2021.05.02
ASD(自閉スペクトラム症)やグレーゾーンの子どもにとって、高校受験は大きな決断です。中学校までの義務教育を終えるとさまざまな進路の選択肢がありますが、社会へ出る準備を現実的に考えることも必要です。子どもに合う環境はどんなところなのかを見極めながら、高校受験の準備をしましょう。
この記事では、発達障害のある子どもの高校の選択肢と選び方・内申の必要ない高校、またグレーゾーン・ASD(自閉スペクトラム症)・学習障害といった特性に応じた勉強方法や配慮の実例までまとめてご紹介します。
監修
「高校進学」と卒業後の進路
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義務教育は中学校で終了するため、高校から先の進路は自分に合った学校を選ぶ必要があります。
例えば、高校進学を選んだ場合には全日制・定時制・通信制の3つの課程があり、授業の時間帯や、授業を受ける場所なども変わってきます。また障害者差別解消法により、高校においても発達障害の子どもに対する合理的配慮を求められるようになり、支援を受けながら学習できる学校も増えてきました。
まず、高校やそれ以外の進路の選択肢としてどんな学校があるのでしょう?
一日を通して授業が行われます。単位制と学年制があり、普通科・専門学科・総合学科があります。
午前の部・午後の部・夜間の部があります。全日制よりも卒業必須単位は少ないですが、卒業するまでに通常4年かかります。
自宅学習をメインとしていますが、毎日登校するタイプの学校もあります。登校日数や頻度を自分で選択することができます。
サポート校は通信制高校の卒業や単位取得をサポートする場所です。学習・資格取得・就職活動・自立支援などさまざまなサポートがあります。
主に工学・技術系の専門的な教育を行う5年制の学校です。修了すると短大卒扱いとなり、大学に進学する場合は3年からの編入となります。卒業後、そのまま就職する人も多くいます。
職業もしくは実生活に役立つ専門知識を学べる学校です。高卒資格は得られませんが、「技能連携制度」を利用したり、「大学入学資格付与指定校」を選べば大学への進学も可能となります。
自立を目的とした学校です。発達障害などに対する個別の支援が受けやすく、卒業後の就職を目指した職業教育も充実しています。
小・中学校では通級指導教室や特別支援級においてサポートを受けることができますが、高校以降も支援が手厚く、サポートを受けられる学校はあるのでしょうか?
自治体によってさまざまですが、いくつか例をご紹介します。
東京都では令和3年度より、全日制・定時制・通信制を問わず、都立高校の各学校において通級指導が開始され、次のような生徒が対象となります。(※令和3年4月1日段階では1校)
・全日制、定時制、通信制を問わず、都立高校又は都立中等教育学校後期課程に在籍する生徒
・知的障害がなく通常の授業におおむね参加できるが、発達障害などがあり、一部の授業において特性に応じた特別な指導を必要とする生徒
兵庫県では平成30年度から高等学校における通級による指導の制度がスタートしており、通級による単位も認定されています。(※令和3年4月1日段階では12校)
・年間7単位(週 1~7 単位時間)の範囲で、卒業認定単位(高校での卒業に必要な単位)に含めることができる。
・「通級による指導」を高等学校の教育課程に加え、又は選択教科・科目の一部に替えることができる。
各都道府県によっては個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育を行っている学校もあります。
学校一覧は以下をご参考ください。
高等学校の特別支援教育における現状と課題について(P.27※14枚目)|文部科学省
グレーゾーン向け
個性を伸ばす「中学・高校受験」
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発達障害のある子どもの高校選びについて、どんな基準で決めたらよいのでしょうか?
