2023.07.24
妊娠中、「赤ちゃんが無事に産まれますように」という気持ちを込めて寺社仏閣で祈祷をしてもらう「安産祈願」。これは日本独自の風習で、古くから受け継がれてきました。ただ、核家族化の影響で、いつ、どこで、何をすれば良いか、わからないことが多い人もいるでしょう。
赤ちゃんが無事に産まれてくることを祈る安産祈願だからこそ、妊娠中はママの体調を第一に考えたいものです。今回は、安産祈願の詳細や行う場合の注意点など、まとめて解説します。
編集・監修
関川 香織
2012年よりフリーランスのライター・編集。前職の主婦の友社では妊婦雑誌、育児雑誌、育児書、育児グッズ通販誌の編集に携わり、これまでに手がけた書籍・雑誌は500冊以上。現在は「LITALICO発達ナビ」などのWEB記事制作や編集にも携わる。公私ともに、約30年にわたって日本の育児・妊娠・出産の情報発信をしている。
安産祈願は、別名「戌(いぬ)の日参り」とも言い、妊娠5ヶ月(16週)を迎えてから、最初に訪れる戌の日にお参りするのが習わしです。犬は多くの子犬を短時間で次々に産むことから、昔から安産の象徴と考えられていました。「戌の日参り」はそんな犬にあやかり、安産を祈願したことが由来と言われています。
日本では日付にも十二支が割り振られており、12日ごとに訪れる「戌の日」に安産祈願をするのがよいとされています。具体的な「戌の日」の日付は、以下の通りです。
︎2023年の戌の日カレンダー
2024年の戌の日カレンダー
安産祈願は、「戌の日」にこだわらなくてもOK!
戌の日参りは、妊娠5ヶ月(16週)目を迎えてから最初の戌の日と言われていますが、それはあくまで目安と考えましょう。現代では、妊娠中も仕事を続ける人の割合が非常に多いので、安産祈願の日程は、妊婦さん自身の体調や仕事の都合などを考慮して調整することが大切です。
安産祈願は特に期限がないので、土日で都合のよい日や、思い入れのある日付などでもかまいません。縁起をかつぎたい場合は、戌の日以外にも、酉(とり)の日や子(ね=ねずみ)の日なども、“子だくさん”ということから安産祈願の吉日とされています。
安産祈願は、一般的に神社またはお寺でしますが、どちらでも問題はなく、場所もどこでもかまいません。アクセスを考慮したり、家族の「守り神様」としているようなところなど、都合のよいところを選びます。祈願に行く前には、下記をチェックしておきましょう。
①安産祈願の受付時間
②安産祈願の予約が必要かどうか
③自宅からの距離や利用する交通機関
④安産祈願にかかる平均の待ち時間
⑤安産祈願に必要な持ち物
⑥神社仏閣の足元状況(たとえば延々と砂利道を歩く、階段が多い、境内がとても寒い/暑い、など)
安産祈願を行う妊娠5ヶ月(妊娠16週)ごろは、一般的につわりなどが落ち着いてくる時期ですが、無理は禁物です。妊婦さんの体調を確認しながら、無理なく安産祈願を行える場所を選びましょう。
安産祈願は、神社やお寺を参拝して、安産祈願のご祈祷を受けるのが一般的です。古くからの習わしでは、ご祈祷後に「岩田帯(いわたおび)」と呼ばれるさらしの腹帯(はらおび)を妊婦さんのおなかに巻きましたが、最近は腹帯を受け取るだけという場合が多いようです。この岩田帯は、妊婦さんの実家が用意するとされていました。
また、安産祈願で有名な神社やお寺では、すでに岩田帯が用意されている場合もあります。腹帯は自分で用意する必要があるのかも、事前に確認しておきましょう。
ご祈祷後の腹帯をかつては日常的におなかを守る目的で巻く習慣がありましたが、これは日本独自の風習で、医学的な根拠はないとされています。ただ、大きくなったおなかを支えるためには、おなかに何か巻いてあると安心で温かいということもあります。骨盤サポータータイプのものや、マタニティガードル、腹巻き型のものなど、さまざまなデザインのものがあるので、つける・つけないも含めて好みで選ぶとよいでしょう。
安産祈願のご祈祷を受ける場合、費用として「初穂料(はつほりょう)」(お寺の場合は「ご祈祷料」または「お布施(ふせ)」とも言う)を納めます。相場は5,000〜10,000円ほどですが、金額は神社・お寺によって決まっている場合もありますし、「お気持ちで」と言われることも多いものです。さらに、岩田帯をいただく場合には、相場より高くなることもあります。初穂料についても、事前に神社やお寺のホームページで確認したり、電話で問い合わせたりしておくと安心です。
安産祈願では、神社やお寺でご祈祷を受けるのが一般的ですが、時間がない、体調が思わしくないなどの場合には、お参りをするだけでも問題ありません。神社やお寺に参拝したのち、お守りや腹帯を購入して帰宅する人も多いようです。
体調が不安定で、当日まで行けるか分からないという場合は、無理にご祈祷の予約をせず、行けるときに祈願・参拝するだけで十分と考えましょう。体調を最優先して、余裕をもって柔軟にスケジュールを立てることは、安産祈願だけでなく、妊婦さんと家族にとってたいせつなことです。
