2023.01.26
発達障害の有無に関わらず、子どもに学習の遅れがあったり、受験に向けて学習面での底上げを行ったりしたい時に、学習塾への通塾を検討することがあるでしょう。
発達障害のある子どもの場合、学習する意欲はあっても集中力が続かなかったり、読み書きが苦手だったりと、発達障害の特性のために学習につまづいてしまうことが多くあります。
発達障害の特性がある子どもにはどんな塾が合っているのか、塾選びの時に気をつけたいポイントをご紹介します。
監修
井上 雅彦
鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。
発達障害のある子ども、もしくは発達障害の傾向があるグレーゾーンの子どもは、得意・不得意の凸凹(でこぼこ)が大きく、生活面や学習面でさまざまな特性が見られます。
学習面においても、人によって学習の遅れや偏りが目立つ、文字が読めない・書き間違える、抽象的な概念を理解することが苦手、問題の意図を理解できない、計画性を持って勉強することが苦手ということがあります。
子どもに合わない勉強方法を強要することで、「勉強=嫌なもの」と認識してしまったり、「みんなと同じようにできない自分はダメだ」と自己肯定感を下げてしまったりする可能性があります。
しかし、発達障害の特性に合わせた学習スタイルや環境を整えることで、その子どもの能力を伸ばし、可能性を広げることが期待できます。
例えば、学習面ではその子どもに合わせた学習方法を探してくれたり、生活スキル・社会性が身につくようなSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を取り入れたりしている塾であれば、発達障害のある子どもも安心して通えるかもしれません。ただし、発達障害の子どもは必ずこういう塾に通うべきという定石はありません。
あくまでも、その子ども一人ひとりの特性に合わせて、最適な環境を選ぶ必要があります。
塾に通う目的によって、どんな塾を選ぶべきかも変わります。まずは「なぜ塾に通うのか」「塾に通ってどうしたいのか」という目的を整理してみましょう。
例えば、以下のような目的が考えられます。
・授業の遅れを取り戻したい、学校の授業でカバーできない部分を補いたい
・その子どもに合った学習方法を見つけたい
・子どもが自分で勉強する習慣を身につけたい
・中学受験・高校受験など、受験対策をしたい
発達障害のある子どもの場合、一般的な学習塾での勉強方法が合わない可能性もあります。
その塾に通って目的は達成されるのか、子どもに合った学習方法は提供されるのかといった部分は、必ず塾に通う前に見極める必要があります。
一方で、実際に通い始めてから、思っていたイメージと異なる・子どもに合っていないように感じるということもあるかと思います。
その場合は、もう一度目的に立ち返って、違う環境を用意するかどうかを検討してみることも必要です。
「中学受験」という選択
・専門家監修
・参加無料
・オンライン開催
学習スタイルは塾によってさまざまです。どのような先生に教えてもらうか、何の教科を教えてもらうかなどによっても変わります。
あくまでも目安にはなりますが、子どもの特性・性格や塾に通う目的に合わせて、塾選びの際の参考にしてみてください。
講師が一人に対して、10名以上の生徒に教えるスタイルの塾です。
主な目的は、受験対策や学校の授業の補習です。
塾にもよりますが、発達障害の特性に対しては、あまりフォローを行っている塾は多くありません。
・受験に特化したカリキュラムが組まれていて、合格に向けたペース配分が決まっている
・他の生徒と競い合って切磋琢磨できる
・校外にも友達ができて、いろんな情報交換が可能
・プロの講師が多い
・個別や家庭教師と比較すると通塾料が安い傾向にある(ただし夏期講習など特別プログラムを追加する場合は高額になる可能性もある)
・授業のペースが早いため、ついていけない可能性がある
・大人数での授業は学校のスタイルに似ていて、多動や感覚過敏のある子どもにとって集中しにくい環境である可能性がある
・分からないところは自分から聞きに行く主体性が必要
・先生との相性が悪くても基本的に変更ができない
・前提として、発達障害の特性に合わせた配慮のない環境が多い
