2023.01.30
現在、妊娠中で働いている人や、将来働きながら妊娠・出産を考えている人にとって、必ず知っておきたい制度が「育休(育児休業)」です。赤ちゃんが産まれるということは、家族にとって大きな変化で、これまでとは生活が一変します。そこで、育休を上手に活用し、家族で乗り切ることが必要となります。
近年は、制度の改正によって男性も育休を取得しやすくなってきています。育休の制度について正しく理解し、安心して新しい家族を迎えられるよう準備を進めましょう。
育休とは、子どもを育てるための休業制度のことです。正式名称を「育児休業」と言い、育児・介護休業法によって定められています。
原則として、1歳未満の子どもを育てている労働者(給与所得者)が対象です。本人が会社に申し出ることで、子どもを育てる期間中に仕事を休むことができます。
産休(産前産後休業)は出産する女性のみが対象となりますが、育休(育児休業)は子どもを育てている人なら、性別に関係なく取得することができます。
育休は、雇用形態や性別にかかわらず取得できる制度ですが、以下の3つの条件を満たす必要があります。
①同一の事業主に、引き続き1年以上雇用されていること
②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用が見込まれること
③「子どもの2歳の誕生日の前々日までに労働契約の期間が満了しており、かつ契約が更新されないこと」が明らかでないこと
わかりやすく言うと、雇用期間が1年未満だったり、契約社員や派遣社員などで1年以内に雇用関係が終了する見込みだったりする場合には、育休が取得できない場合があるということなのです。
自分が育休の対象者にあたるかどうかは、念のため会社にも確認をしておきましょう。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
育児休業は、育児・介護休業法によって定められた労働者の権利です。
一方、育児休暇は企業にとってはあくまでも努力義務とされるもので、各企業が独自にもうけている制度です。
育児休暇の内容は育児休業とは違い、企業や事業主の判断にまかされているため、期間中の有給・無給や対象者の範囲、取得条件などのルールは、企業によって異なります。
育休(育児休業)を取得できる期間は、基本的に「子どもが1歳になるまでの間で、労働者が申し出た期間」です。
具体的には、ママの場合は産後8週間の産休(産後休業)が終わった翌日から子どもが1歳になる誕生日の前日までで、パパの場合は子どもが生まれた日から1歳の誕生日の前日まで、がそれぞれ取得可能な期間です。
育休は、この期間内なら1回にまとめて取得してもいいですし、2回に分けて取得することもできます。ただし2回に分ける場合は、1回目と2回目の休業時にその都度申請をする必要があります。
また、1歳になっても子どもを預ける保育所が見つからない場合や、配偶者の死亡・ケガ・病気などの理由がある場合は、子どもが1歳6ヶ月になるまで育休の取得期間を延長することができます。それでも事情が解決しないときには、子どもが2歳になるまで再延長も可能です。
「パパ・ママ育休プラス」とは、両親ともに育休を取得する場合の特例で、パパの育休取得を促進し、夫婦で協力しあって育児をする目的で2010年に設置された制度です。これを利用すると、通常子どもが1歳になるまでの育休が、1歳2ヶ月になるまで延長して取得できます。
パパ・ママ育休プラスの申請条件は、以下の通りです。
①夫婦ともに育休を取得すること
②配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育休を取得していること
③子どもの1歳の誕生日前に育休開始予定日を設定していること
④パパ・ママ育休プラス取得者の育休開始予定日が、配偶者の取得する育休開始の初日以降であること
※条件にある「配偶者」とは、法律上の夫婦だけでなく事実婚のカップルにも適用されます。
ただし、育休が取得できる期間は、パパ・ママ育休プラスを利用しても最長1年間であることは変わりません。(ママの場合は、産後8週間の産休も含めた1年間。)つまり、1年間取れる育休を、子どもが1歳2ヶ月になるまでの間に振り分けて取得できる、というイメージです。育休の取得日数が増えるわけではありませんが、育休の取得可能な期間は1歳2ヶ月まで延びるというわけです。
パパ・ママ育休プラスを利用すれば、夫婦間で柔軟に育休の取得時期を調整することができるので、下記にいくつか例をあげてみました。
例1)ママの職場復帰に合わせて、入れ替わりで育休を取得する
子どもが1歳の誕生日を迎える前日までママが育休を取得し、復職するタイミングでパパがパパ・ママ育休プラスを2ヶ月取得。これにより、子どもが生まれてから1歳2ヶ月になるまで、夫婦どちらかが育休を取得して子育てができます。
例2)ママとパパが一時期だけ重複するように少しずらして育休を取得する
たとえば、ママの育休が終了する前に2人同時に育休の時期を取れば、ママからパパへ育児の引き継ぎの時期が持てます。
例3)ママとパパともに同時期に育休を取得する期間がある
産後間もなくなど、同時期に2人が育休を取得して育児をすることで、育児の大変な時期に夫婦で協力して子育てをすることができます。
育休の特例の1つで通常の育休とは別に、子どもが生まれてから8週間の間に4週間まで休業を取得することができる制度です。正式には「出生児育児休業」といい、2022年10月1日より施行されています。
パパの育休取得促進のため、育児が大変な出産直後の時期に2回まで分割して取得できるので、まとめて育休が取れないパパが、小分けにして休みを取ることができます。また、条件はありますが、休業中の就業もできるなど、柔軟で取得しやすく設定されています。
ただし、産後パパ育休も通常の育休と同様の条件を満たしていることが必要です。申請は、産後パパ育休を開始する2週間前までに行い、分割して取得する場合は事前の申請が必要です。
育児・介護休業法で定められている育休を取得すると、給料が無給または減給になるため、取得中の人に対してさまざまな経済的支援があります。
この章では、育休中にどのようなお金が受け取れるのか、などの経済的支援について紹介します。
雇用保険の被保険者が育休を取得している期間中、国から給付金が支給される制度です。
育休開始から180日は賃金の67%、181日以降は賃金の50%を目安に受け取ることができます。詳しくは関連記事を参照して確認しましょう。
健康保険や厚生年金の加入者が育休を取った場合、本人が負担する社会保険料は育休中には免除されます。
なお、保険料を支払わなくていい期間でも、育休前の給与水準に応じた給付は保障されます。
育休終了後、時短勤務になるなどで出産前よりも給与が少なくなることもあるものです。ただ、社会保険料は出産前の標準報酬月額をもとに計算されるため、給与に対して社会保険料の占める割合が高くなることがあります。
そのような場合には、保険の加入者本人からの申し出によって、育休からの復帰後3ヶ月間の給与の平均をもとに4ヶ月目からの標準報酬月額を改定でき、社会保険料の負担額が下がる制度があります。
なお、フリーランスの場合は、雇用保険ではないため育児休業給付金は対象外となりますが、出産した女性の国民年金保険料は免除となります。免除されるのは、「出産予定日または出産日の含まれる月の前月から4ヶ月間」とされています。
また、厚生労働省は2022年11月に、出産した女性の国民健康保険料についても出産前後の4ヶ月間免除する方針で、2024年1月からの実施を予定していると発表しています。
ママパパになるまえに知る「育児・保活・ライフプラン」
育休の申請は、休業開始の1ヶ月前までに行う必要があります。ママが産前産後休業に続けて育休を取得したい場合には、産休に入る前または産前休業中に申請することが必要です。
提出する書類や申請の方法は会社ごとに異なるので、早めに人事部など担当部署に問い合わせをして、自分の会社の申請の流れなどを確認しておきましょう。
なお、すでに育休中の人が1歳6ヶ月までの育休延長を希望する場合は、子どもが1歳の誕生日を迎える2週間前までに、2歳までの延長希望の場合は2歳の誕生日の2週間前までに、それぞれ申請しなければなりません。
育児休業給付金を受け取るためには、以下のような流れで申請します。
①申請者が会社の管轄部署(総務、人事部など)に育休の取得を希望すると伝える
②申請者が必要な書類に記入を行い、上記の書類を添付して会社に提出する
③支給決定通知書および次回支給申請書が自宅に届き、育児休業給付金の給付が開始される
④育児休業給付金を受け取る期間中、2ヶ月ごとに支給申請書の提出を行う
育児休業給付金について詳しくは、関連記事で確認しましょう。
働いている人が利用できる制度には、「産休」もあります。育休は男女どちらも取得できますが、産休は企業に勤める出産後の女性が取得対象です。
対象者のほか、期間や取得条件、申請方法など細かい違いがありますので、詳しくは関連記事で確認しておきましょう。
育休は、企業で働く男女がともに子育てのために取ることができる制度です。育休を利用して、赤ちゃんにもっとも手がかかる1歳の誕生日までの時期を夫婦で乗り越えていけるよう、忘れずに申請をしましょう。
育休は夫婦が同時に取ることもできますし、ずらして取ることもできます。そこで、自分たちはどのように分担して育休を取得するか、夫婦でよく話し合いながら計画を立てておきたいですね。そのためには、育休の制度に関する情報をキャッチアップして、安心して育児しながら働き続けることのできる環境づくりをしましょう。
はじめての育休復帰と今からできる準備