2023.04.14
編集・監修
関川 香織
2012年よりフリーランスのライター・編集。前職の主婦の友社では妊婦雑誌、育児雑誌、育児書、育児グッズ通販誌の編集に携わり、これまでに手がけた書籍・雑誌は500冊以上。現在は「LITALICO発達ナビ」などのWEB記事制作や編集にも携わる。公私ともに、約30年にわたって日本の育児・妊娠・出産の情報発信をしている。
育休とは、子どもを育てるための休業制度です。正式名称を「育児休業」と言い、育児・介護休業法により定められています。
原則として1歳未満の子どもを養育する労働者が、会社に申し出ることで養育する期間に休業ができます。なお、産休(産前産後休業)は育休とは別の制度で、出産した女性のみが対象ですが、育休は男女共に取得が可能です。
育休は以下の3つの条件を満たしていれば、雇用形態にかかわらず男女共に取得できます。
①同じ会社に引き続き1年以上雇用されていること
②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用が見込まれること
③子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ契約の更新がされないことが明らかではないこと
つまり、雇用期間が1年未満、契約社員や派遣社員などで1年以内に雇用関係が終了する見込みである、などの場合には育休が取得できないことがあります。自分が育休対象者にあたるかどうかは、社内でも確認しておきましょう。
では実際に育休が取得できる期間はいつからいつまででしょうか。基本的には「子どもが1歳になるまでの間に労働者が申し出た期間」ということになりますが、ママとパパとでは育休がとれる期間は、以下のように少し異なります。
ママは出産翌日から8週間(56日)は産休となるため、育休は産後57日目から子どもが1歳になる誕生日の前日までが取得できる期間です。一方パパの場合、育休は子どもが生まれた日から1歳の誕生日の前日まで取得できます。
出生時育児休業(産後パパ育休)とは、通常の育休とは別に、子どもが生まれた日から8週間以内に最大4週間までパパが取得できる制度です。
申請は、休業する2週間前までが原則で、最初にまとめて申し出ることで2回に分割して取得できます。
正規雇用者であれば取得条件は特になく、入社1年未満でも原則として取得することができます。
有期雇用者(パート社員や派遣社員、契約社員、アルバイト)の場合は、子どもの出生日または出産予定日のいずれか遅い方から数えて8週間後の翌日から6ヶ月までの間に、労働契約期間が満了して更新されない、ということが明らかでないことが条件です。
パパの育休取得を促進する目的で設置されたのが、「パパ・ママ育休プラス」です。この制度を利用すると、通常は子どもが1歳になるまでの育休が、1歳2ヶ月になるまで延長して取得できます。
ただし、育休の取得は1年間(ママの場合は8週間の産休も含む)で変わりません。パパ・ママ育休プラスを利用すると、1年間の育休を子どもが1歳2ヶ月になるまでの間に振り分けて取得できるということになります。
①夫婦共に育休を取得すること
②配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育休を取得していること
③子どもの1歳の誕生日前に育休の開始予定日を設定していること
④パパ・ママ育休プラス取得者の育休開始予定日が、配偶者の取得する育休開始の初日以降であること
※「配偶者」とは、法律上の夫婦だけでなく事実婚のカップルにも適用されます。
パパ・ママ育休プラスを利用すると、夫婦間で育休の取得時期を柔軟に調整することができます。以下の例を参考にしてください。
例1 ママの職場復帰に合わせて、入れ替わりで育休を取得する
ママが子どもの1歳の誕生日前日まで育休を取得し、復職すると同時にパパがパパ・ママ育休プラスを2ヶ月取得すると、子どもの誕生から1歳2ヶ月まで夫婦どちらかが育休を取得できます。
例2 ママとパパが一時期だけ重複するよう少しだけずらして育休を取得する
ママの育休が終了する前に2人同時に育休の時期を取ることで、ママからパパへ育児の引き継ぎができます。
例3 ママとパパ共に同時期に育休を取得する期間がある
産後間もない時期などに、パパとママが同時に育休を取得することで、育児の大変な時期に夫婦で協力して子育てができます。
パパ・ママ育休プラスについては、以下の関連記事でも確認しておきましょう。
育休を取得できる期間は、原則子どもが1歳の誕生日を迎えるまでです。ただし、一定の条件を満たす場合には、1歳以降も延長することが可能です。
育休は、まず1歳6ヶ月までの「延長」があり、さらに「再延長」として2歳まで延長することができますが、それぞれ申請が必要です。
育休を延長するには、以下の2つの要件を満たすことが必要です。
①子どもが1歳になる誕生日の前日(再延長の場合は、1歳6ヶ月になる前日)までに、従業員本人または配偶者が育休を取得中であること
②子どもが保育園に入所できないなどで、1歳を過ぎても休業が必要と認められること
上記の「休業が必要と認められる」ためには、下記のような理由が挙げられます。
①保育園に入園できない
②養育を予定していた配偶者の死亡
③養育を予定していた配偶者の病気、けが、障害など
④養育を予定していた配偶者と離婚などで別居
⑤新たな妊娠・出産
上記の②③④は、子どもの養育をおもに行う予定だった配偶者の状況です。それによって、育休取得中の本人が子どもの養育のために働けない場合に、育休の延長が認められます。育休取得中の本人の病気やけがなどでは、育休を延長することはできません。
なお、それぞれの理由によって申請時に必要な証明書類が異なるため、次の章の表も参考に申請時には確認しましょう。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
育休を取得するには、期限までに自分から会社に申し出ます。
育休を取得するには、休業開始の1ヶ月前までに申請することが必要です。ママが産休に続けて育休を取得したい場合は、産休に入る前か、産前休業中に申請が必要となります。提出する書類や流れは会社ごとに異なるので、早めに自分が勤めている会社の規定を確認したり、担当部署に問い合わせたりしておくことが大切です。
育休延長のための申請期限は、下記のとおりです。
・1歳の誕生日から1歳6ヶ月までの延長 → 1歳の誕生日の2週間前まで
・1歳6ヶ月から2歳までの延長 → 1歳6ヶ月の2週間前まで
なお、2歳までの延長を希望する場合は、1歳半までの「延長」をしたうえで「再延長」の申請をする必要があります。
延長の申請先は、育休の申請と同様に事業主(会社)です。延長が認められるためには、延長が必要となった事情を明らかにするため、下記の必要書類も提出します。
育休は育児・介護休業法で定められた制度で、利用する労働者に対しては経済的支援があります。この章では、支援の概要を紹介します。
雇用保険の被保険者(加入者)が育休の期間中、お金が受け取れる制度です。金額は、育休開始から180日までは賃金の67%、181日以降は賃金の50%が目安です。
育休中は、社会保険料の被保険者(加入者)本人の負担分と、事業主の負担分が共に免除されます。免除期間中でも、休業前の給与水準に準じた給付が保障されます。
育休終了後、時短勤務などで出産前より給与が低下した場合、被保険者が申し出ると、社会保険料の計算のもとになる標準報酬月額を低下後の額に改定できます。これにより、社会保険料の負担金額を下げることができます。
なお、フリーランスの場合は、雇用保険ではないため育児休業給付金は対象外ですが、国民年金保険料は免除となります。(ただし、対象は出産した女性のみ)
育休は、原則として子どもが1歳の誕生日の前日までの期間、男女共に取得できます。保育園に入れないなど事情がある場合は、1歳6ヶ月または2歳まで延長することも可能です。育休の取得中には、育児休業給付金などの経済的な支援もあります。育休の期間を有効に使って、新しい家族のスタートを充実させましょう。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー