2022.12.23
放課後等デイサービスとは、障害のある子どもや発達に特性のある子どもをサポートをする施設の一つです。
発達に気になる子どもがいる保護者は、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
学校や家庭以外の場で、自立支援と日常生活の充実のための活動などを行う放課後等デイサービスですが、施設ごとに目的や行っているプログラム・設備などは異なり、「どのようなサービスを提供しているのか分かりづらい」「通うことでどんなメリットがあるのか不安」「手続きが複雑で、自分の子どもが通えるのか分からない」という声もあります。
今回は放課後等デイサービスの目的やサービス内容、利用条件、利用するための流れや料金設定について、分かりやすく解説します。
放課後等デイサービスとは、障害のある就学児童(6歳〜18歳)の子どもが利用できる福祉サービスです。
児童発達支援管理責任者が作成する個別支援計画に基づいて、自立支援と日常生活の充実のための活動などを行うことが目的です。
2012年4月の児童福祉法改正により、放課後等デイサービスが設置されました。
それまでは、障害の種類別に施設が分かれていましたが、この法改正を機に、年齢や目的別に児童発達支援 ・医療型児童発達支援 ・放課後等デイサービス ・保育所等訪問支援へと再編成されました。
また、この改正に伴い、今まで不足していた障害児自立支援施設を増やすために、大幅な規制緩和も行われ、住んでいる地域で未就学の乳幼児の頃から、就学した後、高校を卒業するまで一貫して福祉サービスを受けることが可能となりました。
放課後等デイサービスと混同しやすいサービスとして「児童発達支援」があります。
障害のある子どもを支援するという基本方針については大きな違いはありませんが、対象年齢が異なります。
児童発達支援の場合は未就学児、つまり0歳〜6歳が対象、放課後等デイサービスの場合は就学児童、つまり6歳〜18歳が対象となります
放課後等デイサービスの利用対象者は、厚生労働省により下記のように定められています。
身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む)
年齢としては6歳〜18歳、幼稚園や保育園と大学を除く、小学校・中学校・高等学校に通っている年齢の児童
「障害のある児童」に関しては、療育手帳や障害者手帳がなくても、専門家などの意見書などを提出し、放課後等デイサービスの必要が認められれば、受給者証が市区町村から発行され利用が可能になります。
言い換えると、この受給者証がなければ療育手帳や障害者手帳を持っていたとしても、放課後等デイサービスの利用ができません。
「原則就学児童」に関しては、引き続きサービスを受けなければ福祉を損なうおそれがある場合のみ、20歳まで利用延長が可能です。
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放課後等デイサービスが持つ役割を、厚生労働省では次の3つと定義しています。
①子どもの最善の利益の保障
②共生社会の実現に向けた後方支援
③保護者支援
それぞれ詳しく見ていきましょう。
放課後等デイサービスは、児童福祉法第6条に基づき、障害のある子どもに対して、授業の終了後または休日に、日常生活で必要な自立につながる訓練、社会との交流を供与することを含めたサポートを行うことが、一つ目の役割として挙げられています。
支援を必要とする子どもに対して、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験などを通じて、個々の状況に応じた発達支援をおこなうことにより、子どもの最善の利益の保障と健全な育成を図ることが、放課後等デイサービスの存在意義とも言えます。
放課後等デイサービスには、子どもの地域社会へ参加・包容(インクルージョン)を促進するため、他の子どもも含めた集団の中での生活を保障する視点が求められます。
放課後児童クラブや児童館でも一般的な子育て支援施策が行われていますが、放課後等デイサービスは専門的な知識・経験に基づき、それら別の施設で行われる支援をバックアップする「後方支援」としての位置づけもあります。
