2023.05.22
第2子が生まれ、昨年1年間の男性育休を取得したコンサルタントの室田さん。まだ男性の育休取得は珍しいなか、室田さんが長期取得を決断できた理由は?仕事の調整方法や、キャリアへの影響も聞きました。
室田 裕也(むろた・ゆうや)
――LITALICOライフの個別相談でも「男性育休を検討したいけど、不安…」という声をよく伺います。
男性の育休取得率は、13.97%とまだまだ低いのが現状です。さらに、1年以上の長期取得となると全体のわずか1%程度。周囲の人に取得経験がない状態だと、不安になりますよね。
――そんななか、室田さんは第1子、第2子ともに育休をとったんですよね。
そうですね。前職で第1子の時に5か月間、現職で第2子の時に1年1か月と、2回育休をとりました。
実は、第1子の妊娠が分かる前からずっと育休をとりたいと思っていたんですよね。
――それはどういったきっかけで?
前職では保険代理店の店長をしていたのですが、ある時、管下スタッフの育休取得に関する社内研修を受講することになったんです。その研修で、男性も育休をとれることをはじめて知ったんですよね。
妻や子どもと一緒に過ごす時間をしっかりとりながら、育児休業給付金(以下、育休手当)として給与をもらうこともできる。そう聞いて、直感的に「とってみたい!」と思ったんです。
当時、前職で男性育休を取得した社員はまだいませんでしたが、妻に相談したら賛成してくれて。実際に妊娠が分かってから、二人で相談してすぐに取得の準備を始めました。
――責任がある立場だと休みづらいと感じる人も多そうです。仕事を休むことに不安はありましたか?
実は不安はあまりなくて……(笑)。というのも自分が育休に入るのであれば、同僚や部下に同じように仕事をしてもらえるように、事前に仕組みを整えておけばよいと思ったんです。
実際、妻の妊娠が分かったあとすぐに、自分の業務や持っている権限を全て書き出しました。そして「①誰に②いつ③どのように仕事をお願いし、権限を委譲していくのか」という計画をたてたんです。
引継ぎをされる人の負担が少なくなるような方法も考えたうえで、その計画表をもって上司に育休取得のプレゼンをしにいきました。日頃から上司や同僚、部下と密にコミュニケーションをとっていたことも、話を切り出しやすかった要因かもしれません。
※室田さんが講師を務める育休制度や取得方法に関する勉強会はこちら
――すごい行動力ですね!すると、仕事について不安なことはなかったのでしょうか?
いえ、「同じポジションや店舗に戻れるのかな?」という不安はありましたね。ポジションや配属が変わると、給与や待遇も変わってしまいますし。
実際、育休前の店舗には新しい方が配属されたので、復帰後はこれまでとは異なる職種を提案されました。
――なるほど。そうすると「育休によってキャリアが中断されてしまった」ということなのでしょうか……?
いえ、実は僕は全くそう考えていなくて。というのも、新しい職種も学ぶことが多かったですし、なにより育休中に「キャリア」への捉え方が変わったからです。
――……というと?
育休で日常業務からはなれたことをきっかけに、改めて自分のキャリアについてじっくり考えてみたんです。「自分は本当は何をやりたいのか」「本来の能力や強みはどこにあるのか」と、じっくり自分と向き合って考えることができました。
その結果、育休中は自分の強みをさらに活かすための資格の勉強をしたり、もともと夢だった起業について情報収集を行ったりすることに決めました。夫婦どちらか一方の育休取得の場合、育児と家事で余裕が持ちづらいと思いますが、夫婦で同時期に育休をとったことで比較的心の余裕があったのも後押しになりましたね。そのかいあって、資格取得でき、今は副業として不動産関連の会社も経営しています。
――なるほど。育休中に自分と向き合うことができたことで、新たなキャリアを切りひらくことができたんですね。
そうですね。育休をとって一番よかったのは「今の仕事にとらわれず、キャリアを長期目線で考えられたこと」なのかな、と。
たしかに同じポジションには戻れないかもしれないし、給与や待遇も下がるかもしれない。でも、収入を下げたくないなら、自分の強みを生かして異動を願い出たり、転職してもいいかもしれません。副業で本業とは別に収入をつくる道を模索する方法もありますよね。仕事から離れたことで、今の仕事の延長線上だけでキャリアを考える必要はないと思えたんです。
――なるほど。今の職種やポジション以外の様々な選択肢にも目を向けられるようになったのですね。
ええ。やはりそういった精神的な余裕をもてたのは夫婦で、かつ長期間育休をとれたからだとも感じます。育休をどう取って、どう過ごすのかは個人の自由であることは前提としつつ、より選択肢が広がるように夫婦・長期間育休をとりやすい制度が充実し、風土が醸成されていってほしいなと思います。
――そのほか育休をとってよかったことはありますか?
やはり子どもと一緒にいる時間が長いので、信頼関係が築きやすいことですね。イヤイヤ期の子どもを怒っているお父さんを時々見かけるのですが、私と息子はそういうことがあまりないな、と。日頃からコミュニケーションをとれているからなのかなと思います。
妻も「とってくれてよかった」と言ってくれていますね。産後の女性の心と体へのダメージは交通事故レベルとも言われるほど。その時期に私が育休をとってサポートできたことで、妻の心や体の回復も早かったと思います。
余談ですが、第1子の時は出産が9月なのに、私が育休をとったのは11月からで……これは失敗でしたね。
というのも、産後1か月はママがとても疲れている時期なんですね。数時間ごとの授乳、夜泣き対応……など体力的にも大変ですし、初めてのことだらけで精神的にもつらい時期です。あとから考えると、産後1か月の時期に育休をとればよかったな、と思いますね。
――ということは、パパが育休をとる場合は産後1か月がおすすめなのでしょうか?
そうですね、育休を1か月程度とる予定の方であれば、個人的には出産直後の1か月間をおすすめしています。そこから、ご自身のライフプランや仕事との兼ね合いを考えて半年、1年間と期間を伸ばして考えていくのがいいのではないでしょうか。
育休手当は通常時の給与より少ないので、夫婦で育休を取得すると世帯収入は減ります。ですから事前に対策を練ることは重要です。私たち夫婦も育休に入る前に資金計画をたて、家計改善を行いました。そういったファイナンシャルプランニングさえしっかりできれば、育休は家庭にもキャリアにもよい影響を与えてくれるのではないかなと思います。
■後編は、室田家が育休取得中の収入減少に備えて行った家計の見直し方法を大公開!【3月上旬】に公開予定です!
LITALICOライフでは「夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー』を開催中です。