2021.01.27
発達障害のある子の場合、何がわからないのかがわからない、わかったとしてもどうにもできない…と感じることだったりします。そんなとき、誰にどのように頼れば安心できるのでしょうか。
今回は、子どもの発達支援のプロ・花渕あゆみさん(写真右)と、家族のライフプランニングのプロ・望月春奈さん(写真左)の対談企画です。
前編では、公立中学への進学が難しくなったご家庭のケースに寄り添いながら、「それぞれの立場からできること」を話してもらいます。
編集部(以下、ーーー):株式会社LITALICOは障害のある方や家族に向けてさまざまなサービスをしています。その中でもLITALICOジュニアと、LITALICOライフがどのようなことをしているのか教えてください。
花渕あゆみさん(以下、花渕):LITALICOジュニアは子どもの発達支援をしています。お子さまの可能性を拡げるソーシャルスキルと学習の教室です。発達に特性のあるお子さまに向けて、一人ひとりに合った学びやスキルを学ぶことができます。発達支援を塾のように通うイメージですね。
ーーー:LITALICOジュニアに通うことで、「親とも会話ができなかった子が自分の気持ちを伝えられるようになった」、「授業中ずっと座っていられない子が集中して取り組めるようになった」という声も聞きます。
望月春奈さん(以下、望月):LITALICOライフは進路や人生かかわる情報提供の無料勉強会と、家族それぞれのライフプラン相談をしています。通級や支援級に在籍した卒業後の進路についてや、グレーゾーン、不登校、おやなきあとの相続、私立中学受験、教育費など幅広い相談に個別でお応えしています。
ーーー:LITALICOライフに相談したことで「悩んでいた子どもの進路先が明確になった」「自分たちの老後に安心できた」という声も頂きますね。
※ライフプランニングとは…進路や教育費など、人生にかかわる選択とお金について、計画をたてることです。
ーーー:今回は、2つのケースについて、それぞれサービス内でできることや、どう考えると良いか教えてください。では一つ目のケースです。
(東京都 ねずこ)
現在小学4年生の男の子です。クラスでは浮いていて、お友だち関係は正直よくありません。本人も辛いようです。そのため、中学は公立は難しいと思います。
しかし中学受験をしようにも、算数がとても苦手です。「5」や「8」は文字としてはわかっても、「5+8」と言われても意味がわからないようです。漢字や理科の暗記問題も、入る容量が決まっているのか、新しく覚えれば何かを忘れてしまいます。
このような状態でも中学受験は可能でしょうか?中学の探し方もわかりません。また、通える塾はありますか?スクールカウンセラーの先生に相談をしましたが、高校の情報はたくさんあるのに中学の情報はありません。「公立中学で3年間耐えれば、高校の選択肢はたくさんあります」と言われてしまいました。
ーーー:「特に算数が苦手で、自分に合った勉強方法がわからない。クラスメイトともうまくいかない。」という内容です。花渕さんいかがでしょうか。
花渕:ジュニアに通われるご家庭で非常に多いケースです。
ジュニアで大切にしているのは、まず、本人と親、それぞれの話を聞くことです。特にお子さまには、何に困っていてどうしたいのか、しっかり聞きます。
ーーー:ねずこさんのコメントから察するに、算数を中心に漢字や理科の勉強方法を教えてほしいのかなと思いますが、お子さまの要望を優先するのでしょうか。
花渕:もちろん保護者の方の声も聞きますが、子ども自身にやる気がないと努力は続きません。でも、じっくり聞いているとお子さまも保護者さまも同じ想いになることが多いんですよ。
ーーー:どのようにお子さまとお話するのでしょうか?突然知らない人に悩みを話すというのは、なかなかできない気がします。
花渕:お子さまの興味のあることに寄り添うことが多いですね。例えば、ねずこさんのご家庭のように算数が苦手という場合、お子さま自身が「算数ができるようになりたい」と思っていることは、あまりないんです。
話を聞いていくと、「グループLINEで自分だけ既読スルーされる」とか「放課後の集まりに自分だけ誘われない」といった、友だち関係の悩みが多いです。
保護者さまの想いもじっくり聞いていくと、「友だちと仲良くして、楽しく学校生活を送ってほしい」という想いに行きつくことが多く、その重なった想いから目標を決めていきます。
望月:確かに、仮に中学受験がうまくいったとしても、「友だちと仲良くするスキル」が無ければ同じことを繰り返してしまうかもしれないですね。
花渕:「LITALICOジュニアは、○○くんが友だちと遊べるように手伝っていく塾だよ」と伝えていくと、お子さまにやる気が芽生えてきます。本人のやる気はとても大事です。
ーーー:その場合、LITALICOジュニアに通う目的は友だちと仲良くするスキルの習得が中心で、もう算数は注力しないのでしょうか?