放課後等デイサービスは必要に応じて児童クラブなどとも連携を図りながら、適切な事業運営を行い、一般的な子育て支援施策を利用する障害のある子どもに対しても、保育所等訪問支援を積極的に行うなど、地域の障害児童支援を行う専門機関としての役割が期待されています。
放課後等デイサービスには、障害のある児童だけではなく、その保護者に対して社会的に支援する側面もあります。
より具体的には下記の3点が挙げられます。
①子育ての悩みなどに対する相談を行うこと
②家庭内での養育などについてペアレント・トレーニングなどを活用しながら子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援すること
③保護者の時間を保障するために、ケアを一時的に代行する支援を行うこと
これらの支援を放課後等デイサービスが積極的に行うことによって、保護者が子どもや障害に向き合うゆとりと自信を回復することも、子どもの発達に好ましい影響を及ぼすものと期待されています。
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放課後等デイサービスでは、障害のある子どもの支援を適切に行うため、次のようなスタッフの配置と役割、事業所の設備がサービスガイドラインとして定められています。
管理者は、放課後等デイサービスの事業所管理を統括する職種です。
事業所の運営やスタッフの管理、外部との連携や問い合わせの対応など、幅広い業務を担当します。
一つの事業所に対して、1名以上の配置が必須となっていますが、児童発達支援管理責任者といった他の職種との兼務も可能です。
児童発達支援管理責任者には、障害のある子どもと保護者のニーズを適切に把握し、放課後等デイサービスで行う支援の基礎となる個別支援計画を作成する役割があります。
個別支援計画に基づいた支援が提供されるように調整し、支援のプロセスを管理・評価する業務を担当します。
児童発達支援管理責任者として働くためには、障害者あるいは障害のある子どもの分野で一定の実務経験を積み、都道府県が実施する研修を修了する必要があります。
指導員は、児童発達支援管理責任者が作成した個別支援計画に基づき、適切な技術を持って子どもの心身の状況に応じた支援をおこないます。
実際に放課後等デイサービスのプログラムを通して子どもを支援するだけでなく、事業所に通う子どもの送迎、事務作業などを行うこともあります。
放課後等デイサービスには、子どもたちの発達を支援するため、設備基準も設けられています。
例えば、実際に支援を行う「指導訓練室」は、広さの基準が都道府県によって異なりますが、東京都では子ども1人あたり4㎡以上と定められています。
これは、ある程度の広さがなければ子どもがリラックスして事業所内で支援を受けることが難しいためです。
他にも保護者と面談を行う「相談室」には、プライバシーの確保ができる設備や備品を揃える必要があります。
子どもの発達を支援するための設備や備品の確保が、放課後等デイサービスを運営する事業所には求められています。
放課後等デイサービスでは、障害のある子どもが将来的に自立した生活を送れるように、さまざまなプログラムを通して支援を行います。
放課後等デイサービスガイドラインによると、支援内容は大きく分けて4つに分類されます。
子どもの発達に応じて必要となる基本的日常生活動作や自立生活を支援するための活動を指します。
子どもが意欲的に関われるような遊びを通して、成功体験の積み増しを促し、自己肯定感を育めるようにします。
将来の自立や地域生活を見据えた活動を行う場合には、子どもが通う学校で行われている教育活動を踏まえ、方針や役割分担などを共有できるように学校との連携を図りながら支援を行う必要もあります。
創作活動では、表現する喜びを体験できるようにします。
日頃からできるだけ自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにするなど、豊かな感性を培うことが求められる活動です。
障害があることを理由に、子どもの社会生活や経験の範囲が制限されてしまわないよう、子どもの社会経験の幅を広げていくことが目的です。
他の社会福祉事業や地域において、放課後等に行われている多様な学習・体験・交流活動などとの連携、ボランティアの受け入れなどにより、積極的に地域との交流を図っていくことが必要な活動です。
子どもが望む遊びや自分自身をリラックスさせる練習などの諸活動を、子ども自身が自己選択して取り組む経験を積んでいくための活動です。
放課後等デイサービスでは、多彩な活動プログラムを用意し、ゆったりとした雰囲気の中で支援が行えるように工夫することが求められています。
放課後等デイサービスでは、このような支援を通じて、家庭や学校だけではできない経験を通し、子どもたちの成長をサポートしていきます。
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一括りに「放課後等デイサービス」と言っても、事業所ごとに提供するサービスは異なります。また、同じ事業所内でも、通っている子どもの状況に合わせて提供するサービス内容は変化します。
ここでは、さまざまな事業所で行われている支援プログラムの具体例を紹介します。
ここで紹介する支援内容の具体例はごく一部なので、具体的に通いたい事業所が定まっていたら、実際にどんな支援が行われているのか足を運んで確認してみてください。
身辺自立を目的とし、あいさつの練習や靴の着脱などを行うことを「ソーシャルスキルプログラム」と呼びます。
多くの放課後等デイサービスでは、障害のある子どもとの集団活動を通してコミュニケーションを学ぶプログラムがあります。
その子の障害特性や認知特性に合わせた学習の仕方をサポートします。
例えば、算数が苦手な子どもに対し、なぜ苦手なのか?をアセスメント(分析)し、その子に合った学習方法を教えてくれます。
ただ単純に宿題を一緒にやるだけの放課後等デイサービスもありますので、事業所を事前に体験することをおすすめします。
活動量を増やしたり、基礎体力を向上したり、体の動かし方の習得、心身の健康維持を目的とした活動です。
運動教室とは違い、子どもの苦手を把握し、その子に必要な粗大運動・微細運動など運動プログラムを提供しています。
音楽や創作活動を通じて表現力や想像力を培うことが目的としています。
さまざまな素材を使いながら自分自身で創作する活動をすることで、表現力や想像力を培うだけでなく達成感も感じられるようになります。
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放課後等デイサービスを利用するまでの流れは下記の通りです。
放課後等デイサービスの利用を検討している場合、まず住んでいる市区町村の福祉担当窓口や障害児相談支援事業所などに、サービスを利用したい旨を相談してみましょう。
目的やいつ、どのようにサービスを利用したいか、事前に考えておくと良いでしょう。
専門スタッフが発達検査・発達相談、医学的診察などを行い、一人ひとりに最も合った支援の方法を提案してくれる場合もあります。
相談した先で案内を受け、利用したいと感じる放課後等デイサービスの事業所が見つかったら、直接事業所に空き状況を確認したり、子どもの状況について相談したりします。
空きが確認できたら、事前に見学や体験を申し込みましょう。
放課後等デイサービスで行っている支援の内容は、それぞれの事業所によって大きく異なるため、可能であれば、事前に実際の様子を確認しておくと安心です。
見学・体験に行った際に、事業所では子どもの様子をどう見るか、どのような支援内容が想定されるかといった点を確認しましょう。
保護者が不安を感じる部分があれば、具体的に相談することをおすすめします。
利用したい事業所やサービスが決まったら、受給者証の交付に必要な「障害児支援利用計画案」を作成します。
「障害児支援利用計画案」は、市区町村にある相談支援事業所が聞き取り調査をして作成します。
相談支援事業所が見つからない場合や、依頼していると作成までに時間がかかる場合などは、保護者が主体となってセルフプランを作成することもあります。
「障害児支援利用計画案」は市区町村でフォーマットが決まっており、作成する場合は窓口で用紙をもらうか、ホームページでダウンロードすることがあります。
用紙には、希望するサービスの内容や日数、利用する子どもの暮らしの課題、支援を通してどうなりたいか、といった内容を記入します。