講師が一人に対して、4名〜10名の生徒に教えるスタイルの塾です。
主な目的は、受験対策や学校の授業の補習です。
塾にもよりますが、発達障害の特性に対しては、集団授業と同じくあまりフォローを行っている塾は多くありません。
・目標やレベルが近い集団で学習ができる
・複数人で授業を受けるため、他の生徒と切磋琢磨できる
・大人数の集団授業と比較すると、一人ひとり細かい指導を受けることが期待できる
・先生との距離も近いため、質問がしやすい
・個別や家庭教師と比較すると通塾料が安い傾向にある(ただし夏期講習など特別プログラムを追加する場合は高額になる可能性もある)
・人数は少ないが、授業のペースが早いため、ついていけない可能性がある
・人数は少ないが、授業は学校のスタイルに似ていて、多動や感覚過敏のある子どもにとって集中しにくい環境である可能性がある
・大人数の場合と比較すると、先生との相性が悪いと子どもへの影響が大きくなる
グレーゾーン向け個性を伸ばす「中学・高校受験」
・保護者向け勉強会
・参加無料
・オンライン開催
講師が一人に対して、1名〜3名の生徒に教えるタイプの塾です。
主な目的は、受験対策や学校の授業の補習です。
塾にもよりますが、発達障害の特性に対して合理的配慮を依頼しやすい環境と言えます。
・子ども一人ひとりのレベルに合わせてカリキュラムを調整できる
・周囲のペースを気にせず、質問など先生とのコミュニケーションが取りやすい
・講師も子ども一人ひとりの得意・不得意を把握しやすい
・先生との相性が合わなければ、比較的容易に変更が可能
・塾にもよるが、個別の相談や合理的配慮を調整しやすい
・子どもに合わせたペースで学習を行うと、受験に間に合わないなどの可能性がある
・他の生徒が多くないため、切磋琢磨して高いモチベーションを保つことが難しい
・プロの講師ではなく大学生などのアルバイトである可能性や、塾の都合で変えられることがある
・集団授業・少人数授業と比較すると費用が高くなる傾向がある
講師が自宅に来て、マンツーマンで学習を行います。
主な目的は、受験対策や学校の授業の補習です。
発達障害の特性に対しては、合理的配慮を依頼しやすい環境と言えます。
・子ども一人ひとりのレベルに合わせてカリキュラムを調整できる
・周囲のペースを気にせず、質問など先生とのコミュニケーションが取りやすい
・講師も子ども一人ひとりの得意・不得意を把握しやすい
・個別の相談や合理的配慮を調整しやすい
・送迎の必要がない
・自宅で学習ができるので、本人の負担が少ない
・子どもに合わせたペースで学習を行うと、受験に間に合わないなどの可能性がある
・他の生徒がいないため、切磋琢磨して高いモチベーションを保つことが難しい
・先生がプロの講師ではなく大学生などのアルバイトである可能性や、塾の都合で変えられることがある
・集団授業や少人数授業と比較すると費用が高くなる傾向がある
・自宅で授業を行うため、親が在宅する必要があり、事前の掃除などある程度準備が必要
・個人で行っている家庭教師の場合、大手学習塾と比較すると受験に関する情報が少ない可能性がある
「中学受験」という選択
・保護者向け勉強会
・参加無料
・オンライン開催
発達障害のある子どもに対して、日々の困りごとを軽減し、学習のサポートを行うことを目的として、療育プログラムが行われる場合があります。
目的は、プログラムによって異なりますが、学習面の苦手さを克服するプログラムや社会性を養うためのSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を行うなどさまざまです。
発達障害の特性に合わせて、適切な支援・サポートを行います。
・専門的な知識を持ったスタッフが、子ども一人ひとりのレベルに合わせてカリキュラムを作成する
・特性に合わせた独自のプログラムに基づいて授業を行う
・勉強以外のSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を行う
・特性に合わせて環境調整を行う
・多動やパニックなど、子どもが抱えている困りごとが表出した場合も、専門のスタッフが適切に対応してくれる
・学習面での底上げはあまり行われないため、受験やより高いレベルを目指すことは難しい場合もある
