2020.06.02
こんにちは。安心を届けるメルマガ編集部です。
今回は、LITALICOライフでコンサルタントとして、発達障害のあるお子さまの中学受験について数多くの相談を承ってきた高橋孝輔さんに、お話を伺いました。
お話を伺ったコンサルタント
高橋 孝輔(たかはし こうすけ)
学生時代にASD(自閉スペクトラム症)児童のボランティア合宿や療育センターで指導補助を経験。神奈川県内の中学受験塾にて5年間勤務し、私立中学100校以上の学校情報に精通。副業で3つの仕事に従事しており、自ら自分らしい生き方を体現。
編集部(以下、ーーー):発達障害のあるお子さまの保護者さまの中には、私立中学への進学を希望される方がたくさんいらっしゃいますね。
▶高橋孝輔さん(以下、高橋さん):確かに、ご相談の中で「このまま公立の中学に進学して大丈夫でしょうか。私立も検討したほうがいいのでは?」というご意見をよく伺います。支援級ほどの特別なサポートは必要ないけど、公立中学の一斉授業の中で「ついていけるかな?うまくやっていけるのかな?」という、漠然とした不安をお持ちなんでしょうね。
ーーー:実際、私立中学と公立中学ではどういった点が違うのでしょうか。
▶高橋さん:「合理的配慮」と「学習環境」2つの視点がありますね。「合理的配慮」は、例えば、読み書きに困難がある子には拡大教科書や、タブレットを活用したり、指示理解が苦手な子には1つずつ指示を出したりと、保護者さまやお子さまから何らかの助けを求められた場合には、そのお子さまの特性や困りごとに配慮するよう便宜をはかる仕組みです。日本の公立中学ではこの配慮が義務化されていますが、一方、意外に思われるかもしれませんが、私立中学ではこの「合理的配慮」は努力項目であることがほとんどです。先生の中に、発達障害に専門的な知識をお持ちの方がいない学校もあります。
では「学習環境」はどうでしょう。ご存じの通り、公立の中学では、一律一斉の指導が行われますので、その学習環境が合わない子、馴染めない子がいることは確かです。そうしたお子さまを、先生主導できめ細やかに見定め、普段の授業の中で率先して救い上げることは、なかなかできないのが公立中学の現実ですね。
私立中学に関しても、特別支援や合理的配慮について専門的な知識を持つ先生がいるかどうかは学校によって異なります。基本的には「一人だけ特別扱いはしない」というスタンスで、特性に配慮するというよりも、その子のいいところや個性を伸ばすという観点がしっかりしていることがほとんどです。
ですが、私立中学には公立中学にない特色があります。例えば、ICT教育を取り入れていて、授業中、誰もがタブレットを活用している学校では、そもそも板書の文化がないかもしれません。その場合、書き取りが苦手なお子さまにとっては、特別なサポートがいらない環境となります。
また、グループワークが多いカリキュラムを採用している学校の場合、授業中にずっと座っているのが苦手なお子さまにとっては、居心地のいい環境である可能性もあります。
ーーー:一般的な私立中学では発達障害のある子どもに特別な配慮をしてくれるとは限らないんですね。発達障害のある子どもを指導している私立もあるんですか?
▶高橋さん:発達障害のお子さまを専門的に指導している学校がありますね。例えば、一人ひとりに合わせて個別支援計画を作成して指導する学校であったり、ASDのお子さまがたくさん通っている中学校があります。また発達障害の有無に関係なく、誰もが望めば自分に合った配慮を受けながら学ぶことを目指した「インクルーシブ教育」を教育理念としている学校もありますね。
今の時代、発達障害という言葉がずいぶん浸透してきました。中学校での教育も10年前と比較すればだいぶ違います。今後は、今は努力項目である「合理的配慮」が、私立でも義務化される時がくるかもしれません。そうなれば、発達障害のあるお子さまにとって中学の選択肢が、今よりもっと広がることでしょうね。
ーーー:うちの子、受験できるんだろうか?とお考えの保護者さまもいらっしゃると思うのですが。
▶高橋さん:公立は不安、私立も合理的配慮がないのであれば、受験は無理かな、、、とおっしゃる方、たくさんいますね。それでは、視点を変えて、公立と私立、その中間くらいの学校ならどうだろう、と私は思います。いま私が注目しているのは、フリースクール。その中でも、従来のフリースクールから一歩進んだ、革新的な新しい学びの学校があります。
この学校はカリキュラムがとても豊富で、通学制、在宅制など通い方も自由。フリースクールに通って、一人ひとりの生徒が、自分のペースで学び、好きなことや、得意なことを伸ばしていく、そんな選択肢があってもいいのではないかと思います。
ーーー:私立と公立の違い、よく分かりました。それでは、わが子にあった進路を選ぶために、まず何から始めればいいでしょうか。
▶高橋さん:目標設定が大切、とはよく言われることですが、私はまず最初に、お子さまと親御さまが「自分(お子さま)をよく知る」ことから始めてほしいと思います。お子さまの得意、不得意を正確に把握し、その上で、将来の姿(目標設定)を考えるといいでしょう。車の運転をするように、まずはスタート地点を把握し、目的地を定め、希望の地へ到着するまでの道筋を探す。この「道筋」が進路選択だとお考えください。
就職して自立することが目標なのであれば、私立中学に行くことだけが選択肢ではありませんよね。将来の目標を叶えるために、私立中学への進学がいいのか、資格が取れる学校への進学がいいのか、お子さまの特性に環境を合わせることを大切にお考えになるといいと思います。
もちろん、私立中学へ進学すると、だいたい中高一貫で大学まで進学する方が多いですから、そういう環境がお子さまの特性にあっているのであれば、私立という道筋を選ぶ、というわけですね。
ーーー:中学校選びは、どんな準備から始めたらいいですか?
▶高橋さん:さまざまな学校の文化祭や体育祭などの見学に行ってみてください、と一般的には言われていますね。すでに志望校がある場合は、学校のイベント見学から始めてもいいと思いますが、志望校を決めていない段階でしたら、公立、私立という二択で考えるのではなく、まずは「お子さまの特性にあった環境選び」という視点で中学校への進学を考えてください。その上で、お子さまにあった環境が私立中学なのであれば、志望校を絞り、文化祭見学などのお子さま本人が楽しめる体験をして、入学後の具体的なイメージをつかみましょう。資金面や、誰に相談するか、といった大人ができる準備も、進路の道筋ができたら始めてください。このように、筋道を立てた上で、お子さまができる準備と大人がする準備をすすめていくことを、おすすめします。
ーーー:面談では多くの親御さまのお悩みごとに向き合っていらっしゃる高橋さんですが、面談ではどのようなことを大切にされていますか?
▶高橋さん:面談されるご家族さまは、お子さまも含め、本当に悩んでいらっしゃいます。お子さまの診断を受けて、この先どうすればいいんだろう、誰に相談すればいいんだろう、といった生きていく上での不安を抱えている方がたくさんいらっしゃいます。私は、発達障害に関するご心配だけでなく、進路やその先の将来について、ご家族さまと同じ温度感で相談にのれる、頼れる存在でいたいと思っています。そのために、幅広い知識を蓄え、最新の情報を仕入れ、さまざまな選択肢をご提供できるよう頑張っていきたいですね。ご家族さまにとって「人生のホームドクター」のような存在になれたら、とても嬉しいです。
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