2023.01.31
育休とは、子どもを育てるための休業制度で、正式には「育児休業」と言い、育児・介護休業法で定められています。
男女ともに取得できますが、2022年に法改正が実施され、特に男性の育休取得が推進されています。
そこで今回は、男性の育休取得について、いつ・どのように取得できるのかを詳しく紹介します。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
まずは、育休全般について、基本的な内容を知っておきましょう。
原則として、1歳未満の子どもを育てる労働者(給与所得者)が対象です。産休(産前産後休業)は出産した女性のみが対象ですが、育休は性別にかかわらず取得できます。
育休は雇用形態にかかわらず取得可能ですが、以下3つの条件を満たしている必要があります。
①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること
③子どもの2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了しており、かつ契約が更新されないこと、が明らかでないこと
雇用期間が1年未満だったり、契約社員や派遣社員などで1年以内に雇用関係が終了する見込みだったりすると、育休を取得できないことがあります。
自分が育休の対象者であるかどうかは、会社の担当部署などに確認しておくと安心です。なお、ママが専業主婦の場合でも、パパは育休を取得することができます。
日本で推進されているパパの育休取得について、実際の状況を見てみましょう。
2022(令和3)年の厚生労働省発表によると、女性の育休取得率は85.1%と9割に迫る数字ですが、一方の男性は13.97%でした。
ただ、前年2021(令和2)年の調査では、男性の育休取得率は12.65%なので約3ポイント上昇しています。男女の育休取得率には大きな開きはあるものの、育休を取得する男性は少しずつ増加していると言えるでしょう。
また、育休の取得期間を見ると、女性は「1年〜1年半」が34%で最も多く、次いで「10ヶ月〜1年」が30.0%など、80.2%のママが10ヶ月以上という長期間の育休を取得しています。一方、男性は5日〜2週間未満が26.5%、5日未満が25.0%で、半数以上が2週間未満という短期間の育休取得であることがわかりました。
政府は「2025年までに男性の育休取得率30%」を目標として掲げ、育児・介護休業法の改正など、さまざまな取り組みにより男性の育休取得を推進しています。
ただ、日本の男性の育休取得率が低いのは、育休制度が諸外国と比べて遅れている、という理由ではないようです。
2021年のユニセフ発表では、先進国の育休・保育政策等を評価したランキングで、日本の育休制度は1位です。これは、パパが取得可能な育休期間が最も長く、取得率は低くても改善に向けた取り組みが進められている点が評価されたとのことです。
厚生労働省の委託事業で2021(令和2)年に行われた調査によると、制度はあっても男性が育休を取得しないおもな理由は、次のようなものでした。
・収入を減らしたくなかったから:36.4%
・職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから:25.9%
・会社で育児休業制度が整備されていなかったから:25.9%
・自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから:17.6%
・残業が多い等、業務が繁忙であったから:16.9%
※厚生労働省委託事業「仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書」より、男性・正社員の回答上位5つ(複数回答)を抜粋。
こうして見ると、男性が育休を取得しない理由の最多は収入についてですが、そのほかは会社や周囲の理解・雰囲気や、人材不足、仕事の性質をあげる人が多いことがわかります。
つまり、育休制度の整備だけでなく、男性の育休取得が当たり前になるような職場の雰囲気作りや理解を深めることがまず必要なのだとわかります。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
育休を定めている育児・介護休業法は、「父親・母親が希望すれば、仕事や育児を両立するために柔軟に休業することができる状態をつくる」ことを目的に改正され、2022年(令和4年)4月から以下のような改正点が段階的に施行されています。
これにより、「男性が育休をとりづらい原因」のうち、「会社で育児休業制度が整備されていなかった」についての解決につながっていくことが期待されています。
今回の法改正で、企業は妊娠・出産の報告を受けた場合、その従業員に対して育休の制度について説明し、育休取得の意向を確認することが義務付けられました。加えて、育児休業給付金や休業中の社会保険料の取り扱いについてなども説明する義務があります。
この説明や意向確認には、面談や書面のやりとりが必要です。また、企業側が従業員に対して、育休を取得させないような説明を故意にすることは、法律で禁止されています。
以前は、育休を取得するためには
①雇用期間が1年以上であること
②子どもが1歳6ヶ月になるまでの期間に契約が終了しないこと
の2つが要件でした。
けれども、2022年4月からはこれが緩和され、②のみとなりました。ただし、「雇用期間が1年未満の従業員は、育休を取得できない」とする労使協定を締結している場合には、育休対象から除外することも可能となっています。
2022年10月からスタートした「産後パパ育休(出生児育児休業)」。通常の育休とは別に、子どもの誕生から8週間以内に4週間まで休業できる制度で、ポイントは以下の通りです。
・産後パパ育休と通常の育休は併用が可能
・取得できる4週間の休業は、最初にまとめて申請すれば2回まで分割できる
・産後パパ育休の期間中も、育児休業給付金が支給される
