2021.11.08
特別支援学校に入るには、どのような基準や流れがあるでしょうか。
この記事では、特別支援学校への入学の流れや対象、教育環境・内容、また私立や各都道府県ごとの一覧まで紹介します。
監修
井上 雅彦
鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。
特別支援学校とは、障害のある子どもに向けた学校です。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校に準ずる授業内容でありながら、障害による生活や学習面の困難の克服、自立に必要な知識や技能を習得することを目的とします。
対象となる障害は5つで、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)です。
特別支援学校は、2020年時点で日本に約1,100校あり、近年の傾向としては「知的障害と肢体不自由」など複数の障害に同時に対応できる学校が増えています。
養護学校は特別支援学校の以前の呼び方の一つです。
特別支援学校は以前、「養護学校」「ろう学校」「盲学校」と分けられておりましたが2007年の法改正によってその区分はなくなり、特別支援学校と呼ぶようになりました。
そのため、特別支援学校の中には旧ろう学校・旧盲学校のように、視覚障害のある子どもや聴覚障害のある子どもは受け入れができない学校があります。
ほとんどの都道府県において特別支援学校の障害種別の記載があるため、受け入れ障害を参考に学校を選ぶと良いでしょう。
特別支援学級とは、子ども一人ひとりに応じた教育を受けることができる少人数の学級です。
障害種別ごとに学級が用意されており、「自閉症・情緒障害」「知的障害」「肢体不自由」「弱視」「難聴」「言語障害」「病弱者及び身体虚弱」があげられます。
通級とは、「通級指導教室」の略で、通常の学級に在籍しながら週に数回、特別の指導を受けます。
特別支援学校や特別支援学級に比べて、障害の程度が比較的軽い子どもを対象としています。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
※自閉症の医学的診断名は現在ASD(自閉スペクトラム症)となっていますが、文部科学省が定める種別に基づき、
出典元において自閉症と記載されているためこちらの表記を使用しています。
特別支援学校への入学は、就学相談を通して総合的に判断されます。就学相談の開始時期は、自治体によりますが入学1年前の4月頃からが一般的です。
就学相談では子どもの様子や必要な支援について、保護者と就学支援委員会、学校で話し合い、就学先を11月頃までに決定、1月頃に通知が発送されます。
就学相談について、詳しくは以下の記事を参考ください。
特別支援学校の入学対象にあたる障害の程度はどのようなものでしょうか。
学校教育法施行令第二十二条の三によると、以下の通りとなります。
知的障害
・”知的発達の停滞により、意思疎通や日常生活に援助を必要とする状態”
・”社会生活への適応が著しく困難な状態”
視覚障害
・”両目の視力が0.3未満で、拡大鏡などを使っても文字や図形の認識が難しい状態”
聴覚障害
・”両耳の聴力が60デシベル以上で、補聴器などを使っても通常会話の声が聞き取りにくい状態”
肢体不自由
・”補装具を使っても、歩く・書くなどの日常動作が難しい状態” など
病弱
・”疾患により、医療や生活規制を必要とする状態” など
特別支援学校の学級は、特別な事情がない限り、同学年の生徒かつ障害の種別ごとで編成します。
生徒の人数は、特別な事情がない限り、小学校と中学校においては6人以下、高等学校においては8人以下としています。
8割程度の特別支援学校の教職員は、通常の教員免許だけでなく、特別支援学校の教員免許も持っています。
教職に関する科目において「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱っているほか、特別支援教育について専門的に学べる科目を設置している大学もあります。
免許取得後も資質向上を図るためにも、、講習によりさまざまな研修が用意されていたりします。
特別支援学校に通いたくても、障害の種別によっては通学して教育を受けることが困難な子どもがいると思います。
そのような子どもに対しては、教師を家庭や児童福祉施設、医療機関などに派遣し教育をする「訪問教育」を実施しています。
平成29年5月1日現在、小学校1,240人、中学校782人、高等学校806人の子どもが、訪問教育を受けています。
特別支援学校には、日常的に医療的ケアを必要とする子どもも在籍しています。
