出産育児一時金はいくらもらえる? 申請についても詳しく解説!

これから妊娠・出産を迎えるママ・パパに、ぜひ知っておいてほしい制度が「出産育児一時金」です。これは、高額になってしまう出産費用をカバーして、自己負担額を減らすことができる給付金です。

日本で健康保険に入っている人なら、働き方に関係なく誰でも受け取ることのできる「出産育児一時金」ただし、受け取るためには申請が必要で、自ら申請しないと受け取ることができません。そこで確実に給付を受けられるよう、出産育児一時金の概要や申請のポイントについて解説します。

出産育児一時金とは?

出産育児一時金とは、健康保険から被保険者または被扶養者へ、出産費用として一定の金額が支給される制度です。 

出産は、基本的には病気やケガではないため、健康保険の適用対象外となり、分娩費用や出産に伴う入院費などは全額自己負担になります。

出産にかかる費用は医療機関や分娩の状況などによって違ってきますが、厚生労働省が発表している「出産育児一時金について」によると、2021(令和3)年度の出産費用は以下の通りです。

2021年(令和3年)度の分娩費用

参考:厚生労働省「出産一時金について」

出産育児一時金ではいくら受け取ることができる?

出産育児一時金の支給額は、原則として子ども1人あたり50万円、双子などの多胎児を出産した場合には、50万円×子どもの人数分が支給されます。(2022年3月31日までの出産の場合は、42万円)

 

ただし、産科医療補償制度※未加入の医療機関などで出産した場合は、子ども1人あたり48.8万円となります。(2022年3月31日までの出産の場合は、40.8万円)

 

産科医療補償制度とは

分娩に関連して重度の脳性まひを発症した子どもと、その家族の経済的負担を補償し、原因を分析して同様の事例が起きないよう情報を提供することを目的とした制度で、分娩を取り扱う医療機関が加入します。この制度に加入している医療機関については、公益財団法人日本医療機能評価機構のホームページで確認できます。

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出産育児一時金の支給対象は?

出産育児一時金の支給対象となるのは、妊娠4ヶ月(85日)以降に出産をした健康保険加入者、配偶者の健康保険の被扶養者、国民健康保険加入者です。

妊娠4ヶ月以降であれば、早産や死産、流産、人工妊娠中絶(経済的理由によるものも含む)などの場合も支給対象となります。また、支給は分娩の種類に関係なく、自然分娩でも帝王切開による分娩でも受け取ることができます。

さらに、退職してから出産した場合でも、次のような条件をすべて満たしていれば、在職時の健康保険に申請することが可能です。

 

退職後に会社の健康保険から出産育児一時金の給付が可能な条件

①妊娠4ヶ月(85日)以降の出産であること

②健康保険の資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間(任意継続※被保険者期間は除く)があること

③健康保険の資格喪失後(退職日の翌日)から6ヶ月以内の出産であること

※任意継続:退職などで健康保険の被保険者の資格を失ったときに、一定条件のもとに個人の希望で継続して健康保険に加入できる制度。加入期間は退職日の翌日から2年間。

ただし、出産時に配偶者が加入している健康保険の被扶養者となっている場合には、自分が在職中に加入していた健康保険または配偶者の健康保険の、どちらか一方に申請をします。

また、健康保険の資格喪失後の給付については、被保険者の出産が対象となるので、被扶養者の家族の出産は対象外となります。次の具体例を参考に確認してみましょう。

【例1】出産する際に、ママが勤めていて退職した会社から出産育児一時金を受け取る

→上記の3つの条件を満たしていれば〇

【例2】出産する際に、パパが勤めていて退職した会社から出産育児一時金を受け取る

→ママは被保険者ではないので×

なお、会社を辞めたあとで国民健康保険に加入し、上記3つの条件を満たしている場合、退職した会社の健康保険または国民健康保険のどちらか一方への申請となります。国民健康保険への手続きは、自治体の窓口で行います。

出産育児一時金の申請方法は?

出産育児一時金を申請するにはおもに3つの方法があり、申請方法は少しずつ違います。

 

直接支払制度を利用する

出産する医療機関が健康保険に出産育児一時金の申請を行い、健康保険から医療機関に出産育児一時金が直接支払われる制度です。

自分で出産育児一時金の申請をする必要がないうえ、出産費用が出産育児一時金の支給額を超えていなければ、窓口負担をゼロにすることができます。申請の流れは下記の通りです。

①出産する前に保険証を提示して医療機関へ直接支払制度を利用したいと申し出る

②出産したのちに医療機関から被保険者(もしくは被扶養者)へ明細書が発行される

③医療機関から健康保険に対して請求が行われる

④健康保険から医療機関に対して支払いが行われる

⑤出産費用と出産育児一時金に差額がある場合は、精算および請求が必要

 

例1)出産費用が45万円の場合
→差額の5万円分は健康保険へ申請をすると後日受け取れる

例2)出産費用が55万円の場合
→差額の5万円は退院時に自分で病院に支払う

 

受取代理制度を利用する

被保険者(もしくは被扶養者)が出産前に事前申請を行い、出産後の出産育児一時金の受け取りなどは医療機関が行う制度です。

小規模な病院の事務負担などが軽減され、被保険者(もしくは被扶養者)は直接支払制度と同じく出産費用を立て替える必要がありません。申請の流れは下記の通りです。

①出産する前に受取代理申請書を作成する(医師の証明が必要)

②健康保険窓口で申請を行う(出産予定日の2ヶ月前から申請可能)

③健康保険から医療機関に対して、受取代理申請書受付通知書が送付される

④出産後、医療機関から健康保険に費用請求・報告書などが送付される

⑤健康保険から医療機関に対して支払いが行われる

⑥出産費用と出産育児一時金に差額がある場合は、精算が必要となる

 

【例1】出産費用が45万円の場合
→ 差額の5万円分は健康保険から給付される

【例2】出産費用が55万円の場合
→差額の5万円は退院時に自分で病院に支払う

 

制度を利用せず自分で申請を行う

直接支払制度や受取代理制度を導入していない医療機関での出産や、海外での出産の場合などには、健康保険に直接申請を行えます。

出産する本人が会社員なら、申し出により企業が代理で手続きもできますが、この方法だと医療機関に出産費用の全額をいったん立て替えて支払う必要があります。 

 

直接申請をする場合の主な流れは下記の通りです。

①「直接支払制度や受取代理制度を利用しない」という代理契約の文書を作成し、医療機関と被保険者等がそれぞれ保管する

②出産後に退院するとき、被保険者等が医療機関に出産費用を全額支払う

③領収書や明細書、代理契約書の写しなどの必要書類を添えて、被保険者などが健康保険の窓口に申請する

出産育児一時金と出産費用の差額を受け取る方法は?

実際の出産費用が出産育児一時金より下回った場合、被保険者(もしくは被扶養者)はその差額を受け取ることができます。ただ、出産費用の支払い方法や申請先などによって、申請方法や一時金の振り込み時期が多少違ってきます。ただし、ほとんどの場合は、出産費用の方が高くなるケースです。

 

直接支払制度を利用した場合

出産後に出産費用が確定した後に、被保険者(もしくは被扶養者)が申請をします。申請期限は出産の翌日から2年以内なので、この期間内に忘れずに申請することが大切です。直接支払い制度を利用して差額を受け取る場合、 申請先や申請のタイミングなどによって提出書類などが違うため、申請する場合は申請先や方法を把握しておきましょう。 

①申請先が健康保険組合

直接支払方法を利用し、出産後に健康保険から出産育児一時金が医療機関へ支払われると「支払決定通知書」が届きます。申請は、この通知書が届く前か後かで、以下のような違いがあります。

1) 「支払決定通知書」が届いてから申請する

「使用する申請用紙」

差額申請書

「必要な添付書類」

不要

通知書が届くまでに2ヶ月程度かかり、それから差額申請書を提出します。そのため、差額の振り込みは出産2ヶ月後くらいになりますが、申請は差額申告書の提出のみで添付書類は不要です。

2)「支払決定通知書」が届く前に申請する

「使用する申請用紙」

内払金支払依頼書

「必要な添付書類」

以下の書類

・直接支払制度に係る代理契約に関する文書の写し

・出産費用の領収、明細書の写し

・申請書の証明欄に医師、助産師または市区町村長の出産に関する証明

(出産費用の領収・明細書に「出産年月日」および「出産児数」が記載されている場合は不要)

 

内払金支払依頼書は、健康保険のホームページでダウンロードできます。振り込みは、申請書が到着して約10日後が目安となるので、通知書が届いてから申請するより早めに差額を受け取れます。

②申請先が国民健康保険

国民健康保険の場合は、医療機関へ支払いが行われても支払決定通知書は届きませんが、差額の請求は退院後にすぐにできます。申請手続きは、健康保険証を発行した市区町村の窓口で行います。

・必要な書類:

・健康保険証

・出産費用の領収書・明細書(産科医療補償制度対象の出産であることの証明印が押されたもの)

・直接支払制度を利用する旨の合意文書

・預金通帳(国民健康保険の世帯主名義)

上記のほか、母子健康手帳や身分証明書、印鑑など、必要なものは自治体によって多少違うので、申請前に必ず確認してから窓口に行きましょう。

 

受取代理制度を利用した場合

事前に自分で申請を行っているため、出産後は特に申請しなくても差額分が指定口座に振り込まれます。 

出産育児一時金と出産手当金の違い 

出産育児一時金と混同しやすい制度に、「出産手当金」があります。どちらも健康保険から給付されるので違いがわかりにくい、という声もありますが、大きな違いは目的です。出産育児一時金は出産にかかる費用の負担を軽減するための制度なのに対し、出産手当金は出産による休業で無給あるいは給与が減額になる期間の生活保障のための制度です。

 

対象者や金額、申請先なども違うので、下記の表や「出産手当金」記事(リンク入る)で確認しておきましょう。なお、出産育児一時金も出産手当金も、対象者の条件に当てはまっていれば両方受け取ることができます。

出産育児一時金と出産手当金の違い

 ※参考:出産育児一時金とは?どこから支給される?3つの申請方法をわかりやすく解説

出産育児一時金のまとめ

高機能自閉症についてまとめ

出産は、普通分娩の場合は病気やケカに分類されず健康保険が適用されませんし、帝王切開分娩などで保険適用になった場合も含めて、高額な費用がかかります。そんな出産費用を助成するための制度が、「出産育児一時金」です。

現在の制度ができた1994年当初の支給額は300,000円でしたが、出産費用の全国平均は増加傾向 にあるため何度か見直されて、2022年12月現在では420,000円となっています。

2023年度にはさらに500,000円まで増額になる予定ですが、詳しい適用開始日などはまだ発表されていません。安心して出産・子育てができるように、出産育児一時金の今後に注視するとともに、出産の費用に関する情報を収集して、備えておきましょう。

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