子どもの意思も尊重しつつ、将来の就職や自立のことも考えて進める必要があります。
まずはこれまでの学校や家での様子を振り返って「子どもが得意なことや好きなことは何か」、また「適した環境がどんなものか?」を整理しましょう。
そして、高校卒業後の進路(就職か大学進学か)を見据えながら、伸ばしていきたいところに着目して、どんな学校を選べばそれが実現できるかを見極めることが大切です。
いろいろな選択肢を提示したうえで本人と話し合って、本人も納得できるような進路を目指すことが大切です。親が勝手に進学先を決めてしまった場合、子どものモチベーションはなかなか上がらないかもしれません。
子どもも、自分自身が選んだ学校ならば前向きに通おうという気持ちになれるのではないでしょうか。
また、志望校を早めに決めることで子どもが目標を持てるようになるとモチベーションも上がりやすくなります。
実際に学校をいくつか見学してみて、子どもに合う環境かどうかを確認します。
子どもが通うのに現実的な距離か?授業料など教育費の面なども加味して見学先を決めましょう(現実的に通えない学校を子どもと一緒に見学して、子どもが行く気になってしまうケースもあるため、注意が必要です)。
そのほか、中学校の支援担当の先生や校長先生などに過去の卒業生で支援・配慮を受けている人の実例などを聞くという方法もあります。どんな支援・配慮の方法があるのかを知ることができ、学校選びの参考にもなります。
直接見学ができない場合は、オンライン説明会の参加や、直接問い合わせるのも方法の一つです。
中学・高校の選択と
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高校受験と共に「内申」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。内申書あるいは調査書とは、学校での成績や出欠席などの記録、委員会・部活動・ボランティアなど特別活動についてまとめて記載された書類です。
高校受験において成績表の点数である内申点はどのくらい影響するのでしょうか?
一般的な公立高校入試では当日のテストの得点と通知表を点数化した内申点とを総合した成績を元に選考が行われます。成績に占める内申点のウェイトは各学校や地域によって異なるため事前に必ず確認しましょう。
求められる内申について、中学3年生の成績のみを必要とする高校もあれば、中学1年生から3年生までの成績を必要とする高校もあるため、中学入学後あるいはそれ以前の早い段階で地域の高校入試の情報を集めておくことが重要です。
また、支援級や不登校の状況によっては、内申点をつけない中学校もあるので事前に確認することをおすすめします。
私立高校の受験においては、内申点を点数化せず学力試験の結果のみを選考基準にする学校もありますが、推薦入試は内申点が選考基準に影響する場合もあります。学校ごとに異なるため、確認が大切です。
高校によっては内申書を必要としない学校もあります。地域によっても異なりますが、いくつか事例を挙げてご紹介します。
小・中学校時代に不登校経験を持つ生徒や長期欠席などが原因で高校を中途退学した生徒も受け入れています。志願申告書・個人面接及び作文による選考を行っており、内申点や学力検査は求められません。
総合学科で単位制を採用しており、国語・英語・数学など必修科目以外に情報・福祉・美術などの選択科目も受講可能です。
午前・午後・夜間の三部制からなる定時制高校であり、4年あるいは3年で卒業するという2パターンから選べるため、自分のペースで学習ができます。
中学校の成績に関係なく受け入れており、自分が持っている力をこれまで十分に発揮できなかった生徒に対して、より学習意欲を高められるような取り組みを行っています。
具体的には、少人数授業で基礎学力定着を目指したきめ細かな指導が受けられることや、理解度別による学習によって自分のペースで取り組めることなどが特徴です。
全日制の普通科で、部活動のほかにも職業体験・ボランティア活動などができます。
高校受験の勉強に取り組む際に、ASD(自閉スペクトラム症)やグレーゾーン・学習障害など、それぞれの特性ごとに勉強法を工夫してみることも大切です。
また発達障害のある子どもが公立高校を受験する際に、特性によって通常の入学試験のやり方や条件では実力を十分発揮できない場合があるため、特別な配慮をお願いする方法もあります。
それぞれの特性を理解したうえで、どのように勉強法や配慮の工夫をすればよいのか例を挙げてみましたので参考にしてください。
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもはこだわりが強く、好き嫌いがはっきりしているなどの特徴があります。また、抽象的な概念が理解しづらい・文章題が苦手などの傾向も特徴の一つです。