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安産祈願には、特に誰と行かなければいけない、という決まりはありません。昔は親族総出が一般的でしたが、現代では妊婦さんだけ、妊婦さんと夫・パートナー、妊婦さんとその家族などの少人数で行うことが一般的になっています。がほとんどのようです。
安産祈願で人気の神社やお寺によっては、戌の日参りに参拝客が集中するため、ご祈祷を受けられるのは妊婦さんのみ、とされることもあるようです。ただ、参拝は一人でもかまいませんが、付き添いがいるほうが安心です。また、体調がすぐれないときには、身内が代理で安産祈願を行う、というのも選択肢の一つです。
神社やお寺を参拝するときの服装は、ラフすぎるのは好ましくありませんが、体を締め付けない、着ていて楽なものを選びましょう。ご祈祷を受ける場合、神社やお寺によってはルールがある場合もあるので、できれば事前に確認しておくと安心です。
また、寺社仏閣は、冬は寒く夏は暑い場合もあるため、待ち時間が長くなることも想定し、季節や気温に応じて快適に過ごすことができ、体温調整しやすい服装を意識して選びましょう。
靴に関しては、靴は履き慣れた歩きやすいものにします。神社やお寺の中は砂利道が続いていたり、階段や段差が多かったりするため、転ばないように気をつけます。あまりに急坂があったり、境内を延々と歩いたりする神社仏閣は選ばないこともポイントです。
なお、同行者もラフ過ぎない服装が好ましいでしょう。
持ち物は、下記を参考に、前日までに準備しておきましょう。
①初穂料(ご祈祷料・お布施)…神仏にお供えするので、のし袋や白い封筒などに入れます
②賽銭用の現金…キャッシュレス化が進み、現金がなかったということがないように。金額はいくらでもかまいません。
③腹帯(当日持ち込みが必要な場合)
④手さげ袋やエコバッグ…腹帯などの授与品をいただくことがあるため、持ち帰り用の大きめのものが便利
⑤母子健康手帳など、ふだんの外出時の必携品
安産祈願の流れは、神社やお寺によって多少の違いがあるかもしれませんが、ここでは一般的な例を紹介します。
①受付
神社やお寺の受付でご祈祷を申し込み、初穂料(ご祈祷料・お布施)を納めます。その後、待合室や境内などで順番を待ちますが、戌の日や土日、安産祈願で人気のある神社やお寺など、多くの妊婦さんが訪れるためにご祈祷までの待ち時間が長くなることがあります。
②授与品を受け取る
ご祈祷の前後に、安産祈願にまつわるお札やお守り、祈祷済みの腹帯などを受け取ります。授与品の内容は、神社やお寺によって多少違います。
③ご祈祷を受ける
神職や住職が、安産祈願を祈念する祝詞(のりと)または読経(どきょう)をあげます。その際、祈祷を受ける人の名前と住所が読み上げられるため、一緒に神様・仏様に想いを伝えましょう。ご祈祷にかかる時間は、15〜20分程度です。
④拝礼する
ご祈祷の後は、ご神前なら神様、ご仏前なら仏様にお参りをします。神社の場合は、「二礼二拍手一礼(2回頭を下げ、2回柏手を打ち、最後に1回頭を下げる)」の作法でお参りをしましょう。
かつては、安産祈願をした日にお祝い膳をいただく風習がありました。もちろん、忙しい場合や家族が集まることが難しい場合は、お祝い膳を見合わせてもかまいません。
お祝い膳をする場所は、安産祈願をする神社やお寺に近いお店を選ぶと、参拝後スムーズに食事を楽しめるでしょう。安産祈願で有名な神社仏閣の近隣のホテルや料亭、レストランなどでは、お祝い膳メニューの用意がある店もあります。また、特別な場ではなく、自宅で食事を楽しむ形でも、もちろんOKです。
いずれの場合も、安産祈願の主役は妊婦さんとおなかの赤ちゃんです。体調を第一に考えて、家族のサポートを受けながら、無理のない範囲で行いましょう。
安産祈願でいただいたお札やお守りは、神棚や仏壇などに飾り、お守りは妊婦さん自身が身につけます。お札は1年お祀りしたのちに神社やお寺に納めますが、出産お礼の参拝時、または生後1ヶ月ごろに行う赤ちゃんの初参り(お宮参り)のときに納めてもよいでしょう。なお、お札やお守りは、受けたところへ納めるのが基本ですが、遠方の場合は近くの神社やお寺でもかまいません。
安産祈願は昔からの風習というだけでなく、出産に向けての妊婦さんの不安感を解消する目的もあります。最近では、神社やお寺でのご祈祷だけでなく、別の方法で安産を願う人もいます。
たとえば、おなかの赤ちゃんに「誕生を待っているよ」と伝える機会として、海外のように食事や歓談を楽しむ「ベビーシャワー」をするなど、夫婦や家族・友人で自分たちらしいイベントを企画する方法もあります。
安産祈願は、妊娠5ヶ月(妊娠16週)目の戌の日に行うとされ、神社やお寺におもむき、安産を願って祈祷を受けたり腹帯を受け取ったりするのが一般的です。妊娠中にしかできないイベントなので、家族で楽しむのもよいでしょう。
ただ、あくまでも優先するべきは、妊婦さん自身の体調です。スケジュールや計画には余裕をもち、戌の日にこだわりすぎることなく、自分たちに合った時期や方法で安産を祈りましょう。
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