「障害児支援利用計画案」と「障害児通所給付費支給申請書」を併せて、児童福祉センターなど専門の窓口に提出し、申請を行います。
他にも保護者の所得などを証明する書類や、持っている場合は療育手帳の提出が必要になります。
療育手帳を保有していない場合は、児童相談所・市町村保健センター・医療機関などの意見書など、「なぜ放課後等デイサービスの利用が必要なのか」を第三者目線で説明するような資料の提出が必要になる場合もあります
必要書類は自治体によって異なるため、事前によく確認しておきましょう。
提出された書類に基づき、専門部署が調査を実施します。
放課後等デイサービスの利用対象となるか、その条件を満たしているか、必要なサービス量(日数)は適切かなどを踏まえ、受給者証の交付に関する審査を行います。
審査期間はそれぞれの市区町村によって異なります。1〜2ヶ月ほどかかる場合もあります。
この調査・審査に時間がかかることもふまえて、早めに市区町村の窓口に放課後等デイサービスの利用について相談することがおすすめです。
無事に審査が終わり、放課後等デイサービスの利用が適切と判断されると、受給者証が交付されます。
福祉サービスを利用するための証明書を広く「受給者証」と呼びますが、ここでは放課後等デイサービスを利用するための「通所受給者証」を指します。
受給者証には、障害児通所支援の種類、通所給付決定の有効期間、支給量などが記載されています。
なお、放課後等デイサービスの受給者証は市区町村の窓口から発行されるもののため、引っ越しなどにより管轄の市区町村が変わる場合には受給者証の再取得が必要になります。
受給者証申請時に作成した「障害児支援利用計画案」に基づき、より具体的な支援や施設の利用内容などもまとめた「障害児支援利用計画」を作成します。
受給者証と「障害児支援利用計画」をもって、サービス利用に関する契約を事業所と行います。
契約手続きが終わると、実際に事業所でのサービス利用が開始できます。
放課後等デイサービスは、障害児給付費の対象となる福祉サービスであるため、利用料金は自治体によって定められています。
放課後等デイサービスの利用には受給者証が必要ですが、受給者証を取得することで、利用料の9割が給付され、1割の自己負担でサービス利用が可能になります。
保護者の世帯年収などにより負担上限月額は異なり、自治体によっては独自の助成金がある場合もあります。
また、その他の費用として、施設によってはおやつ代や制作物の材料代、外出交通費などの実費がかかる場合があるため、事業所と契約する前の体験・見学のタイミングなどを活用して、事前に確認しておくと良いでしょう。
放課後等デイサービスを利用できる日数は一律ではなく、受給者証に記載される内容の通り、一人ひとり受けられるサービスの種類や回数が決められています。
1ヶ月に使える日数の上限は受給者証の交付時に決定するため、定められた範囲内で、子どもに必要なサービスを組み合わせた支援計画が立てられます。
基本的に、決められた利用回数内であれば、複数の施設を掛け持ちして利用することも可能です。
例えば月曜日は運動プログラムに力を入れている施設A、水曜日と金曜日はソーシャルスキルトレーニングに力を入れている施設B、土曜日は午前中から夕方までのプログラムを組んでいる施設Cといった組み合わせで利用することも可能です。
子どもの特性や伸ばしたいスキルをベースに、受給者証申請の際に市区町村の窓口や放課後等デイサービス事業所の支援員と相談してみてください。
放課後等デイサービスは6歳〜18歳までの就学児童を対象とし、発達のサポートを行います。
単なる発達障害児向けの学童保育という役割ではなく、学習と生活のサポート、居場所の提供、保護者のサポートなどさまざまな役割があります。
個々の事業所の特徴や強みは多岐にわたるため、子どもの特性を捉えた上でどの事業所を利用するのが最適なのか、慎重な判断が求められます。
放課後等デイサービスの利用を開始する前には、手続きの流れやどんな事業所が地域にあるのかなど、必要な情報量が多いため、保健センター、子育て支援センター、発達障害者支援センター、市区町村の窓口など、専門機関に相談しながら進め、一歩ずつ課題を解決していく必要があります。
少しでも発達に気になる点があったり、療育に興味があったりする場合は、ためらわずに専門窓口に相談してみましょう。