自分が興味関心を持っていることには集中力を発揮できる場合もあるため、自分のペースで上手く勉強に取り掛かれるような環境づくりが大切となります。
また、学校で頑張りすぎて疲れているときには無理をさせすぎないように配慮が必要です。
ADHDの子どもは、集中力を維持し続けるのが難しい・飽きっぽい・計画的に物事を進めるのが苦手な傾向があります。
そのため、勉強部屋はきちんと片づけて、携帯電話やゲームなど余計な物が目につかないようにするなどの工夫も一つです。
苦手な科目を無理にやらせるよりも、得意な科目を伸ばしてやる気が出るような声かけをしてみましょう。
学習障害がある場合は、できないからといって何回も繰り返し練習しても、特性上なかなかうまく行きません。
苦手なことに対しては学習支援ツールを用いるのも有効です。文章を読んでも理解しづらい場合には、音声で聞かせてあげると理解が進みます。また問題を書き写すのが苦手な場合にはタブレットなどを利用して、問題を写す・計算式を書くという手間を減らしてあげると取り組みやすくなります。
文章を書くのが苦手な場合、漢字の間違いや作文のルールの間違いなどを指摘されると、書く意欲をなくしてしまうこともあります。
例えば文章をいきなり書くのではなく、まずは「いつ・どこで・誰が・何を・どうした」というポイントを絞って言葉で確認しながらメモを取るようにします。そしてそれらの単語を上手くつなぎあわせて文章にできるようにしていきましょう。
それぞれの特性の詳細は下記の記事をご参考ください。
発達障害のある生徒に対する配慮としては以下のような事例があります。それぞれの特性に合わせて配慮を受けることで、子どもが不安なく受験に臨めるようであれば学校に相談してみましょう。
・別室受験(ASD、学習障害、ADHD)
・試験時間の延長(学習障害)
・集団面接を個人面接で実施(ASD)
・問題用紙の拡大(学習障害、ASD)
・問題文の読み上げ(学習障害)
・監督者による口述筆記(学習障害)
・面接の際、質問をわかりやすく伝え、回答を急かさない(学習障害)
・面接の順番を早める(ASD)
など
ただし、学校ごとに対応の方法や基準は異なるため、すべての学校で同様の配慮があるとは限りません。
では、公立高校を受験する際に特別な配慮を受けるための手続きはどのようにしたらよいのでしょうか。
ここでは東京都立高校の場合を例に流れを説明します。
入学後の学校生活における合理的配慮についても、入学試験での配慮の申請に合わせて志願する公立高校に事前に相談してみるとよいでしょう。
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発達障害のある子どもの高校受験を考える場合、まずその目的をはっきりする必要があります。「何となく」ではモチベーションも上がらず、入学してからも長続きしない場合もあるかもしれません。
まずはどのような進路の選択肢があるのかを知り、子どもの特性や伸ばしていきたいところを整理して、本人の意思も尊重しながら選びましょう。
受験をするにあたって、内申点の影響も気になるところではありますが、内申点の影響が無い高校も、一般的な公立高校以外では少なくありません。また、受験時には特性ごとに配慮を受けられる場合もあります。
子どもがチャレンジしてみたい!と考えたときに、子どもの力が十分発揮できるような受験の方法・対策を知っておくことも大切です。
参考
・『親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方』|鈴木慶太(監修)
・山口県教育NAVI|山口県教育委員会
・未来をひらく高等専修学校|文部科学省
・「都立高校における発達障害教育の充実について」|東京都教育委員会
・兵庫の特別支援教育|兵庫県教育委員会
・わとく地域支援センターだより 令和元年7月|兵庫県立和田山特別支援学校( わとく地域支援センター)
・『親子で乗り越える思春期の発達障害 (親子で理解する特性シリーズ)』|塩川宏郷(監修)
・2019都立高校入試案内パンフレット|東京都教育委員会
・「これまで設置してきた多様なタイプの学校」|東京都教育委員会
・入学選抜実施要項|東京都立高等学校チャレンジスクール
・「新しい学びのかたちから高校をさがす」|神奈川県ホームページ
・平成31年度クリエイティブスクール入学者対象アンケート 調査結果 |神奈川県
・『発達障害&グレーゾーンの小学生の育て方』|井上 雅彦 (著)
・『アスペルガー・ADHD発達障害シーン別解決ブック』|司馬利恵子(著)
・『お母さんが「コレだけ」は知っておきたい 発達障害の基礎知識』|宮尾益知(監修)
・高等学校の入学試験における発達障害のある生徒への配慮の事例|文部科学省
・東京都立高等学校入学者選抜実施要綱|東京都教育委員会
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