・療育プログラムを行っている学習塾が自宅近くになく、送迎に時間がかかる場合がある
・利用するには待機したり審査したりする必要があり、通い始めるまで時間がかかる
・利用するプログラムによるが、費用が高めになることがある
塾を選ぶ時には、目的・学習スタイル・子どもの特性など、さまざまな要素を見る必要があります。複数選択肢がある中で、発達障害のある子どもに合った塾を選ぶためのポイントを3つお伝えします。
まず第一に、子どもの特性を理解することが大切です。
塾に通う目的が学校で遅れている学習を補うことである場合、学習が思うように進まない要因を考えてみましょう。
たくさん人がいる環境では集中ができなかったり、分からないところを先生に聞きに行くことが難しかったりするようであれば、集団授業を行っている塾は合わないかもしれません。
集中力を持続できる環境なのか、その環境を塾で用意してもらえるのかなど、子どもの特性に合った環境を準備できるよう検討すると良いでしょう。
子どもが、塾に通い続けることができる条件なのかどうかを確認することも大切です。
学校から塾までの距離や通うときの交通手段、何時間授業を受けるのか、塾に通うことで毎日のルーティンにどんな影響があるのかなど、さまざまな条件があります。他にも、学習塾にかかる費用や送迎の有無など、家族としてどこまで協力できるのかということも重要です。
長く通い続けることが可能な条件かどうかをきちんと考えるようにしましょう。
子どもの特性と学習塾・教えてくれる先生との相性が良いかどうかも大切な要素です。
発達障害のある子どもの場合、得意・不得意の凸凹(でこぼこ)が大きく、得意を伸ばせば能力を発揮することができ、逆に不得意なことを押し付ければ強い負荷がかかってしまいます。
例えば、文字を書くことが苦手な子どもの場合、ノートやペンで書き取りばかりを行うスタイルの学習は合わないため、タブレットやカードなどを利用して学習する方が、前向きに学習に取り組むことができることもあります。
また、家で学習に集中することが難しい場合、宿題が大量に出る塾では、学習がどんどん遅れてしまい、先生に怒られたり、自己肯定感が下がったりする機会が多くなってしまう可能性があります。
先生と家族と子どもが一体となり、子どもの特性や状態に合わせて能力を伸ばすような取り組みができる塾が望ましいでしょう。
ただし、特性に合った塾を選ぼうと思うと、家から徒歩圏内には選択肢がなく、ご家庭によっては送迎に時間がかかるという場合もあります。
3つのポイントを全て網羅することが難しい場合は、どのポイントを重視するのか、どの部分であれば調整が可能なのかを踏まえて、複数の選択肢を検討してみることをおすすめします。
LITALICOジュニアでは、子ども一人ひとりのニーズや特性に合わせて「全てのお子さまに、必ず最適な学習方法がある」という考えを基にサポートをおこないます。
発達障害児支援の専門家や、大学教授監修による専門性の高いプログラムが用意されている上、利用者8000名以上と多くの利用実績を通して培ったノウハウが備わっています。
保護者の方へのサポート環境も充実しているので、子どもの発達や成長が気になる方は、ぜひ一度気軽にお問い合わせください。
発達障害のある子どもの場合、集中力が続かない、読み書きが苦手といった特性により、学校や自宅での学習に困りごとを抱えることが多くあります。
そのような困りごとのサポートを行う目的で、学習塾に通うことを検討する家庭も多いでしょう。
しかし、子どもに合った学習塾を選ばないと、逆に子どもにストレスを与えてしまい、「勉強=嫌なもの」というイメージが固定化されたり、周囲はできているのに自分は思ったようにできないと自己肯定感が下がったりと、マイナスの影響が出てしまいます。
最も重要なことは「子どもに合った学習塾を選ぶこと」です。
子どもの特性を理解し、得意を伸ばし、苦手を補うことができるような塾を選ぶようにしましょう。発達障害のある子どもの学習塾選びに迷ったら、ぜひLITALICOライフの勉強会を活用してみてください。
中学・高校の選択と今からできる準備
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