花渕:お子さまと家庭にとって優先順位の高いものから進めます。ケースによりますが、算数って大事なんですよね。学校のテストは点数が低くても、そこまで人生に大きな影響はないかもしれないせんが、時間やお金を理解するためにも算数は使います。お友だちとの待ち合わせなど、遊ぶときにも影響があると思います。
「本当の課題」にアプローチすることで、目の前の課題だけではなかく、一生もののスキルを習得し、人生の可能性が拡がります。ここまでしているのはLITALICOジュニアならではだと思います。
ーーー:LITALICOライフでは、こちらのねずこさんのご家庭のようなケースは多いのでしょうか。
望月:とても多いです。私立中学受験を検討するなら、「どういう観点で選んだらよいのか?」というご相談であったり、公立中学にしても「支援級にいったら内申がつかないと聞いたが高校進学はできるのか」など、いろいろな相談をいただきます。
ーーー:どの進路を目指すべきか、答えを出すのは難しそうです。
望月:正直なところ、正解は誰にもわからないですよね。だからこそ、「どこの学校に行くか」ではなく、「どういう環境がお子さまに合っているのか」を考えることが大切です。「お子さまの得意なことを伸ばすには?」「どういう環境だと過ごしにくいのか?」など。
すると中には公立しか考えていなかった家庭が、私立のほうが子どもがのびのびできそうと思うようになったり、お子さまの塾や習い事に時間もお金もかかり、自分のやりたいことを我慢していたお母さんが資格の勉強を始めたり。「わたしってこんなことを思っていたんですね!」とよく言われます。
花渕:目の前のことでいっぱいいっぱいだと、余裕がなくなってしまいますよね。お子さまにも保護者さまにも余裕って大事だと思います。
望月:保護者の方たちは本当にお忙しいですよね。そんな中で将来も見据えながら情報収集して決断をするって難しいことだと思います。自分の価値観を知ったり、情報を整理して次の行動を決める、というところはプロを頼って良いと思います。保護者の方が「親にしかできないこと」に時間を使えるように。
ーーー:とはいえ、私立受験や習いごとにはお金がかかりますよね。やってみたいと思っても、金銭の面から現実的かどうか不安になってしまいそうです。
望月:希望された方は、人生のお金の動きも一緒に見ることができます。例えば、自分や子どもが何歳のときにどのくらいお金がかかるのか、などです。家庭によってお金のかかりやすい時期とそうじゃない時期があります。
それによって頑張りどきがわかったり、子どもにどこまでしていいのか、など視野が広がります。もし「今のままだと理想的な生活が送れないかも」というご家庭がいても、「じゃあ頑張ってください」と終わらせることはしません。ご家庭の想いや気持ちを前提に、一緒に良い方法を考えます。だいたいなんとかなりますよ。
ーーー:「だいたいなんとかなる」!力強い言葉ですね。
望月:家庭の望む進路や将来の暮らしを見据えたとき、お金の問題は切り離せません。私たちはライフプランニングのプロなので、健康診断を受けるようなつもりで、安心して相談していただけたらと思います。
望月:子育てやお金のことって、つい「親だけで頑張らなきゃ」って思いがちですよね。
ーーー:プロや専門家、と聞くと、「悪いところを指摘されてしまうんじゃ?」と怖い気持ちも少しあります。
花渕:「一緒に解決したい」「一人で頑張らなくていい」って伝えたいですね。
望月:ジュニアの発達支援もライフのライフプランニングも、ご家庭や子どもに合わせたオーダーメイドですもんね。もちろん、最終的に決めるのはご自身ですが、どのように考えたらよいか、どんな選択肢があるのか、ご家庭の価値観に寄り添ってお伝えしていきます。
花渕:少しでも気になることがあれば早めに相談してほしいです。うまくいっていなかった親子関係が劇的に変わることもよくあります。
望月:ライフプランニングも、家族の話し合いの場になることが多いです。。どちらも家族の前向きなサイクルをお手伝いする仕事ですね。
次回は、学習面・生活面でトラブルがあり、大学受験や自立後の生活に不安のあるご家庭のケースとともに、親子関係・家族関係が変わるきっかけについてお届けします。
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対談に登場したライフコンサルタント
望月春奈
AFP(日本FP協会認定)資格保有。社会保障制度やファイナンスに関する確かな知識に基づくライフプランニングを提案。大手保険代理店の店長として、財務シミュレーションや保険の見直しに関するアドバイスを500家庭以上に実施。