2022.12.23
現在、妊娠中の人だけでなく、今後の妊娠・出産を考えている働く女性たちにとっても、とても大切な制度が「産休・育休」です。最近は、男性が育休を取得するケースも増えてきているので、産休や育休は誰もが知っておきたい情報の一つでしょう。
ただ、「産休」「育休」という言葉は知っていても、具体的な制度の内容、いつから取得できるのか、産休と育休の違いなどはあまり知られていないということも多いでしょう。そこで今回は、産休・育休の基本情報についてご紹介します。
編集・監修
関川 香織
2012年よりフリーランスのライター・編集。前職の主婦の友社では妊婦雑誌、育児雑誌、育児書、育児グッズ通販誌の編集に携わり、これまでに手がけた書籍・雑誌は500冊以上。現在は「LITALICO発達ナビ」などのWEB記事制作や編集にも携わる。公私ともに、約30年にわたって日本の育児・妊娠・出産の情報発信をしている。
「産休」は、出産前の準備や出産後の回復のために法律で定められている休業制度です。一般には「産休」と呼ばれていますが、出産前の準備のための「産前休業」と、出産後の身体の回復のための「産後休業」の2種類があります。
妊娠・出産による身体の回復が目的の休業のため、対象者は出産前後の女性(ママ)です。
「産前休業」は、出産予定日6週間前(妊娠34週)から取得可能ですが、双子など多胎児の場合は体への負担が大きいため出産予定日14週間前(妊娠26週)から取得することができます。
「産後休業」は、出産翌日から原則8週間です。この期間は母体の安全のため、事業主は出産後の女性を働かせてはいけないと法律で定められています。ただし、出産した女性が請求して医師が認めた場合に限り、出産6週間後から仕事に復帰することが可能です。
産休は、就業期間や雇用形態に関係なく、企業に勤める妊娠中の女性なら誰でも取得できます。
産休を取得するためには事前の申請が必要です。産前休業の取得は出産予定日の6週間前から可能なので、体調の異変や業務担当の変更などに備えて余裕を持って申請しておくといいでしょう。産休申請の流れやフォーマットは企業により異なるため、事前に社内で相談・確認をしておくことが大切です。
公務員の場合、産前休業が8週間(妊娠32週)から取得できるなど、民間企業とは条件が異なります。
ママパパになるまえに知る「育児・保活・ライフプラン」
育休は正式名称を「育児休業」と言い、子どもを育てるための休業制度で育児・介護休業法によって定められています。
出産後の女性(ママ)だけでなく、配偶者(パパ)も取得することができます。
女性(ママ)の場合、産後休業が終わってから子どもが1歳になる誕生日の前日まで取得することができます。配偶者(パパ)男性の場合は、子どもが生まれた日から1歳の誕生日の前日まで取得可能です。
なお、子どもが1歳になっても保育園が見つからないときや、配偶者の死亡・ケガ・病気などの理由がある場合は、1歳6ヶ月になるまで延長することができます。事情によっては、子どもが2歳になるまで再延長することも可能です。
雇用形態に関わらず男女ともに取得できる制度ですが、取得のためには以下3つの条件を満たす必要があります。
①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
②子どもの1歳の誕生日以降も、引き続き雇用されることが見込まれること
③「子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ契約が更新されないこと」が明らかでないこと
育児休暇の取得を考えている人は、育休対象者にあたるかどうか社内でも確認をしておきましょう。
育休を取得するためには、必ず休業開始予定日の1ヶ月前までに企業へ申請する必要があります。女性の場合、産後休業から続けて育休に入る場合が多いので、産前休業前もしくは産前休業中の申請が必要です。
なお、休業期間を1年6ヶ月もしくは2年に延長したい場合、子どもが1歳を迎えていたら休業期間の終了日2週間前まで、1歳未満は1ヶ月前までの申請が必要です。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
産休と育休は以下のような違いがあります。取得を考えている人は、事前にしっかり確認しておきましょう。
法律で定められた「育児休業」とは別に、企業により独自の制度として「育児休暇」を設けている場合もあります。申請のルールについても企業によるため、取得を考えている人は必ず担当部署などに相談してください。
労働基準法では、産休中は原則として企業に賃金の支払い義務はないとしています。そこで、産休を取ったことで収入が減ってしまう女性のために設けられたのが、公的医療保険による出産手当金という制度です。
産休期間中に標準報酬日額の2/3にあたる金額が受け取れます。標準報酬日額とは、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した金額をいいます。ただし、出産手当金を受けるには以下の条件を満たす必要があります。
①勤務先の健康保険に1年以上継続して加入していること
②産休期間中に給与が支払われないこと
③妊娠4ヶ月(85日)以降の出産であること
注:産休期間中に出産手当金より高額な給与が支払われる場合は対象外です。
産休の取得は誰でも可能ですが、出産手当金は、配偶者(パパ)側の会社の健康保険に加入しているパート勤務や、国民健康保険に加入しているアルバイト勤務、雇用期間が1年未満といった人は受け取れません。
公的医療保険による制度で、健康保険加入者または配偶者の健康保険の被扶養者、および国民健康保険加入者が対象です。
支給は、妊娠4ヶ月(妊娠日齢85日)以上の人が出産したとき子ども1人につき42万円で、双子など多胎児を出産した場合は子どもの人数分が支給されます。
出産一時金の申請は加入している健康保険によって違ってくるので、勤務先や住民票のある各自治体に問い合わせて行います。また、医療機関に直接申し込む「直接支払制度※」もあり、この制度を利用する人も多いようです。
※直接支払制度:分娩費用を、健康保険組合が出産一時金から医療機関に直接支払う制度のこと。分娩する医療機関で手続きができ、出産費用の全額を用意しなくてすむのが大きな利点です。
妊娠・出産にかかる医療費は、自己負担の部分もあります。妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、切迫早産、帝王切開などにより何らかの医療行為が必要になった場合には、健康保険が適用されて医療費は3割負担になります。
ただ、3割負担でも医療費が高額になる場合には、自己負担限度額を超えた分が戻ってくる「高額医療費」の助成を受けることができます。さらに、事前に高額医療費がかかることがわかっている場合は、加入している医療保険に申請して「限度額適用認定書」をもらっておけば、病院の窓口で支払う金額を限度額内にすることができます。
育休中も、育児休業給付金や社会保険料免除などの経済的支援によって、金銭的なサポートを受けることができます。
育休取得開始月から6ヶ月目まで月給の67%、7ヶ月から12ヶ月まで月給の50%が雇用保険から支給されます。給付を受けるには雇用保険に1年以上加入していること、育児休業後も同じ会社で勤続する意思があることなど、いくつかの条件があります。
産休・育休期間中は、健康保険や厚生年金保険の保険料(自己負担分・会社負担分)が免除されます。これは、個人事業主やフリーランスとして働く女性(ママ)も対象です。免除のためには申請が必要です。
このように、妊娠・出産時には国や自治体、企業などからのさまざまな経済的サポートがありますが、どれも自分から申請しないと受け取ることができません。さらに、申請が1日でも期日を過ぎてしまうと、受給が難しくなります。申請をし忘れないように、妊娠が分かった時点で早めに勤務先などに相談・確認し、スムーズにサポートが受けられるように準備しておくことが大切です。
夫婦で考える育休制度ー手当・期間・ライフプランー
産休と育休の休業期間、給付金対象期間は以下の通りです。休業や給付金は働く人の権利ですが、申請しないと受け取ることができません。どういうものがあるかだけでも知っておき、損をしないようにしましょう。
働いている人が妊娠・出産する際に取得できる休業制度が、産休・育休です。産休のうち、産前休業は子どもを迎える準備のため、産後休業は女性(ママ)の身体を回復するための制度で、育児休業は女性(ママ)も配偶者の男性(パパ)も含めて子どもを加えた新しい家族で新生活をスタートさせるための休業制度です。
こうした産休と育休の違いを理解し、自分自身やパートナーがいつからいつまで産休・育休を取得できるのか、金銭的な支援はどれくらい受けられるのか、などについて事前に知っておけば、安心して産休・育休をとり、働き続けることことができますね。また、産休・育休は、これから妊娠・出産を考えているカップルにもぜひ知っておいてほしい制度です。