産後パパ育休だけでなく、これまで取得は1回だけだった通常の育休も、2回まで分割して取れるようになりました。
また、育児休業を延長した場合、これまでは開始時点が1歳もしくは1歳6ヶ月の2回だけでしたが、2022年10月以降は開始日を自由に設定できるようになっています。さらに、育休の延長期間中にも、パパとママが交代で育休を取得できるようになりました。
2023年4月から、従業員が1,000人を超える企業は、年に1回、育児休業取得状況を自社のホームページなどで公表することが義務付けられます。
公表されるのは、「男性の育児休業取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」で、これを守らなかった場合、企業名の公表や過料などのペナルティが課されます。
育児・介護休業法改正については、関連記事も参考にしてみてください。
育児・介護休業法の改正により、通常の育休に加えて産後パパ育休が新設され、より柔軟な休業が可能になりました。
そこで、夫婦で育休を取得する場合の例をいくつか示してみます。これを参考に、各家庭の事情や希望などに合わせた育休の取り方を夫婦で話し合ってみてください。
例1)通常の育休を夫婦ともにフルで取得する
子どもが生まれてから1才まで、夫婦で協力して子育てをすることができます。
例2)通常の育休をパパだけ分割取得する
産後すぐで育児の大変な時期に、パパが1回目の育休を取得。2回目の育休を1才になる少し前から取得することで、ママは育児をしながら職場復帰の準備ができます。
例3)通常の育休を夫婦で分割取得する
産後間もなくの育児が大変な時期に、パパが1回目の育休を取得。ママが長期で休みにくい場合、一時復職中にパパが2回目の育休を取って育児をします。
例4)パパが産後パパ育休を分割取得し、通常の育休をママが分割して取得
育児の大変な産後間もない時期と、ママが長期間休みにくい職場などの場合に、一度復職する時期に合わせてパパが育休を取って育児をします。
例5)パパが産後パパ育休と通常の育休、それぞれ2回ずつ分割して取得
パパの職場がまとめて休みを取りにくい環境の場合、短期間だけ育休を取得。1才まで育休中のママも、パパが育休中は自分のことや職場復帰の準備ができます。
例6)パパが産後パパ育休を2回に分割して取得。パパ、ママともに通常の育休を分割して取得。
パパ、ママともに長期でまとめて休みにくい職場などのとき、数ヶ月ごとに育休を取ることで、子どもが1才まで交代で育児ができます。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
基本的には無給となる育休期間中ですが、経済的支援があることを知っておきましょう。
雇用保険の加入者(本人)が育休取得中に、給付金が受け取れる制度です。育休開始から180日目までは賃金の67%、181日以降は賃金の50%を目安とした金額が給付されます。詳しくは関連記事で確認しておきましょう。
育休中は育児休業給付金が受け取れますし、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料などの社会保険料が免除になります。それでも将来の年金額は、保険料が免除されていた育休期間中も納付したものとして計算されます。また、育休中は無給のため、雇用保険料の負担もありません。
育児休業給付金には所得税がかからず、翌年の住民税の負担も減ります。これらを考えると、育休期間中の手取り額は、育休前の収入の8割前後は確保できる計算となります。
育休中に賞与が出る場合は減額になることもありますが、休業前の収入と比べて大きな減収にはならないでしょう。ただし、育児休業給付金は一般に、申請から給付までに約2ヶ月かかります。夫婦ともに産後すぐ育休に入ると、最初の2ヶ月くらいは無収入になることもありえるので、育休の取得時期はよく考えることが大切です。
育休取得のための申請方法は企業によって違うので、自分が勤めている会社ではどういう流れになっているのかを必ず確認しておきましょう。
なお、育休(育児休業)と「育児休暇」の違いがよくわからないと思われがちですが、育休が育児・介護休業法によって定められた従業員の権利であるのに対し、育児休暇は各企業で独自に設置されている制度で、内容も企業によって異なります。
育休は、休業開始の1ヶ月前までに申請することが必要です。提出する書類や申請の流れは会社ごとに違うので、早めに担当部署などに確認・問い合わせておくことが大切です。
また、すでに育休中で延長を希望する場合は、以下の時期までに申請することが必要です。
・1歳6ヶ月までを希望→1歳の誕生日の2週間前まで
・2歳までを希望→2歳の誕生日の2週間前まで
育児休業給付金を受け取るためには、企業や事業主を通して以下の流れでハローワークに申請します。
①申請者が会社の管轄部署(総務、人事部など)に育休の取得希望を伝える
②申請者が必要な書類に記入を行い、上記の書類を添付して会社に提出する
③支給決定通知書および次回支給申請書が自宅に届き、給付が開始される
④育児休業給付金の受給期間中は、2ヶ月ごとに支給申請書の提出を行う
育児休業給付金について詳しくは、関連記事で確認しておきましょう。
日本では、男性の育休取得は課題として認識されていて、さまざまな取り組みが行われています。これまでは、男性の育休取得に関する制度は整っているのに、雇い主側がよく理解できていないために進んでいなかった部分もあるでしょう。その改善策も、2022年の法改正により進んでいます。
男性も育休を取得すると、その時々しか見ることのできない子どもの成長に向き合うことができますし、夫婦で家事や育児を共有することもできます。育休取得により、収入は一時的に2割ほど減るかもしれませんが、長い目で見ると、パパも育児にかかわることのメリットはとても大きなものがあります。夫婦でぜひ、パパの育休取得について話し合ってみてください。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー