中学生の自閉症スペクトラム障害って?男子・女子の特徴と反抗期の接し方

自閉症スペクトラム障害の基本特性の一つに、「対人関係や社会的なやりとりの障害」があります。中学生になると、同世代のコミュニケーションはより複雑になっていきます。思春期・反抗期を迎え、接し方に悩むご家庭も少なくありません。

この記事では、自閉症スペクトラム障害の中学生特有の症状や、男子・女子ごとの特徴、家庭での接し方についてご紹介します。

監修

井上 雅彦

鳥取大学医学系研究科臨床心理学講座教授。応用行動分析学が専門。30年以上自閉症のある子どもや家族の相談、療育・家族支援プログラムの開発に携わる。株式会社LITALICO社外取締役。

自閉症スペクトラム障害のある中学生に表れる、思春期特有の症状とは

そもそも思春期とは?

思春期とは、心と体が大人に変化しようとしている時期をいいます。一般的には10歳前後から17,18歳頃までを指します。思春期は自分の能力に限界を感じたり、人や異性を意識するなどの特有の悩みが表れやすい時期です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもの場合は、「対人関係や社会的なやりとりの障害」「こだわり行動」といった基本特性によって、会話や周囲への気配りが苦手なことがあります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の中学生に表れやすい症状の例としては以下があります。

人との違いを気にして自信を持ちにくい

思春期は自分を人と比べる時期です。自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子は、人と違う自分のことを不完全に感じ、劣等感を抱いてしまうことがあります。
短所も長所も個性の一部ととらえられるように促し、良いところをたくさん褒めることが大切です。

友人関係の難しさ

マイペースであったり、会話が苦手なことから、友だち付き合いがうまくいかないことがあります。小学生低学年頃までは本人は気にしないケースもありますが、思春期を迎えると周囲がそのことを異質ととらえた対応をすることもあります。
もし本人が一人のほうが気楽であれば、無理に人付き合いしようとせず、自分らしい時間を大切にするのも一つです。

勉強の遅れ

得意教科・不得意教科がある場合、際立ちやすい時期です。好きな教科しか勉強したがらなかったり、先生との人間関係が教科の苦手意識に結びつくこともあります。苦手意識が根付くと、自己評価が大きく下がる可能性があります。勉強の遅れは地道に取り戻そうとするのではなく、本人の特性に合わせた勉強方法の工夫や、マンガや動画といった興味が持てる方法で学んだり、得意教科をより伸ばすことで、自信に繋がることがあります。

マナーやTPOの難しさ

人前で着替えない、などの場面に合わせたマナーの理解が難しいことがあります。また服装や身だしなみについても、こだわりや自身のルールを優先するあまり、小さい頃のお気に入りの服をそのまま着たり、真冬でも半袖を着ることがあります。
小学生まではそこまで気にされなかったことでも、中学生になると周囲に違和感を抱かせてしまうかもしれません。人前でしてはいけないこと、TPOに合った服装など、図や約束ごとにして、分かりやすく伝えることが重要です。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の医学的な診断基準や行動特徴については、以下の記事に詳細があります。

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自閉症スペクトラム障害(ASD)のある思春期・反抗期の中学生への接し方

思春期・反抗期で不安定な自閉症スペクトラム障害(ASD)の中学生の子どもには、どのような接し方が良いのでしょうか。家庭での接し方のコツについてご紹介します。

「中学生なんだから」と急に厳しくしない

親や学校に限らず、中学生になると、周囲からの見られ方が変わります。小学生の頃は大目に見られたことが厳しく注意されるようになる、などです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもからすると、突然なルール変更に感じ戸惑うかもしれません。
「自分でできるようになりたい」「大人になりたい」自立心の芽生えと、「自分はできない、ダメなんだ」という自己否定から、大人に反抗的な態度をとったり、気持ちが不安定になることが増えます。

中学生になると厳しく言われるようになる例として以下があります。

・挨拶をきちんとしない
・人の顔をジロジロ見る
・思ったことをすぐ口にする
・授業態度が悪い
・食べ物の好き嫌いが激しい

これらについては「もう中学生なんだから」などの言葉は使わず、どうすればできるようになるのか、一緒に考えながら工夫することが大切です。

家族ができる接し方・サポートのコツ

■褒めること・注意することなどルールを統一する

例えば父親と母親で褒めること・注意することが異なると、子どもは混乱するかもしれません。一貫した対応が大事です。

■できないことも、できるところまで本人がするようにする

例えば医療機関に行ったときなど、症状や状況を親が代弁するのではなく、できるところまで本人が自分で伝えられるようにする、などが挙げられます。親が代わるのではなく、何を手伝えば自分でできるようになるのかを意識します。

■きょうだいにも理解をうながす

きょうだいがいる場合は、特性を分かりやすく説明し、家庭のルールとして一緒に取り組むことが大切です。

■どんなことがあっても家族は味方だと伝え続ける

発達障害のある子どもは、中学生になると大人から注意されることが増えたり、クラスメイトとの対人関係がうまくいかないなど、自分を否定してしまいがちです。特性を理解し、家族は味方であると伝え続けることが重要です。

■「ほどほど」を意識する

発達障害のある子の育児は、周囲から理解を得にくいなど、大変に感じることもあるかもしれません。「親だから」と完璧を求めすぎず、自分がまず元気でいられるよう、「ほどほどに」を心がけることも大切です。

男子・女子ごとの中学生の自閉症スペクトラム障害(ASD)、特徴と接し方

ここでは男子・女子といった性別ごとの特徴や、接し方についてご紹介します。

男子が気をつけたいこと

■異性や友人との距離感

「異性には気軽に触らない」など、同性とは接し方が異なることがあります。性に関するマナーは暗黙のルールになっていることがあるので、言語化して説明すると良いでしょう。テレビや漫画などの言動に影響を受けることもあります。本など視覚的なものを使いながら、一般的な距離感・接し方を伝えます。

■してはいけないこと・断り方を知っておく

例えば「お店から物を盗ってきたら仲間に入れてあげる」「親や先生には秘密だよ」などを言われると、真面目に守ることがあります。悪いことはしてはいけない、と事前に伝える必要があります。上手な断り方は、療育のソーシャルスキルトレーニングなどで学ぶことができます。
家庭だけでの対応が難しいときは、学校や専門医に相談することも一つです。

女子が気をつけたいこと

女子の自閉症スペクトラム障害(ASD)は、幼少期には「素直な子」「大人しい子」と思われ、10歳前後になってから周囲とのズレを感じはじめることが多いといいます。

中学生などの思春期で、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある女子の特徴には以下があります。

■体調のリズムを整える

学校生活などのストレスや、月経が始まるなどの自身の身体的変化への戸惑いなどから、体調を崩しやすい時期です。朝起きれなくなることもあります。
生活のリズムを整える、話を聞くようにする、身体の変化について図などを用いながら説明する、などの対応によって心が落ち着くことがあります。

■性の正しい知識を知る

生理用ナプキンの扱い方や、赤ちゃんができる行為など、月経が始まったら説明することが大切です。性に関する知識の乏しさや、社会的スキルの未熟さから、誘いに断ることが難しくなる人もいます。

中学生の子どもが発達障害かも?と思ったときの学校連携や不登校の対応

相談先

中学生になっても思ったまま発言をしてしまう、融通がきかない、異性への配慮が足りない、などの言動が幼く感じることがあるかもしれません。
「子どもが発達障害かも?」と思ったときの相談先に、発達障害者支援センター、保健所・保健センター、精神保健福祉センターなどがあります。
詳しくはこちらの記事の『子どもが「発達障害かも」と思ったときの相談先』をご参考ください。

学校との連携

中学生にとって、学校は影響力のある場所です。学校との連携の工夫には下記があります。

・保護者と先生の間で、家庭での問題点と学校での問題を共有する
・家庭と学校、それぞれで行っている支援や工夫を共有する
・「ほめる行動」「注意する行動」を家庭と学校で統一する
・クラスメイトやほかの保護者にも理解や配慮をうながす

子どもが不登校がちのときの対応

子どもが「学校に行きたくない」と言った場合は、無理に行かせず、理由は何なのか理解することが大切です。
子どもが学校に行きたがらない主な原因に以下が挙げられます。

例えば勉強が原因であれば、教材や授業の参加方法を変える、給食が嫌であればお弁当を持っていく、などの対応ができるかもしれません。

また、「無理をして学校に行かない」という選択もあります。その場合は、家で自由に過ごすのではなく、不規則な生活にならないようなルールを決めることが大切です。オンライン教材などを活用し、学習することもできます。

誰かに相談したいときには、専門機関に頼りましょう。まずは子どもの気持ちを最優先し、何がつらくてどうしたいのか聞くことも大切です。

まとめ

自閉症スペクトラム障害(ASD)のある中学生は、感覚過敏・感覚鈍麻の症状が合わせて表れるケースもあり、疲れやすい日々を過ごしているかもしれません。思春期を迎え、これまでは自覚の薄かった他人との違いや性についてなど、新たに意識することが増えるためです。

その結果、ストレスを家族にぶつけてしまうなど、反抗的な態度につながることもあります。「家族は常に味方」だと、特性に理解を示しながら、良いところをたくさん褒めることが大切です。

男子・女子の性の違いも、図などで分かりやすく説明することで、身体の変化に戸惑う子どもの気持ちが落ち着くこともあります。

家庭でのサポートのコツもご紹介しましたが、家庭でできることにも限度はあります。学校や専門機関に相談しながら、子どもが大人になる過程を、辛抱強く見守る時期といえるでしょう。

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