出産手当金の受給条件は?1年未満でももらえる?別制度との違いも解説!

企業で働いている女性が出産をすると、出産手当金を受け取れます。産前産後休業を利用する女性にとって、出産手当金は減ってしまう収入や生活費をカバーするための重要な役割を果たします。

ただ、妊娠中~出産後の経済的支援を目的とした制度によっては、勤務期間が条件の場合もあるので、「入社・転職して1年未満では、出産手当金を受け取れないのでは?」と思う人もいるようです。そこで今回は、出産手当金の受給条件や受け取れない場合、入社・転職して1年未満での計算方法などについて解説します。

編集・監修

関川 香織

2012年よりフリーランスのライター・編集。前職の主婦の友社では妊婦雑誌、育児雑誌、育児書、育児グッズ通販誌の編集に携わり、これまでに手がけた書籍・雑誌は500冊以上。現在は「LITALICO発達ナビ」などのWEB記事制作や編集にも携わる。公私ともに、約30年にわたって日本の育児・妊娠・出産の情報発信をしている。

出産手当金とは?

出産手当金とは?

出産手当金とは

出産手当金は、会社で働く女性が出産で休業した際に支給される手当金で、加入している健康保険から支給されます。労働基準法では、出産予定の女性が請求した場合に、会社は予定日の6週間(双子など多胎妊娠の場合は14週間)前から休業を認めるよう定められています。(産前休業)また、産後は8週間(女性が請求した場合は産後6週間)まで女性の就業を禁じています。これを産後休業、産休と呼びます。 

一方、産前産後休業中の賃金の支払いについては労働基準法による規定がないため、給与の有無は会社ごとの就業規則によって異なります。そこで、産休中に無給または減給になる女性の経済的支援のために、「出産手当金」があります。これは働く女性が出産した場合の制度なので、男性は受け取れません。

出産手当金の支給対象となる3つの条件とは?

出産手当金の支給対象となる3つの条件とは?

出産手当金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。これには、勤務期間に関する規定がないため、入社・転職後1年未満の場合でも出産手当金を受け取ることができます。

 

①勤務先の健康保険の被保険者(加入者本人)であること

出産手当金の受給には、出産した女性本人が勤務先の健康保険に加入している必要があります。パートやアルバイトでも、健康保険への加入者本人である場合には、出産手当金の対象となります。 

②妊娠4ヶ月以上経過した出産であること

出産手当金は妊娠4ヶ月以降の出産が対象です。健康保険では、「出産」を妊娠4ヶ月(妊娠日齢85日)以降と定義していて、流産、早産、死産、人工妊娠中絶なども「出産」に含まれます。

③出産のために休業していること

対象となるのは、原則として出産のために休業中であることに加え、その間に会社からの給与がない人です。休業中に給与があった場合でも、その給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は、差額分を受け取ることができます。

関連記事

出産手当金はいつ誰がもらえる? 申請の流れや期間、条件を解説!

妊娠・子育て

出産手当金をもらえない4つのケース

出産手当金をもらえない4つのケース

出産に関連する経済的支援の中でも、出産手当金はほかの制度と比べると、支給対象の条件が広めと言えます。ただし、下記のような場合は出産手当金の対象外です。 

 

①国民健康保険の被保険者である場合

出産手当金は、会社員などが加入する健康保険から支払われるため、自営業、個人事業主、フリーランスなどは対象外です。ただし、自営業でも「国民健康保険組合※」に加入している場合、組合によっては出産手当金が支給される場合もあるので、ホームページや窓口で確認しましょう。

※ 国民健康保険組合:国民健康保険の一種で、業種ごとに集まって作られている健康保険組合の団体。国民健康保険にはほかに、都道府県および市町村が保険者となる市町村国保がある。

  

②扶養家族である場合

会社勤務の女性でも、「健康保険は夫の扶養家族として加入している」という場合もあるでしょう。出産手当金はあくまでも「加入者本人」に適用されるため、夫の扶養家族の場合には受け取れません。なお、支給対象は出産する女性のみで、健康保険の加入者本人でも夫(男性)は支給対象外です。

 

③休業期間中に出産手当金以上の給与をもらっている場合

休業期間中、出産手当金以上の給与がある場合は、支給の対象外となります。勤務先独自の就業規定などによっては、休業中の給与が保障される場合があります。例えば公務員は、産休中でも条件を満たしていれば、各種手当を除いた給与の全額が支払われています。一般企業でも給与が支払われる場合があるので、会社に確認しておくとよいでしょう。

 

④健康保険の任意継続被保険者である場合

健康保険の任意継続被保険者も、出産手当金の支給対象外です。任意継続とは、退職後も一定条件を満たす場合に、勤務していたときの健康保険に引き続き加入できる制度です。任意継続では、退職前と同様の保険給付を受けられますが、出産手当金や疾病手当金は受け取れません。


無料セミナーのご案内

夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー

無料
スマホ参加OK
顔出し不要

出産手当金はいくら受け取れる?1年未満の場合は?

出産手当金はいくら受け取れる?1年未満の場合は?

