子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)って?診断基準や特徴、その対応方法とは

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、「コミュニケーションがうまく取れない」「人との関わりが苦手」「こだわりがある」といった特性のある障害です。かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」「高機能自閉症」と呼ばれていた子どもたちも含まれます。

「子どもの発達に気になるところがある」、「自閉症かもしれない」と感じている親御さんに向けて、その診断基準や特徴、特に幼児期~小学校入学前の子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)にはどのような行動や困りごとがあるのか、またその対応方法を解説します。

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監修

井上 雅彦

鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上自閉症のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。株式会社LITALICO社外取締役。

子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)とは

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は、「対人関係や社会的なやりとりの障害」「こだわり行動」という2つの基本特性があります。

対人関係や社会的なやりとりの障害とは

人との関わりが苦手で、場の空気を読みとり、比喩や皮肉、相手の気持ちや暗黙のルールを理解することとなどの難しさ、言われたことを表面的に受け取ってしまうなど、社会的な場面での困難さが持続することを指します。

こだわり行動とは

物の配置、物事の順番、勝敗、自分のやり方への強い固執、興味や関心の極端な偏りなどを指します。こだわりの程度や種類はひとり一人異なります。

 

そのほかにも、手先が不器用、感覚刺激に過敏・鈍いなどの特性が見られることもあります。

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は脳の障害

この障害は、生まれつきの脳の機能になんらかの不具合があるために起こるものと言われており、親のしつけや育て方、本人の性格とは無関係であることが分かっています。

脳の機能の不具合によって起こる障害であるため完全に治るということはなく、対人関係や社会性の困難に対する配慮、本人の特性にあった環境調整や療育・教育によって、症状の改善や発達の促進が期待できます。程度の差はあるものの、さまざまな形で特性は表れます。そのため、子どもの個性の1つと捉えて、成長の過程に合わせて特性にあった適切なサポートを周囲が行うことが大切です。

『DSM-5』より「自閉症スペクトラム障害」に統合

発達障害の診断基準に使われている『DSM-5』では、それまで自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害など診断名が分かれていたものが、『DSM-5』以降は境界なく連続したものと捉えられるようになり、「自閉症スペクトラム障害」が初めて診断名として採用されることになりました。

そのため、現在では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という診断がされることが多くなってきています。

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自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準、診断方法

子どもが自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)かもしれない、と思ったらどのように診断を受けるのでしょうか。ここでは診断基準や診断がどのように行われるのかを解説します。

診断基準

発達障害の診断基準には、2013年に公開された、アメリカ精神医学会が作成する、精神疾患の診断・統計マニュアル『DSM-5』や世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)という世界保健機構(WHO)が作成するの病気の分類が使われています。

また、2017年に新たに提出された『ICD-11』では、『DSM-5』とほぼ同じ診断基準になる見通しで、日本では数年以内に適用予定です(2020年現在)。

子どもの特性によると考えられる、さまざまな行動や言動について問診や行動観察を行います。その上で、「コミュニケーション上の難しさが、生活に影響を及ぼしている」「2つ以上のこだわり行動がある」といった診断基準に照らし合わせて診断を行います。

診察・診断方法

子どもの発達の遅れや気になる行動が見られたら保健所や発達障害者支援センターなど、必ず第三者へ相談しましょう。特に、子どもに知的な発達の遅れや言葉の遅れなどが見られない場合の診断は難しくなるため、発達外来など専門医療機関に相談することがおすすめです。なお医療機関では、問診や行動観察から、診断を受けることができます。

■問診・行動観察

親子で医師からの質問に答えます。生まれてから現在までの特性による気になる行動や、1歳半健診・3歳児検診の様子や結果などの聞き取りや、問診中の様子や遊んでいるときの様子などを観察します。

■発達検査

心理検査など、子どもの心身の状態を把握するための検査を受けます。発達の特性がどのようなものか、どのような困難さがあるかなどを確認します。

■相談先・医療機関の探し方

日本小児神経学会のHPなどから、医療機関を探すことができます。各自治体の相談窓口や発達障害者支援センターへ相談にいくと地域の医療機関の情報などを知ることができます。

・発達障害診療医師名簿|一般社団法人日本小児神経学会
公式HPはこちら

・発達障害者支援センター
公式HPはこちら

子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の行動特徴

子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)のサインや特徴的な行動について、特に発達特性が表れやすいと言われている1歳、2歳、3歳、就学前と年齢別に解説します。ただしそれぞれの年齢段階での行動特徴には個人差もあります。

年齢別の行動例やサイン

■生後~1歳

生後すぐに特性は表れません。しかし、ところどころ気になるサインや行動が表れることもあります。

・抱っこをいやがる
・あまり泣かない・あやしても笑わない
・ミルクを飲まない・偏食ぎみ
・寝つきが悪い・すぐ目を覚ます など

■2歳~3歳

発達障害の特性は2~3歳ごろから「ほかの子と少しちがうかな?」と気になりはじめることが多いようです。

・発語や言葉が遅い
・名前を呼んでも反応しない
・人と視線をあわせようとしない
・ひとり遊びを好む
・一緒に見てほしいものを指し示すことが難しい
・触られることを嫌がる・感覚刺激に敏感 など

また、このころに3歳児検診などで発達の遅れに気づき、専門医に相談をすすめられることもあります。

■小学校入学前(4~6歳)

幼稚園や保育園で集団行動を取ることが増えたり、家族以外の人と関わることが増えることで、それまで気づかなかった行動やサインに気づくことがあります。

・特定の順番で活動することや道順やものの位置などにこだわる
・集団行動をするのが苦手
・同年齢の友達とうまく遊ぶことができない(自分勝手な行動をとったり、状況を読むことができないなど)
・同じ遊びを繰り返す
・ごっこ遊びが苦手 など

走り方がぎこちないなど、運動が苦手な場合も

年齢に限らず、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの中には、不器用でからだを動かすことが不得意な子もいます。手と足を交互に動かせず、走り方がぎこちなくなったり、自分のからだの大きさや感覚を掴むことができず、全身運動がうまくできないことも少なくありません。

またスポーツにおいては、ルールを理解する必要もあるため、さらに困難を抱えるケースもあります。

しかし、発達の段階は子どもによって個人差があります。気になる行動が目立つようになる時期やその表れ方もそれぞれ違うため、自己判断せず、第三者に相談するようにしましょう。

起こりやすい困りごとへの対応方法

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもはどんな困りごとが起こりやすいのか、その対応方法とあわせて解説します。

言葉での説明が伝わりづらい

抽象的な言葉や言い回しの理解が難しく、注意の切り替えができなかったり、複数のことを同時にすることが苦手な場合、例えば「手を洗ってから、おやつを食べる」といった、2つのことを一度に伝えようとすると、言葉を聞き逃してしまいます

■対応方法

・短い文章で、1つずつ伝える
・注意をひいてから伝える
・具体的な言葉で伝える
・視覚的に伝える など

時間を守ることが苦手

時間など目に見えない概念を理解することが不得意なので、予定がいつ始まって、いつ終わるのかが分からないことで不安を感じることがあります。

■対応方法

・いつ、なにをするか作業の見通しを伝える
・時計のイラストつきの予定表・タイマーなど、視覚的に伝える など

相手の気持ちや表情・身振り手振りが分からない

表情や身振り手振り、視線などから、相手の状況を読むことや気持ちを理解することが不得意です。結果的に友だちを意図せず傷つけたり、集団行動を乱してしまうことがあります。

■対応方法

・表情だけではなく、言葉や動作なども交えて伝える
・あれ・それなど、代名詞は避ける
・ルールや指示は分かりやすく伝える など

光や音、温度、匂いなどに過敏に反応する(感覚過敏)

感覚過敏のある子どもは、音や温度、匂い、光など、感覚刺激に敏感に反応します。過敏な感覚がパニックやかんしゃくを引き起こす原因になることもあります。いっぽう、痛みなどには鈍感な子どももいます。

■対応方法

・装飾のない静かな環境を用意する
・音や光など、感覚刺激の原因になるものを少なくする
・騒がしい場所ではイヤマフや耳栓、フードをかぶる など

そのほかにも、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもは、さまざまな場面で困り事を抱えて不安を感じやすく、自己肯定感が育まれにくいといえます。

 

「1つのことに集中して取り組むことができる」「行動力がある」など、特性を子どもの個性ととらえることや、親や周囲の人が特性を理解し、ほめる機会を増やし、自信を感じやすい接し方をすることで達成感や安心感を得ることができます。

まとめ

子どもの自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は、「コミュニケーションがうまく取れない」「人との関わりが苦手」「こだわりがある」といった発達の特性が見られますが、明確な境界線がなく、診断も簡単ではない障害です。

発達の遅れや気になる行動が見られたり、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)かもと思ったら、適切なサポートや支援を受けるようにしましょう。診断を受けることで子どもの特性を正しく理解し、接することで、二次障害を防ぐことにもつながります。

そして、発達障害は先天的な脳の障害です。親のしつけや子育てによるものではありません。親御さま自身も「自分が悪いのでは」と抱え込まず、周囲の力をうまく借りながら、子どもの長所に目を向けていくようにしましょう。

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