2023.03.08
まずは、育休の基本について知っておきましょう。育休とは、正式名称を「育児休業」と言い、子どもを育てるために育児・介護休業法によって定められている休業制度です。
1才未満の子どもを育てる労働者が、会社に申し出ることで子育て期間に休業できます。産休(産前産後休業)は出産した女性のみが対象ですが、育休は男女ともに取得可能です。
育休は、以下の3つの条件を満たしていれば、雇用形態や性別にかかわらず取得できます。
①同じ会社に1年以上雇用されていること
②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用が見込まれること
③子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了していて契約が更新されない、ということが明らかではないこと
自分が育休の対象者にあたるかどうかは、念のため会社にも確認をしておきましょう。育休について詳しくは、関連記事でご確認ください。
育児・介護休業法で定められている育休中には、取得している労働者に対して経済的な支援がいくつかあります。この章では、それぞれの概要を紹介します。
雇用保険の加入者本人が育休の取得期間に、国からの給付金を受け取れる制度です。
育休開始から180日は賃金の67%、181日以降は賃金の50%を目安とした金額が受給できます。詳しくは、関連記事でご確認ください。
社会保険料は通常、加入者本人と雇用主が折半で負担していますが、育休中はどちらも免除されます。
保険料の免除期間中でも、必要な場合には休業前の給与水準に準じた給付が保障されます。
育休終了後、時短勤務などの理由で給与が下がった場合、保険加入者本人が雇用主を通して保険者に申し出ると、社会保険料の支払い対象となる「標準報酬月額」を、減額になった給与に応じた金額に改めることができます。
これにより、社会保険料の負担金額を下げることができます。
社会保険料は給与から天引きされていることが多いため、「支払っている」という実感はあまりないかもしれません。
けれども、金額は小さくはないので、社会保険料が支払い免除になると経済的にはとても助かるはずです。近年は、女性だけでなく男性の育児取得も推進されているため、社会保険料の免除については、ぜひ夫婦ともに理解しておいてください。
「社会保険」は、広い意味と狭い意味の2通りで使われていて、広い意味(広義)では病気やケガ、身体の障害、失業などがあったとき、生活の保障となる公的な保険制度全体のことを言います。日本では、国民は何らかの社会保険に加入することが義務付けられているため、労働者は事業形態や会社の規模に応じた社会保険に加入します。
広義の社会保険は2つに分けられ、会社員・公務員が加入するのは「被用者保険」と、自営業者などが加入する「一般国民保険」があります。
「被用者保険」はさらに、狭い意味で使われる「社会保険(狭義)」と「労働保険」に分けられています。育休中に保険料が免除されるのは、「社会保険(狭義)」に分類される「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険(※40歳以上のみ)」です。なお、一般に「社会保険」とは、「社会保険(狭義)」のことをいいます。
また、「労働保険」の1種である「雇用保険」は、育休や介護休業を取得する労働者のための保険です。育休中の経済支援である育児休業給付金は、この雇用保険から支払われます。
社会保険にはさまざまな種類があり、それぞれ管轄も分かれているので、下記の表で確認しておきましょう。
育休中の社会保険料免除については、以下のような規定があります。育児・介護休業法の改正によってそれまでの規定が見直され、2022年10月から施行されています。
ポイント① 育休開始日の属する月から終了日の翌日が属する月の前月までの保険料を免除。さらに、同月内に14日以上の育児休業を取得した場合は、当該月の保険料を免除
たとえば、10月中に育休を開始して終了日が11月中である場合、育休が終了する11月の前月、つまり10月の社会保険料が免除されます。
さらに2022年10月からは、育休の開始も終了も同じ月であった場合に、育休の期間が14日以上であれば、その月の社会保険料が免除されることになっています。
下記の(例2)の表を見るとわかるように、育休の開始も終了も10月中であったなら、育休期間が14日以上あれば10月分の社会保険料が免除になるわけです。
ポイント②賞与に係る社会保険料については、1ヶ月を超える育児休業を取得している場合に限り免除
賞与(ボーナス)に対する社会保険料は、ボーナスが支払われた月の末日を含んで、連続した複数月の育休を取得した場合に免除されます。
たとえば下記の表を例にすると、(例1)では10月中にボーナスが支払われた場合、10月中に育休を開始し、10月31日を含んで11月中まで1ヶ月以上育休を取得しているので、ボーナスを対象とした社会保険料は免除されます。
一方(例2)では、10月中にボーナスの支払いがあり育休を開始していて、11月まで取得しています。ただ、育休の期間が1ヶ月未満のため、ボーナスを対象とした社会保険料は免除されません。
なお、育休期間が1ヶ月を超えるかどうかは、営業日ではなく暦日(実際の日数)で判断し、土日や祝日などもその期間に含まれます。
ポイント③連続する2つ以上の育児休業等を取得する場合は、1つの育児休業等とみなして社会保険料を免除
育休は分割して取得できますが、連続して分割取得した場合は1回の育休として社会保険料が免除されます。例えば、10月10日から11月10日、11月11日から11月25日と、続けて2回の育休を取得した場合、本来なら1回目と2回目は別の育休とみなされます。そして、①にあるように、2回目の11月も14日以上育休を取得しているため、11月分の社会保険料が免除となるはずです。
しかし、この場合は10月10日~11月24日までの1回の育休とみなされるため、免除対象となるのは、育休終了日の翌日(11月26日)を含む月の前月、つまり10月分だけとなり、11月分は免除されません。
なお、育休中に社会保険料を免除されても、将来受け取れる年金額が減額されることはありません。免除されている期間中でも納付記録は残りますし、免除期間中も被保険者資格は失効しないので、安心してこの制度を利用することができます。
ママパパになるまえに知る「育児・保活・ライフプラン」
社会保険料が免除になる期間は、「育休を開始した月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月まで」です。
加えて、同月内に14日以上の育児休業を取得した場合は、その月の保険料が免除されます。
たとえば、10月10日から12月24日まで育休を取得した場合、10月分、11月分の社会保険料が免除されます。(12月分は対象外)なお、社会保険料は日割りではなく月単位で計算されるため、免除も月単位となります。
育休中に社会保険料がどれくらい免除されるのか、いくつかの年収例から算出してみましょう。
※参考:全国健康保険協会「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」
※40代から対象になる介護保険は対象外です。※保険料は、給与の支給額などにより誤差が生じることがあります。
※免除対象期間は13ヶ月(産前産後休業期間+育児休業期間)と仮定。※東京都在住の20~30代男女を想定。
社会保険料の免除申請は、事業者(会社)が「産前産後休業取得者申出書」や「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出する必要があります。申請のおもな流れは下記のとおりです。
①被保険者から事業主に取得を申し出る
育児休業を取得すると決めたら、被保険者(加入者本人)が事業主へいつからいつまで育休を取りたいのかを申し出ます。産前産後休業から続けて育休を取得する場合は、産前産後休業の取得前に申請が必要です。
育休の開始日と終了日の翌日が同じ月である場合には、育休の希望日数も書類に記載する必要があります。
また、同じ月中に複数回に分けて育休を取得したい場合には、取得する最後の育休の届け出をする際に、書類をまとめて提出することができます。
②事業主が申出書を年金事務所へ提出
育休取得の申し出を受けた事業主は、健康保険組合や日本年金機構(事業所の所在地を管轄する年金事務所)に申出書を提出します。
申出書が提出されると、日本年金機構から事業主に確認通知書が届きます。
③保険料の免除が開始される
書類が受理され手続きが終わると、育休を取得した日が含まれる月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月まで、月単位で社会保険料が免除されます。
なお、社会保険料の免除期間中は、加入者本人だけでなく、事業主が負担していた社会保険料も免除となります。
最初に申し出た育休の終了の予定日よりも、早く職場復帰する場合には、事業主側が「育児休業等取得者終了届」を日本年金機構の事務センターへ提出することが必要です。
育休は、企業で働く男女がともに取得できる制度です。ただし、育休の取得期間中には給料が出ないため、お金の面で不安を感じることもあるでしょう。
そういった不安を減らし、安心して育休が取得できるように、育児休業給付金の支給や、社会保険料の免除など、さまざまな経済的支援が用意されています。
2022年には育児・介護休業法の改正がおこな行われ、社会保険料も、これまでと違った条件で免除されるようになりました。育休を希望している人は安心して育休が取得できるように、日ごろから制度について情報を収集しておきましょう。
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