2023.07.10
妊娠・出産に際しては予期せぬさまざまな出来事が起こるもの。LITALICOライフのコンサルタントの町田さんもパートナーが切迫早産となり、約1か月入院。そのときの経験や、備えておいてよかったことなどを聞きました。
回答者
町田 健一
産前・産後、教育分野に精通するファイナンシャルプランナーとして、年間約200世帯のご家族のライフプランニングの策定に従事。約15年間にわたる不動産・保険業界での経験も強み。金融教育に携わり、中学・高校での授業登壇多数。助産師の妻とともに、3歳と0歳の娘の父親として日々育児に奮闘中。
――第2子出産の時にパートナーの方が約1か月ほど入院されたとおっしゃってましたよね。
はい。妻が切迫早産と診断され、1か月以上入院しました。その間、当時2歳の娘とふたりで過ごしたんですよね。日頃から娘とコミュニケーションをとっていたので関係性はよかったのですが、それでもやはり大変でした。
――例えばどんなことが大変でしたか?
やはり今まで妻と協力してやっていた家事、育児を自分一人で担うので大変ですよね。
朝子どもを起こして、保育園の準備、ごはんの用意、そして保育園への送迎。仕事が終わったらお迎えにいって、お風呂に入れて、ご飯をつくって、絵本を読んで寝かしつけて……。しかも、子どもは「なぜか大好きなお母さんがそばにいない」という大きな不安とストレスを抱えた状態で毎日を過ごすわけです。
――たしかにいつもと違う環境ですから、お子さまも不安を感じますよね。
そうですね。普段パートナーがほとんどの家事を担っている方の場合は、とても大変だと思います。私の場合一通りの家事は協力しながらやっていましたが、料理は妻がやってくれることが多かったので結構苦労しました……(笑)。
また、私の場合仕事の休みが平日で土日は仕事というスタイルだったので、土日の預け先を探すのも課題でした。今回に関しては、ベビーシッターを頼みました。
――ベビーシッターはパートナーの方が切迫早産になる前から使っていたんですか?
上の子どもの時に1回だけ利用したことはありました。なので、イメージはありましたし、リサーチはしてあったので、それはよかったですね。
自治体で安価に預かってくれるサービスもありますが、預ける時間に制限があったり、子どもが水を飲まない、少し熱が高いなど普段と少しでも様子が違うと「迎えに来てください」と言われてしまったり。そういう意味でベビーシッターの方は料金は割高ですが、融通がききやすいな、と。
初めてのシッターさんは、預ける前に事前の打合せなどをすることも多いので、時間や精神的に余裕があるときに何回か頼んで慣れているシッターの方がいるとよりスムーズなのかなと思います。
――町田さんは以前、保険代理店に勤めているときから、妊娠や出産にかかわるリスクに関して相談を受けることも多かったと思います。相談を受けたときにはどんなアドバイスをされていましたか?
妊娠・出産にかかわるリスクは心配なところですよね。私はよく①生活面のリスク②精神面のリスク③経済面のリスクに分けて備えることをおすすめしていました。
まず生活面のリスクというのは、先ほどお伝えしたような家事や育児の部分ですね。妊娠・出産前後には、妊娠高血圧、切迫早産、妊娠糖尿病など様々な体調面のリスクがあります。そうではなくても、ホルモンバランスの変化で大変なことが多い時期ですから、家事や育児の分担が以前と変わる可能性が高いんですよね。
今回妻の入院で、家事や育児をお互い一通りできるようにしておくというリスクヘッジはとても重要だと感じました。
――なるほど。精神面のリスクというのはどういったものでしょうか?
実は、母親が産後鬱になる割合は10人に1人とも言われています。産前産後というのは精神的に大きなリスクがある時期なんですね。
そんななかで、パートナーは産前と変わらず仕事からなかなか帰ってこない、夜は飲み会に出かけ、土日はゴルフ三昧といった過ごし方だと、結果がどうなるかは……予想がつきますよね。
また、母親だけでなくその配偶者に関しても、同じく10名に1人はメンタルヘルス不調の判定を受けているというデータもあります。
こうした状態を防ぐために産前のまだ余裕がある時期にどちらか一人に負担がかからないように分担を考えたり、仕事方法を見直したりすること。そして、夫婦ふたりで抱え込まなくていいように地域の社会資源を探しておくといった備えが必要だと思います。
ーー最後の経済面のリスクというのはどういったものでしょうか?
妊娠・出産の前後は、普段とは違う場面でお金がかかることがあるので、それに備えておくことですね。
例えば、今回妻の場合は切迫早産で5週間ほど入院しましたが、治療費に関しては高額療養費制度(※)の対象となるので一定額を超えると給付があります。ただ、個室や少人数の部屋で入院する際のいわゆる「差額ベット代」や食費などは完全に自己負担なんですよね。
(※)医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合、医療費の家計負担が重くならないよう超えた額を支給する制度。
実は今回切迫早産の診断を受けた妻が病院から私に電話をかけてきて、こう言ったんです。
「病院から『無料の大部屋と、1日18,000円かかる個室にするか選んでほしい』と言われたの。大部屋は電話もテレビ電話もNGで、個室はいつでもOKなんだって」
切迫早産は絶対安静なのでベットから基本的に動くことができません。家に残っている当時2歳の娘が母親と1か月もの間ビデオ電話も通話もしないで過ごすというのは難しいように感じました。
そうなったらもう個室という選択肢しかないな、と。これに加えて、私が土日に仕事に行く間のベビーシッター代が1日1万~2万ほど。こういったお金が一気にかかってくるわけですよね。
――ということは、差額ベット代だけ考えたとしても、18,000円×5週間なので約60万円ほどかかったのでしょうか?
そうなりますね。ただ妻の場合はこういったリスクに備えてあらかじめ医療保険に入っていたので、かかるお金を上回る給付がありました。そのためベビーシッター代を含んでもマイナスにはならなかったんです。それがなければ個室という選択は難しかったかもしれません。
――事前にそういった経済的なリスクに備えておくことが大切なんですね。
そうですね。事前に自分が入っている医療保険の内容等を確認したり、必要があれば新たに保険等に加入しておくことも検討してもいいかもしれません。
また、産休や育休に入ると以前よりも収入は減ります。それでも家計が大丈夫そうかを前もって計算しておくことも重要です。
忘れられがちなのが、育休手当などは原則2か月に1回の支給であること。また、申請してから振り込まれるまでに3~5か月ほどかかることも珍しくありません。
私の場合11月から育休入りましたが、最初に手当が入ってきたのは1月末でした。この間、家計が成り立つのかどうかを事前に検討しておくことも経済的リスクの備えの一つだと思います。
LITALICOライフでは『夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー』を開催中です。
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