2023.03.29
子どもの心や体の発達度合いを調べることを「発達検査」といいます。
毎日の生活のなかで発達について気になることが出てきたり、幼稚園や保育園などで発達の遅れを指摘されるなどして、子どもの発達に関して不安を感じている保護者も少なくないでしょう。なかには、病院での検査を検討している方もいるかもしれません。その場合に受ける検査が発達検査です。
今回の記事では、発達検査の種類や内容、検査の結果から分かることなどを詳しく解説します。
監修
井上 雅彦
鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。
発達検査とは、子どもの発達全般、例えば認知や言語・社会性、運動などについて客観的に測定する検査のことです。検査にはさまざまな種類があり、受ける施設や病院ごとにその方法は異なります。
また、発達検査は発達障害の確定診断を目的としたものではありません。発達障害の診断は、生育歴や行動観察、発達検査・知能検査などの結果に鑑みて総合的に診断されるものです。
そのため、発達検査の結果のみをもって発達障害であると診断されることはありません。
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発達検査は、運動発達や社会性・コミュニケーションなどを含めた全般的な発達について、実年齢と発達年齢にどれくらい差があるのかを調べるものです。知能検査は、知能指数がどれくらいあるのかを計測するものです。
発達検査を受けるときに、知能検査を同時に受けることを勧められる場合もあります。
理由として、子どもの発達を多角的に捉えることや、医師が発達障害の確定診断を行うことなどがあげられます。また、子どもの知的発達や特性に合った支援方法を探るために、知能検査を勧めることもあります。
発達検査にはさまざまな種類があり、その検査ごとに検査結果の表現方法や評価が異なります。
一般的に発達検査では聞き取りなどを行うほか、積み木や筆記用具など、身近なものを使用しておこなわれることもあります。具体的な検査内容は、受ける検査の種類によって異なるので、事前に施設や病院、または医師に確認してください。
現在日本で行われることが多い発達検査の詳細を解説します。その内容はさまざまで、今回紹介する検査はその中のごく一部です。ここで紹介されている方法以外で検査をおこなっている施設や病院も少なくありません。ここで紹介する検査と実際に受ける検査が異なることもあるので、そのことは頭に入れておくと良いでしょう。
その年齢において、一般的と考えられている行動や反応と、対象の子どもの反応がどれくらい合致するかどうかを評価する検査を新版K式発達検査といいます。
「姿勢・運動(P-M)」、「認知・適応(C-A)」、「言語・社会(L-S)」の3領域の評価により、対象の子どもの発達指数と発達年齢を知ることが可能です。また、子どもが3歳以上だと「認知・適応」、「言語・社会」に重点が置かれることが多いようです。
津守式乳幼児精神発達検査は、1つ前で解説した新版K式発達検査と同様に、実際の年齢と発達の度合いにどれくらい差があるかを調べる発達検査です。
保護者との面接があることが新版K式発達検査と異なる点です。子どもだけを検査する方法に比べて、子どものその日の気分や状態などに左右されず、保護者から見た普段の様子や生活の状況を把握し総合的な判断をすることができます。
また、検査した項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」という図を作成するのも津守式乳幼児精神発達検査の特徴の一つで、客観的な子どもの状態把握につながります。
子どもの発達や傾向を分析して、子どもの発達における個性を捉えるのが、遠城寺式乳幼児分析的発達検査です。
運動、社会性、言語の各々の領域の発達を評価し、その凸凹をグラフで示す検査になります。遠城寺式乳幼児分析的発達検査では、脳性麻痺やASD(自閉スペクトラム症)、精神遅滞、言語地帯などを鑑別できます。検査時間が短いことも特徴の1つ。また発達の経過もわかりやすく表示されているため、子どもの発達の特徴を把握しやすい検査になります。
さまざまな種類がある発達検査ですが、検査の結果からはどのようなことが分かるのでしょうか。項目ごとに解説していきます。
発達検査では、検査項目と月年齢を軸とした「発達プロフィール」が作成されます。
発達プロフィールは、発達の全般的な遅れや発達領域別の特徴などを折れ線グラフで表現したものです。発達の遅れがある子どもには、一定のパターンが見られる傾向があるため、発達プロフィールは診断の参考としても使用されます。
発達年齢(Developmental Age:DA)は、その子どもの発達の状態が、標準的な子どものどの年齢段階に相当するのかを測定した結果です。発達年齢の結果を元に、発達指数などの評価を求めます。
発達年齢と実際の年齢である生活年齢(Chronological Age:CA)との比率を求めたものが発達指数(Developmental Quotient:DQ)です。
発達年齢と実際の年齢が同じ場合、発達指数は100という結果になります。しかし、発達指数はあくまでものさしの一つでしかありません。発達検査で明らかになった発達指数に加えて、普段の生活の様子などさまざまなことを総合して発達状況を把握していきます。
発達検査の後に「検査報告書」を受け取ることができます。
検査報告書とは、検査結果の数値、検査結果からいえること、日常生活上配慮が必要なことなどが記載された資料を指します。子どもがどういったサポートを必要としているかなどを理解したり、より良い療育や支援の参考になるでしょう。検査報告書を無料で発行してくれる機関もありますが、有料の場合もあるので各機関への問い合わせが必要になります。
発達検査はどこで検査を受けられるのか、また検査にかかる費用についても解説します。
子どもの発達検査は専門知識を持つ精神科医や心理スタッフが在籍する公的病院や民間病院のほか、児童発達支援センターでも受けることができます。
発達検査の内容などは各病院によって異なるので、受けたい検査があったり内容が気になる場合は、その検査を行っているかどうかなどを病院に問い合わせる必要があります。
発達検査にかかる費用は、検査を受ける病院によって内容が異なるため費用も変わってきます。診断書を書いてもらう場合は別途費用が必要となり、報告書に費用がかかる場合もあります。かかる費用は直接問い合わせるようにしましょう。
子どもの発達で気になることがあったり、発達検査を受けるかどうかを迷っていたりする場合、まずは地域にある相談窓口に連絡することをおすすめします。
事前に予約が必要な窓口があるので、注意が必要です。子どもの発達検査についての一般的な相談窓口は以下の通りです。
【子どもの発達検査についての相談窓口】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童相談所
・発達障害支援センター
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発達検査は、発達障害の診断を行うためのものではなく、発達障害の確定診断の判断要素の一つとなるものです。
発達検査を受けた後、専門機関で確定診断を受けるかどうかは、それぞれが自由に選択することができます。確定診断を受けない場合でも、発達検査の結果から、その特性を理解し、より良い生活への手助けや療育支援などに役立てることもできるでしょう。その子ども一人ひとりに合ったサポートを、専門家と一緒に探ることができます。
発達面で気になることがあるという方は、専門機関に相談のうえ、まずは発達検査を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
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