出産手当金の対象期間

出産手当金は、出産日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までの範囲で休業し、原則として無給の期間を対象に支給されます。出産日が予定日より遅れた場合はその日数分が加算されますが、予定日より早く出産した場合は早まった日数分が減額となります。

 

支給金額の計算方法

出産手当金は、以下のように計算します。

出産手当金の総支給額=出産手当金の1日あたりの支給額×休業日数

出産手当金の1日当たりの支給額とは、〈支給開始日前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均額÷30日×2/3〉です。

標準報酬月額:毎月の給与額を区切りの良い幅で50等級に区分したもので、健康保険や厚生年金保険の保険料を定める際の基準でもある金額

 

たとえば、支給開始日前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均額が30万円の場合、
1日あたりの支給額は、30万円÷30日×2/3=6,667円です。

30日で割って出た金額は、1の位を四捨五入し、「×2/3」で計算した金額に小数点がある場合は、小数点第1位を四捨五入します。

産前42日+産後56日で計98日間の産休を取得すると、総支給額は6,667円×98日=653,366円となります。

ただし、上記の総支給額は、あくまで一例です。実際の総支給額は、加入している健康保険組合などにより変わることがあります。

 

入社して1年未満の場合の計算方法

入社後、1年未満で出産により休業することになった場合は、計算式の「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均額」を、下記いずれかのうち低い金額に置き換えます。

・支給開始日のある月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

・支給開始月のある年度の前年度9月30日における健康保険全加入者の標準報酬月額を平均した額

 

たとえば、2022年12月1日から会社に勤務し、2023年5月10日から出産手当金の支給開始となる場合

①2022年12月~2023年5月までの6ヶ月間の標準報酬月額の平均額

②2022年9月30日時点で、申請者が加入する健康保険の全加入者の平均標準報酬月額

上記①②のうち、金額が低いほうで出産手当金の計算をします。

入社1年未満では利用できない制度とは?

入社1年未満では利用できない制度とは?

 

産後の給付金制度で、出産手当金と混同しやすいのが「出産育児一時金」と「育児休業給付金」です。それぞれ、入社して1年未満でも受給できるのか、というポイントと共に解説します。 

 

出産育児一時金:1年未満でも受け取れる!

出産育児一時金は、健康保険の加入者本人または扶養家族が出産した際の費用として、加入する健康保険から支給される給付金です。支給額は一律で、令和4年3月現在では原則子ども一人あたり42万円(2023年4月より50万円に増額)です。

 

双子など多胎児の場合には、子どもの人数分が支給されます。ただし産科医療補償制度未加入の医療機関などで出産した場合には、子ども一人あたり40.8万円となります。

産科医療補償制度:分娩に関連して重度脳性麻痺となった子どもが速やかに補償を受けられるよう、分娩を取り扱う医療機関等などが加入する制度。

 

出産育児一時金を受け取るための条件は、下記の2つです。

健康保険や国民健康保険の加入者、または加入者の配偶者や扶養家族であること

②妊娠4ヶ月(85日)以降の出産であること

上記の条件に勤務期間の定めはないため、入社・転職後1年未満でも出産育児一時金は受け取ることができます。

育児休業給付金:1年未満では受け取れない!

育児休業給付金は、育休中の生活基盤の安定と育休の積極的な取得を支援する目的で設けられた制度で、育休取得者ならパパ・ママどちらも取得できます。

受け取れる金額は、以下のように計算します。

 

・育休開始から180日以内→休業開始時賃金日額※×支給日数(通常支給単位期間1ヶ月に基づき30日)×67%

 

・育休開始から181日以降→休業開始時賃金日額※×支給日数(通常支給単位期間1ヶ月に基づき30日)×50%

※休業開始賃金日額:育児休業を開始する前6ヶ月間の賃金÷180日

 

育児休業給付金を受け取るための条件は、下記の4つです。

 

①育休を取得前の2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上あること

※当該期間中に第1子の育児休業などで一定期間賃金の支払を受けられなかった期間がある場合は、受給の条件が緩和され、計4年間(最長)までこの期間に含めることができます。

②育休期間中の1ヶ月ごとに、休業前の賃金の8割以上が支払われていないこと

③育休期間中に働く場合は、月に10日もしくは80時間以下であること

④派遣社員など有期雇用契約者は、子どもが1歳6ヶ月になる日までに労働契約が満了せず働き続ける見込みがあること

 

受給の詳しい条件を知りたい方や、自分に受給資格があるのかを確認したいという方はお近くのハローワークへお問い合わせください。

 

参考:ハローワーク「全国ハローワークの所在案内

 

まとめ

まとめ

 

出産手当金は、支給条件の中に勤めている会社の勤務期間については規定がないため、入社して1年未満でも受け取ることができます。一方で、育児休業給付金の場合は、入社して1年未満は支給対象外となっています。

入社や転職してすぐのタイミングで妊娠が分かると、うれしい反面、「今の状況で産休・育休は取得できる?」「産休・育休を取得したときに、経済的保障は受けられる?」などと不安になってしまうかもしれませんね。経済的支援の種類や支給条件、計算方法など、制度をしっかり把握したうえで、安心して出産に臨めるように準備しておきましょう。

無料セミナーのご案内

夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー

無料
スマホ参加OK
顔出し不要

この記事をシェアする

特集記事

カテゴリから記事を探す

キーワードから探す

ライフステージから探す