状態です。自分の子どもに発達障害の可能性があった場合、親には何ができるのでしょうか。

ここでは、子どもの年齢や特徴別の発達障害の症状や接し方について分かりやすく説明します。また、ご両親の負担を軽くするために利用できる公的支援とともに、進路や就職といった子どもの将来の考え方についても紹介します。

監修

井上 雅彦

鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上自閉症のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。株式会社LITALICO社外取締役。

子どもの発達障害、特徴や症状

発達障害とは、生まれつき脳機能の発達の凸凹(でこぼこ)が激しく、その子の周囲の環境や人間関係とのミスマッチから社会生活上の支障が生じる障害のことです。ここでいう「障害」とは、脳機能の偏りという本人の要因だけではなく、本人が過ごしにくいと感じる社会環境側の問題も含めています。
発達障害においては、大きく3つのタイプに分けられています。
発達障害は、大きくASD、ADHD、LDの3つのタイプに分けられています

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

忘れ物や遅刻などの不注意、じっとしていられなかったりなかなか集中できなかったりといった多動性・衝動性を主な特徴とする障害です。

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自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)

対人関係の困難や興味・関心の限定、特定の行動を繰り返すなどの特徴があります。ASDはコミュニケーション能力や社会性に関連する脳機能の偏りを広く捉えており、よく耳にする「自閉症」や「アスペルガー症候群」の症状もASDに含まれるという考え方が一般的になってきています。

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限局性学習症/学習障害(LD)

読み書きや聞く・話す、計算・推論することなどが著しく苦手な特徴があります。「学習障害」と呼ばれることが多いです。

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「親の育て方」は原因ではない

遺伝などの要因が指摘されていますが、なぜ脳機能の発達に偏りが生じるのかについてははっきりとは分かっていません。ただし、親のしつけや愛情の注ぎ方は発達障害の発症とは関係ありません。また、本人のわがままでもないことを理解しましょう。

子どもが発達障害かもしれないときの特徴チェック(年齢別)

ここでは、発達障害のある子どもに見られる特性・特徴の一例を紹介します。このような特徴のあらわれ方は前述したの三つの診断名によって異なりますし、それぞれの子どもの発達の状態によっても変わってくるため、あくまでも例になります。

子どもの成長に合わせて見られる特徴の一例乳児期(~1歳まで) ・抱っこや手をつなぐことが苦手 ・あやしてもなかなか笑わない ・極端な偏食が見られる ・寝つきが悪い、ちょっとした物音で起きてしまう幼児期(~6歳まで) ・意味のある言葉を話さない ・保育園や幼稚園での集団行動に加わらない。植物や虫を観察したり本を読んだりなどの一人遊びが多い。 ・貧乏ゆすりや食事中の立ち歩きがおさまらず、じっとしていられない ・嫌なことがあると手が出たり、突然走り出したりする ・話していても目を合わせない ・多動でどこに行ってしまうかわからない就学期(小学校~中学校) ・遅刻や忘れ物が多い ・ルールや順番を守ることが苦手 ・特定の物に関する知識や形式にこだわる ・授業中にじっとしていることができず、注意されても繰り返してしまう ・物の配置や時間割の変更があると、不安になったりイライラしたりする ・文字が読めなかったり、書き間違えたりする ・計算や立体的な図形の理解が苦手思春期(中学~高校) ・体の成長(変化)についていけず戸惑ってしまう ・年齢相応でない態度や振る舞いが目立つ ・同年齢でのお付き合いやコミュニケーションがうまくいかない ・自分の興味関心のあることしかしようとしない ・その場に応じた対応ができず、グループの中で孤立してしまう ・学習面の遅れや偏りが目立つ ・試験までの勉強の予定を立てたり、計画性をもって進めるのが苦手 ・断ることができずたくさんの役割を抱えこんでしまう ・自己肯定感が低下する ・対人的に高い不安を持ちやすい ・マイペースで人に合わせるのが苦手 ・TPOを使い分けできない

