2023.03.23
育休とは、働く人が子どもを育てるために取得できる休業制度です。正式名称を「育児休業」と言い、育児・介護休業法によって定められています。
育休は法律で定められた制度なので、一定の条件を満たせば正社員以外の有期契約労働者も取得することができます。ただし、法律では育休取得期間内の給料の支払いについては、きまりがありません。
給料=労働の対価と考えると、育休中で働いていない期間中は、基本的に給料は支払われません。育休期間中も給料の全額または一部を支払う企業もあるようですが、数としてはごくわずかです。
ただ、育休期間中は基本的に給料は出ないものの、安心して育休を取得できるようにさまざまな経済的支援制度があります。会社からの給料という形ではありませんが、お金がまったく得られないわけではない、ということをまず知っておきましょう!
育休中に受け取れるのが「育児休業給付金」で、「育休手当」とも呼ばれています。
受け取れる対象は、1歳未満の子どもを育てるために育休を取得する、雇用保険の被保険者(加入者)です。雇用保険に加入していることが前提であるため、雇用保険に加入していないフリーランスや自営業の人などは受け取ることができません。
育児休業給付金は、基本的に「育休を取得している期間」に受け取ることができ、子どもが満1歳となる日の前日まで支給されます。ただし、実際の支給期間は1歳の誕生日の前々日までです。民法では、満年齢に達するのは誕生日の前日と規定されているため、この場合の「誕生日の前日」とは、実際には「誕生日の前々日」になるわけです。
また、育休手当の支給期間は、実際に育休を取得した日数を対象とします。そのため、自分の都合で育休を短縮して職場復帰した場合、支給期間は職場復帰日の前日までに短縮されます。
一方で、次のような場合には、子どもが1歳6ヶ月(最長で2歳)になるまで育休の期間が延長されると共に、育児休業給付金の支給期間も延長されます。
・保育園(市区町村に申し込みをする認可保育園など)に申込みを済ませたが、待機児童などの問題でその子が1歳になっても入園ができない場合(子どもが1歳6ヶ月になっても保育園などに入れないときには、2歳になるまで延長が可能)
・子どもが1歳を迎えた日以降に、養育を行う予定の配偶者が死亡したとき
・子どもが1歳を迎えた日以降に、養育を行う予定の配偶者が負傷、疾病または身体上・精神上の障害によって子どもの養育が困難な状態に陥ったとき
・離婚などの事情があり、配偶者が子どもと同居しないことになったとき
・育休中の新たな妊娠・出産によって、出産予定日から6週間(双子など多胎妊娠の場合は14週間)以内であるか、産後8週間以内(産前産後休暇)である場合
※上記の延長条件は、いずれも育休の取得者本人が、子どもを養育しなければいけないために仕事ができない状況を前提としています。
育児休業給付金(育休手当)は、2ヶ月ごとに決められた金額が支給されます。支給額は受給者の給与状況によって違ってくるほか、支給額の上限・下限も定められています。
育児休業給付金の支給単位期間(※1)の支給額は、育休開始からの日数によって以下のように2段階に分かれています。
・育児休業開始から180日以内
→休業開始時賃金日額(※2)×支給日数(※3)×67%
・育児休業開始から181日以降
→休業開始時賃金日額(※2)×支給日数(※3)×50%
(※1)支給単位期間:育休開始日から1ヶ月ごとの期間。ただし、育休終了日を含む場合は、終了日までの期間
(※2)休業開始時賃金日額:育児休業を開始する前6ヶ月間の賃金÷180日
(※3)支給日数:支給単位期間(1ヶ月)で原則30日
育児休業給付金の計算で使われる「賃金」は、残業手当・通勤手当・住宅手当などを含む給与額面のことで、手取り額ではありません。
なお、労働によって得られるお金の呼び方にはさまざまありますが、以下のような違いがあります。
・給与→雇用主から労働者に支払われるすべて(社宅、通勤定期券などの現物支給も含まれる)
・賃金→給与とほぼ同じだが、労働基準法では通貨のみによる支払いのこと
・給料→各種手当や残業代などを除いた基本給のこと
育児休業給付金の支給額は賃金額をもとに計算されますが、支給額と賃金額にはそれぞれ限度額があり、毎年8月1日に見直されます。2023年7月31日までの上限・下限金額は以下の通りです。
【賃金額】
・上限額:月額455,700円/日額15,190円
・下限額:月額 79,710円/日額 2,657円
これにより、育児休業給付金の支給限度額は以下のようになります。
【支給限度額】
・上限額:305,319円(67%のとき)/227,850円(50%のとき)
・下限額: 53,405円(67%のとき)/39,855円(50%のとき)
なお、支給額が上限額を超える場合は一律に上限額までの支給となり、下限額に満たない場合は、一律に下限額まで引き上げられて支給されます。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、育休中には免除されます。つまり、育休以外のときには天引きされている社会保険料が、天引きされないということです。
社会保険料が免除になるのは、育休を開始した月から、終了日の翌日が含まれる月の前月までの期間です。たとえば、9月1日に育休を開始して終了日が11月25日である場合、育休の終了日の翌日=11月26日が含まれる11月の前月まで、つまり9月分と10月分の社会保険料が免除されます。
加えて、育休の開始も終了も同じ月であった場合には、育休の期間が14日以上であれば、その月の社会保険料が免除されることになっています。たとえば、9月1日~15日まで育休を取得した場合には、9月中に14日以上が育休期間となるので、9月分の社会保険料が免除となります。
なお、社会保険料は日割りをせず月単位で計算する規定のため、免除されるのも月単位です。
育休の取得期間中に社会保険料を免除された場合でも、将来受け取れる年金額が減額されることはありません。
また、免除されていた期間も納付期間として記録が残り、免除期間中も保険の加入者としての資格は有効とされるので、安心して子育てに専念できます。
育休中、社会保険料が1ヶ月にどれくらい免除されるのかを、いくつかの年収例から以下の3つの場合について算出してみましょう。
※参考:全国健康保険協会「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
※40代から対象になる介護保険は対象外
※東京都在住の20~30代男女を想定
保険料は年収によって異なりますが、20~30代の場合には、健康保険料・厚生年金保険料共にそれぞれ月額1~2万円程度が免除されます。
育休中には、基本的に会社から給料は支給されません。でも、育児休業給付金を受け取ったり社会保険料免除の制度を活用したりすることで、育休取得前と比べて約5〜7割程度の金額の収入は確保できます。
ただし、育児休業給付金は支給されるまでに、出産から数ヶ月程度かかります。そのため、その間は育休を取得していないパートナーの収入で賄ったり、貯金から工面したりする必要があります。
でも、制度を上手に活用すれば、育休の取得についてお金の面でむやみに不安を感じる必要はありません。安心して育休を取得するために、さまざまな支援や制度について知り、理解することで、備えておきましょう。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー