中学生になって学習障害と分かったら?塾の選び方や障害タイプ別の勉強方法

学習障害のある子どもにとって、中学生は課題の増える時期と言えるかもしれません。実際、勉強の難易度が上がり、学ぶ範囲が広がり、定期テストだけでなく受験対策などが入ってくることもあります。

この記事では、学習障害の特性に応じた勉強の工夫や中学生ならではの課題、学習塾の選び方などを説明します。

監修

井上 雅彦

鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上自閉症のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。株式会社LITALICO社外取締役。

発達障害の一つ、学習障害とは?

学習障害とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうち、1つあるいは重複して習得・活用に困難を示す発達障害のことです。LD(Learning ・Disorder)と略されることもあります。

知能指数(IQ)などによって測られる「知的障害」とは異なり、「特定分野の理解に難しさがある」「学び方に癖があり、一般的な学習方法だと伸びにくいことがある」などの特徴があります。

なお、病院で診断される学習障害(限局性学習症/限局性学習障害)と、教育的な観点での学習障害の定義は若干異なります。この記事では、文部科学省の定義に沿って説明します。

学習障害の種類は主に3つに分類されます。

ディスレクシア(読字障害)

文字の読み方・形の認識が難しい、など字を読むことに関する困難さがあります。

ディスグラフィア(書字表出障害)

文字の形が認識しづらく、視覚から得る情報処理が難しいため、字を書くことに困難さがあります。

ディスカリキュリア(算数障害)

算数・計算、その場にないものを推論することに困難さがあります。順番に数えることはできても、数字や数式を概念として捉えることが苦手な場合があります。

勉強方法の工夫や、学習障害の相談や検査をする場所については、下記の記事をご覧ください。

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小学生の学習障害とは?原因や特徴、教材などの勉強方法について

学習障害の特徴例をチェックする

学習障害の特性は幅広く、単独であったり重複していたりするほか、特性傾向の強弱があったりとタイプは子どもによってさまざまです。ここで挙げるのはあくまで一例ですが、具体的な特徴や困りごとには以下のようなものがあります。

学習障害:国語に関するチェックポイント

・形の似た文字を読み間違える、文末などを自分の想像で変えて読む
・左右反転の鏡文字を書くことがある
・文章のルールの理解が難しい(主語が抜ける、「てにをは」の誤りなど)

学習障害:数学に関するチェックポイント

・暗算が苦手、数字を読み間違える
・+-などの記号の意味が記憶できず、計算できないことがある
・算数の応用問題・証明問題・図形問題が苦手

学習障害:英語に関するチェックポイント

・英単語を見ても理解できないことがある
・音読するときに、英単語の発音で詰まる
・書き写しの際にアルファベットが抜ける

学習障害:コミュニケーション(聞く・話す)に関するチェックポイント

・要点を理解したり、まとめて話すことが苦手
・話の文脈から意図を推論することが難しい

そのほか、頭で理解して体を動かすことが苦手な場合は実技系の授業に困難さがあったり、注意力が散漫・動作が緩慢になることなどから生じる困りごともあります。

中学生になって学習障害に気づいたら?検査や診断について

学校生活では、それまでは感じられなかった子どもの学習面などでの困難さが表れることがあります。学習障害であっても、自分のペースで過ごしていると気にならないかもしれません。学校のような集団で行動する場所では、個人個人の課題が目立つことがあります。
小学校では、授業を通して「うまく書けない・読めない」などの特性が徐々に表れてきます。

中学校の授業はより複雑になり、また、定期テストや長文読解などの受験に向けた勉強も加わります。授業のスピードや宿題の量にも変化が出て、障害の有無に関わらず子どもにとっては大変な時期だと言えます。

小学校ではそれほど困難さが出ていなかった子どもも、中学校の授業で学習障害が判明することがあります。

医学的学習障害の検査や診断

医学的な学習障害に該当するかどうかは、児童精神科や発達外来などで診てもらうことができます。診察では学校生活や授業の様子などについて説明し、必要があれば心理検査や知能検査・読み書き計算に関する検査などを受けます。

精神疾患の診断で広く用いられている『DSM-5』などの基準を満たした場合に、学習障害と診断されます。

学習障害は単独で存在するだけでなく、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)といった他の発達障害と合併して表れることが多いため、対人コミュニケーションの困難や注意や集中の困難さなど、全体的な困難さに着目しつつ読み書き計算や学習に対する対応を考えていきます。

学校生活で支援を受けるための学習障害の判断(教育的評価)

実際の学校生活や授業でどんなサポートを受けられるかは、各教育委員会や学校の判断によって変わります。以下のような要素がポイントになります。

・知的発達の遅れがあるか(知的障害があるかどうか)
・認知能力にアンバランスさが見られるかどうか
・医学的な学習障害に該当するかどうか
・他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因かどうか 

また、普段の様子に加えて、学力テストの結果や面談内容、主治医の意見なども参考にされます。家庭でも本人の意見や様子を整理しておくとスムーズです。

数学や英語…中学校での苦手科目の勉強方法は?

学習障害のある子の場合、勉強でつまづくことが多くなるかもしれません。そういうときは学校へサポートを依頼しつつ、以下のような点に留意して勉強方法を工夫することも一つです。

勉強方法の工夫1:子どもの特性に合った勉強の仕方を取り入れる

前述のとおり学習障害の症状は幅広く、どんな分野が苦手なのかは人それぞれです。まずは子どもがどの部分でつまづいているのかを把握して、その課題に対する対処方法を見つけることが大切です。

例えば英単語の読み書きが難しい場合は、「アルファベットの上にカタカナでルビを振って視覚的な理解を促し、同時に英単語の読み上げ音声を聞きながら発音練習を行う」などの方法もあります。

また、プラスマイナスの概念が分からず順序立てた計算が苦手な場合は、数字や記号を、その子どもの好きな分野の言葉で表現するとイメージが掴みやすいことがあります。プロ野球が好きでスポーツニュースで試合結果を「貯金、借金」と表現することに馴染みがある子どもであれば、「-7+2」を「借金7から貯金2を返す」と言い換えるなどです。

勉強方法2:使う教材を変える

「同じ大きさで文字が書けない場合は大きいマス目のノートを使う」、「文章読解が苦手な場合は読む場所だけを目立たせることができるシートを活用する」、「文字を書くことが苦手な場合はキーボードで入力する」といったように、特性に合った教材を使用すると勉強がスムーズになります。

小中学校の授業ではタブレット端末などを利用するICT教育も徐々に広まっています。読み上げ機能、文字の拡大表示機能、フリガナ機能、ハイライト機能などを備えるデジタル教科書やタブレット、書き写しが苦手な子向けにデジタルカメラを使用するなど、子どもが使いやすい教材を使用することで効果的な学習ができるようになることがあります。

教材の種類や活用方法は以下のサイトで調べることができます。

・特定非営利活動法人全国LD親の会「発達障害児のためのサポートツール・データベース」
公式HPはこちら

・独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「支援教材ポータル」
公式HPはこちら

学習障害のある中学生は塾に通ったほうがいい?選び方や塾以外の支援は?

中学校での授業に遅れが出ていたり、進学を見据えている場合には学習塾に通うことを検討するご家庭も多いようです。

学習障害のある中学生が学習塾で学べること

一部の塾では下記のような支援を提供しているところもあります。

■ソーシャルスキル

・コミュニケーションや集団生活でのマナー
・体調管理や感情コントロールなどの生活管理

■学習スキル

・特性に合った教材を使用した理解しやすい勉強方法の構築
・テーマについて調べたり実験のレポートをまとめる力を身につける
・苦手な教科の課題を見つけて授業の遅れを取り戻す
・高校受験に向けた過去問や面接対策

先生と生徒のマンツーマンと集団授業の形式を取り入れている塾が多く、子どもの特性に応じて選ぶことができます。

学習障害のある中学生の塾はどうやって選ぶ?

学習塾はそれぞれの方針にのっとって運営しているため、指導方法も千差万別です。以下のポイントなどを確認しながら塾選びを進めてみましょう。

・どのような教材を使っているか
・どのような講師がいるか
・集団ではなく個別対応があるか
・子どもの伸ばしたい分野・克服したい分野に対応する授業はあるか
・オンライン・ICT機器の活用など、子どもに合ったスタイルの授業はあるか
・子どもの困難さに対応した教材・学習方法など用意してもらえるか
・これまでの指導実績や進路先
・塾代 など

見学や授業体験を行っている塾も多くあります。まずは問い合わせることが大切です。

学校・塾以外に学習支援はある?

■療育(放課後等デイサービス)

児童福祉法に基づくサービスで、生きづらさを和らげるためのスキルを身につけて自立や社会参加を促す支援のことです。生徒は教室に通いながら学習支援や社会生活スキルを学ぶための幅広い支援を受けることができます。
例えば、認知特性に合わせた学び方、自己理解、金銭管理・時間管理といった生活スキルを学げます。

まとめ

中学生になると授業も難しくなり、進路に応じた対応も求められるようになります。学習障害のある中学生にとっては、さまざまな課題が見えてくる時期かもしれません。

まずは発達障害者支援センターやお住まいの自治体の窓口で相談することも一つです。その上で主治医や学校側と話し合い、学校生活でどのようなサポートが必要なのか、どこまでサポートできるのかを見極めて、子どもが学びやすい環境を作ることが大切です。

苦手を克服するだけではなく、指導や学び方・使用教材などを工夫することで、より高い学習意欲や自己評価に繋がることがあります。

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