症状別、発達障害のある子どもとの接し方

発達障害の特性はさまざまであり、子どもの得意・不得意に応じた接し方をすることが重要です。以下で主な発達障害の特性に対する接し方の事例を紹介します。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

  • 持ち物や時間割は親も一緒に確認して、忘れることを予防する
  • じっとしていることを強要するのではなく、何かを取りに行ってもらったりプリント配布を手伝ってもらうなど役割を伝えて動く時間を確保する
  • 衝動的な行動を減らすよう、子どもが行動する前には「飛び出さないようにゆっくり歩いて行こうか」「買い物をするときは順番に並ぶようにしよう」など気づきを促す声かけをする
  • 自己評価を極端に下げてしまわないよう、他の人の目につかないところで、短く簡潔に注意する。
    できたことはしっかり褒める
  • ゲームの時間やルール、機器の管理方法などあらかじめしっかり決める

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)

  • 漠然とした表現、遠まわしな表現だと混乱してしまうことがあるので、言葉を伝えるときは短く、具体的に、ゆっくりと話す。例えば「きちんと片づけて」と伝える場合は「おもちゃは一番下の棚に戻します」といった具合です。
  • 話し言葉で理解することが難しい場合は、絵や文字などを使って視覚的に伝える
  • 興味、関心のあることには積極的に取り組む場合も多いので、電車が好きな子どもには勉強のときに電車の絵を使って説明したり、目標設定を小刻みにしたりして、本人が楽しくなるように工夫する
  • パニックやかんしゃくを起こしたときは、落ち着くまで見守る
  • これから起こる予定などをスケジュールにして見通しを持ちやすくする
  • 感覚過敏がある場合は苦手な刺激を遠ざける

限局性学習症/学習障害(LD)

  • 「こんなことも分からないの」と叱るのではなく、子どもの苦手な部分を理解し、その子どもに合った学び方を一緒に考える
  • 話し言葉で理解することが難しい場合は、絵や文字などを使って視覚的に伝える
  • タブレットや計算機、マス目が大きいノートなど、特性に応じた教材を使う
  • 主語がない、「てにをは」が抜ける、話す順番がごちゃごちゃになっている場合は「それは○○ということ?」「○○と説明してみるといいかもね」と話し方のルールを覚えられるようにする

特性が重なっている子どもとの接し方

発達障害の特性は、単体ではなく複数が重なっている場合も多くみられます。

例えばADHDと学習障害が重なっている子どもの場合、勉強が苦手で集中力も途切れやすいことがあり、学習面での手厚いサポートが必要です。

また、ADHDとASDの特性が重なる子どもは比較的多いとされ、手順にこだわる一方で集中力が途切れやすかったりミスが多くなったりするなどの特徴が見られます。
勉強をするときは、適度に休憩を入れ、難しい課題は親と一緒にする、簡単な課題は本人がする、時には答えを見ながらおこなうなど、本人の学習ペースに合わせて工夫することが大切です。

特性が重なるとサポートも難しくなる場合があります。支援機関や医療機関の専門家などに相談しながら対応方法を考えていきましょう。

接し方の基本は二次障害を防ぐこと

重要なのは発達障害の特性(症状)を抑えることではなく、その特性によって生じている生活上の支障をできる限り取り除くことです。本人の特性に理解を示し、その子に合った生活環境を整えるようにしてください。

現状に過剰適応しようとして疲れてしまったり、コミュニケーションの苦手さからいじめが起きたりすると、うつ病や不安障害などを発症することもあります。また、不登校やひきこもりのリスクに注意が必要です。

発達障害のある子どもは、学校で失敗体験を重ねてしまうことがあります。できないことや苦手なことを注意するだけでなく、得意なこと・頑張っていることなどたくさん褒めることが大切です。叱るときには感情的に叱るだけではなく、何がいけなかったのか、どのようにすればよかったのかを、本人にわかるように丁寧に伝えることが重要です。