医療的ケアは看護師などが行うことが原則ではありますが、社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下に医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校の教職員についても、制度上実施することが可能となりました。
これにより、医療的ケアの必要性から特別支援学校に通うことができなかった子どもも、教職員がたんの吸引、経管栄養(胃ろう・腸ろう)、自己導尿の補助を実施することができるようになったため、特別支援学校への通学できます。
特別支援学校では、子どもひとり一人の特性に合わせた教育を実施しています。
たとえば、「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」に基づいた教育を実施したり、視覚障害のある子どもには白杖を使って歩く力を身につける学習を実施するなど、ひとり一人の障害や年齢に合わせた教育を行っています。
特別支援学校では、通常の教科書のほか、子どもの障害や特性に合わせた教科書・教材が使われています。
文部科学省著作の教科書には、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書があります。
このほかにも、知的障害のある子どもには下の学年の教科書・教材を使ったり、視覚障害のある子どもには白黒反転した教科書・教材を用意したりして、学びやすい環境整備を行っています。
特別支援学校に入学するメリット・デメリットは、一概には言えません。
しかし期待するところとしては、子どもが専門性を持った先生から、必要なカリキュラムを特性に合った形で受けられる点です。
気を付けたいところは、カリキュラムによっては知的障害高等特別支援学校・知的障害特別支援学校高等部を卒業しても、大学に進学できる資格を得られない場合があることです。
職業訓練に重点を置いた高等特別支援学校・特別支援学校高等部には、卒業後の就職への安心感があります。しかし卒業後に専門学校や大学・自身で就職先を決めたい場合などは、学校に確認することが大切です。
知的障害のある子の小学校入学
・保護者向け勉強会
・参加無料
・オンライン開催
特別支援学校の対象となる障害は、前述のとおり5つで、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱(身体虚弱を含む)です。
学校教育法施行令第二十二条の三に明示されている障害の程度においても、発達障害といった文言は含まれていません。
実際に発達障害のある子どもが特別支援学校に入学できるのでしょうか。
知的障害特別支援学校は知的障害のある子どもが入学できるため、知的障害と発達障害の両方ある子どもも入学できます。
また、自治体によってIQ70以上でも入学できる地域もあります。IQ70以上の発達障害のある子どもについては、各自治体ごとに事情が異なります。
病弱特別支援学校の場合は、発達障害の有無というよりは、心身症など心と身体の問題を抱えている子どもを対象にしています。
子どもの状況に合わせて、各自治体の専門窓口に相談することが大切です。
現状として、高等部を中心に特別支援学校の教室は不足しています。
2017年の「特別支援学校における教室不足に関する意見交換の結果について」では全国的に3430教室の不足が生じているとされています。
生徒数も、2007年から比べると2017年には1.2倍の約72,000人にもなります。
お住まいの都道府県の特別支援学校は、下記をご参考ください。(2023年現在)
私立の特別支援学校は、2023年現在14校あります。下記をご参考ください。
・日本体育大学附属高等支援学校 (網走市)(知的障害)※寄宿舎男子校
知的障害向け
「特別支援学校」卒業後の準備
・保護者向け勉強会
・参加無料
・オンライン開催
特別支援学校とは、障害のある子どもにとって必要な学びを得ることができる学校です。
入学に際しては、就学相談を通し総合的に判断されます。高等特別支援学校・特別支援学校高等部は、カリキュラムによっては大学進学資格が得られない場合もあるため、確認が必要です。
実際に特別支援学校を探す場合は、私立の特別支援学校も含めて、都道府県ごとに一覧のリンクを用意しましたので、ご参考ください。
発達障害については、制度的に特別支援学校の対象となる障害に含まれないものの、知的障害や心身症をあわせもつ発達障害の子どもについては、ニーズに基づいて知的障害特別支援学校や病弱特別支援学校で学ぶことができます。
教室は高等部を中心に不足が続いていますが、特別支援学校教諭免許状を保有する特別支援学校の教員は年々増えてきています。
都道府県によっても状況は異なるため、地域の専門窓口に確認しながら、子どもにとってより良い環境を探していくことが大切です。
無料発達障害のある子どもとその保護者向け勉強会
中学・高校の選択と
今からできる準備