子どもの発達障害を相談できる病院や支援先

子どもの特性・特徴に気づくきっかけ

発達障害に気づくタイミングとして、乳幼児検診が多いと言われています。1歳半検診、3歳児検診で発達の特性を指摘される子どもも少なくありません。また、保育園や幼稚園、小学校などの先生から生活・授業での変わった様子などを聞くこともあります。
検診で指摘された場合、自治体によっては子育ての相談窓口を紹介してくれることがあります。また、特性の現れ方によっては発達障害に関する専門家がいる公的機関や医療機関への相談をすすめられることもあります。

病院受診・診断の流れ

子どもの発達障害は、児童精神科や発達外来などで診てもらうことができます。どこで診てもらえばいいのか分からない場合は各自治体に設置されている発達障害者支援センターなどでたずねる方法があります。
現在、発達障害に関する受診人数が増加しており、地域によっては専門病院は診察まで数ヶ月かかることもあります。受診したい場合は予約を入れて待ちましょう。

■診察の流れ

まずは問診(医師が生活の様子などを親子に聞くこと)が行われ、子どもは心理検査や知能検査などを受けます。その他、生理学的な検査を受ける場合もあります。医学的な基準を満たしていた場合に発達障害と診断されます。診断は、単体の場合もあれば、ADHDとASDといったように重複することもあります。

発達障害の診断が下りるとどうなる?

子どもの診断を知ることで一人ひとりに合わせた個別の(教育)支援計画の立案も可能になります。
また、子どもによっては衝動性をコントロールしたり、睡眠を整えたりするための薬が処方される場合もあります。主治医と相談しながらすすめていきましょう。
地域によって異なりますが、さまざまな行政的サービスを得られるようになります。例えば、障害者手帳や障害児通所受給者証などを利用すると、公共施設利用時の割引や療育の負担費用の軽減などの経済的支援を受けることができます。また、障害のある子どもの扶養者に支給される特別児童扶養手当などの親向けの経済支援もあります。

■診断が下りないから「発達障害の特性なし」ではない

発達障害の診断は、そのときの子どもの状態や体調にも左右されます。また、診断がなされなかった場合でも「発達障害の特性がない」ということにはなりません。
障害として診断されるには至らなくても、発達障害の特性のある子は多くいます。検査結果の説明を受ける際に、「○○は得意ですが、○○は少し苦手な傾向があるようです」など、その子の特性の傾向や対処法なども合わせて教えてくれる医療機関もあります。

発達障害に関する相談・支援先

子どもの発達障害や子育てに関する相談は、以下の場所などで対応しています。

・発達障害者支援センター
公式HPはこちら

・児童発達支援センター
公式HPはこちら

・自治体の育児相談窓口(保健所)
公式HPはこちら

・教育委員会が設置している相談窓口
各自治体の教育委員会のページを探してみると、窓口を設置しているところもあります。

このほか、学校のスクールカウンセラー、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの発達支援施設でも相談をすることができます。それぞれの施設の役割は異なりますが、まずは相談してみることが大切です。近くにある施設や気になったところに行ってみましょう。

発達障害のある子どもの将来・進路に関する選択肢や支援制度

子どもが成長するにつれて社会から求められるノルマは増え、さらに複雑になっていきます。子どもの将来に不安を感じることがあるかもしれませんが、ライフステージに応じた支援制度、また、特性に応じた学びの場・働く場も存在します。ここでは主なものを紹介します。

就学・進学

進路・進学先

特性や症状の程度に合わせたクラスや学校があります。入級・入学を検討する場合は、各自治体の就学相談窓口で話を聞いてみましょう。

■通常学級(普通学級)

クラスの子ども全員に対して同じ授業を行うクラスです。サポートが必要な場合には学習支援員などがつくこともありますが、学校や地域によって異なります。

■通級指導教室(通級)

通常学級に在籍しながら一定の頻度で利用する小規模クラスです。学習や集団活動における支援を受けることができます。

■特別支援学級

子どもの特性や症状に合った支援を行う小規模クラスです。普段から在籍して学習や集団活動における支援を受けることができます。子どもの状態に合わせて自閉症・情緒障害特別学級・知的障害特別学級など、さまざまな学級があります。

■特別支援学校

特性や症状に合った支援を受けながら勉強をする学校です。1クラス6人程度で、社会参加や自立に向けた総合的な支援を行います。小学部から高等部まであります。幼稚部があるところもあります。

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療育

療育

特性のある子どもの発達を促し、自立を支援する学びやトレーニングを提供する「療育」は、さまざまな療育施設で受けることができます。
通所支援型では、自宅や学校から通って療育を受けることができます。さらにその中で医師の治療を併せて行う必要がある場合に利用できる医療型の施設があります。
通所型の療育施設は、就学前は児童発達支援、就学後は放課後等デイサービスなど、学齢に応じて変わります。

就職・就労

■就職サポート

自分の特性に合った仕事を探すサポートをする就労移行支援、同じ職場で長く働くための相談や支援を行う就労定着支援などがあります。仕事に関する相談は、障害者就業・生活支援センター、障害者職業センター、地域若者サポートステーションやハローワーク(障害のある人向け窓口)などで対応しています。

・障害者就業・生活支援センター
障害のある人の生活と仕事、両面から相談ができる機関です。
健康管理・お金の管理のことから、就職・就労まで相談ができます。
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・障害者職業センター
知的・精神・発達などに障害ある人向けに就労支援をする機関です。
仕事選びや作業訓練・対人訓練も行えます。
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・地域若者サポートステーション
不登校・ひきこもりなどを含めた仕事に就いていない若者に就労支援をする機関です。15~49歳が対象です。
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・ハローワーク
一般的な就労支援を行う機関ですが、障害のある人向けに「専門援助」というかたちで相談することができます。
公式HPはこちら

・就労移行支援事業所
一般企業への就労を目指す、障害や難病のある方が利用できる機関です。働くための知識や能力を身につけることができます。
公式HPはこちら

・発達障害者支援センター
就労専門ではありませんが、発達障害のある人の生活を全般的に支援する機関です。日常生活の相談もできます。
公式HPはこちら

■さまざまな働き方

通常の働き方以外にも、特性や症状に対する一定の配慮を得て働くことができる仕組みがあります。
あらかじめ障害特性を伝え、体調や特性による配慮を得ながら一般企業で働く「障害者雇用」、一般企業や社会福祉法人などが運営する事業所において、特性や体調に対する一定の支援の下で働く「就労継続支援(福祉的就労)」などです。

自立

■障害年金

障害や病気によって生活や仕事に支障が出た場合に支給される年金で、若くても受け取ることができます。

・日本年金機構
公式HPはこちら

■グループホーム

障害や特性のある人が集合型住宅などで、入浴、食事などの介護や生活相談、その他の日常生活上の支援を受けながら共同生活を送る住居です。
詳しくはこちら

■成年後見制度

金銭的な管理や契約を結ぶなどの生活における重要な判断をする能力が不十分な人を支援する制度です。家庭裁判所に選任された成年後見人が、本人に代わって財産管理などを行います。
詳しくはこちら

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まとめ

発達障害の特性がある子どもを見守り育てるなかで、さまざまな苦労があるかもしれません。
まずは、子どもが今できていることに目を向けて、褒める言葉がけを増やすのも一つです。子どもの特性や関わり方のコツを学ぶことによって、お互いがその子の得意・不得意に応じた接し方ができるようになることがあります。
子どものケアも大切ですが、保護者のケアも忘れてはいけません。つらくなったら休養をとったり、専門家に相談することも大切です。

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